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Unlucky!  作者: 木嶋隆太
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第五話 初戦闘

 お試しの草原。

 ファストの街の北に位置するこのフィールドはその名前の通り始めての人の練習場所だ。


 出てくる魔物はブルースライム、剣士ゴブリンと比較的弱いヤツらだ。

 だからと言って油断できない。


 なぜなら、ここは初心者殺しの草原とも呼ばれている。

 攻略サイトで得た情報だ。正式サービスで何か変化があるかもしれないが、そこら辺は考えないことにする。


 お試しの草原ではマジシャンゴブリンというレアモンスターが剣士ゴブリンに混ざって出てくることがある。

 プレイヤーを飽きさせないためのスタッフの遊び心みたいなモノですべてのフィールド、ダンジョンに存在する。


 マジシャンゴブリンはマジシャンのくせに剣を装備しているので、一目見ただけでは気づかず油断するとマジックショックという無属性の魔法を放ってくる。接近戦職は大抵この一撃で落ちるらしい。


 見分け方は生えているツノ。時々光るらしい。分かるか。

 あとは通常よりも経験値が高く設定された、銀色のゴブリンとか。こちらについてはかなり出現率は低いし、一定時間で逃走するが、経験値はかなり高いらしい。


 という俺はお試しの草原を彷徨う。二日目のはずだが、まだレベル的に他のフィールドで狩りを行えない人間も多いようでにぎわっている。どいつもこいつもパーティーを組んでいる。


 MMORPGはやはりパーティープレイが当たり前とも言える。VRになってもそれは変わらない。

 もちろんパーティープレイ推奨だが、『フィニスオンライン』では絶対ではない。


 これは嬉しい知らせなのだが、パーティーが多いと敵の体力などが強化される。

 逆を言えば、一人なら一番弱い状態で戦えるというわけだ。


 ボスなどもそうらしくて、ソロでも攻略は可能だ。

 パーティーを組む利点は、もらえる経験値の増加――人数が多いので結果的に一体から得られる経験値はソロよりかは低い――やアイテムドロップ確率アップなどがある。


 実際ソロで狩るよりかは安全で効率もいいから、ソロの人間は少ないのだ。

 ようやく周りに余裕が持てる場所を見つけたので、そこに腰を据えて敵が出現するのを待つ。


 基本的に人の近くに魔物が出現するようなのだ――来た。光の粒子が集まり点が重なり、姿が出来上がる。

 剣を持ったゴブリンが三体。黒と緑を混ぜた毒状態のような肌と白いツノが印象的だ。右手に持った剣もだいぶボロイ。


 俺の頭上にもHP、MPゲージが出現する。初めてVRゲームをやったときはこれが気になったな。


「ゴブッ!」


 剣士ゴブリンはすぐに俺を敵と判断して、襲い掛かってくる。

 近づいてくる様子から推測するに、マジシャンは混じっていないようだな。ゴブリンはLv1二体とLv2が一体。


 今までのゲームのように動ければ、問題ないはずだ。

 軽く肩を回し、腰に刺さった剣に手を伸ばそうとして止める。


 まずは格闘の訓練でもしておくか。


 ゴブリンAは剣で斬りかかってくる。最小限の動きで回避し、剣を持つ手を掴む。背後に回り、肘鉄を後頭部に当てる。

 ゴブリンAがひるみ、力が抜けるのを確認してから掴んでいた手を捻り上げる。


 ぽろっとボロボロの剣が手から零れ落ち、俺はすかさずそれを掴む。

 ゴブリンAの左後方からゴブリンBが助けに来るように襲い掛かる。


 ジャンプ斬りだ。距離を見切り、剣が振り下ろされるタイミング見計らい横にずれる。

 ゴブリンAとゴブリンBが横並びになったところで、先ほど奪い去った剣で一閃。光のエフェクトが出る。


 二体の魔物の無様な背中を斬った瞬間に、カウンター! という文字が現れ、二体を一撃で葬る。

 まだ一体が残っている。仲間の死に怯える様子はもちろんない。ゲームだからな。手に持っていた剣はゴブリンAが死んだからか消える。無手になったが、困りはしない。


 むしろ、こっちのほうがいい。笑みがこぼれる。

 Lv2のゴブリンCが剣を構えながら走る。一、二回と剣が振られるがかすりもしない。


 大振りに薙いだ一撃の後に接近し、スライディングの要領で足払い。バランスを崩した、ゴブリンCの頭を掴み、地面に叩きつける。それでもまだ、体力が残っていたので思い切り頭を踏み潰してやると、HPゲージが消える。


 同時に景気のいい音楽が流れる。レベルアップしたようだ。

 1から2にあがるのは早かったな。ずっとこの調子ならいいのにな。


 ドロップアイテムを確保。


 MMOが嫌いなのは、レベル上げが面倒な点もある。高レベルになると一日狩りして一レベルしか上がらないゲームもあるらしい。


 それでもVRになってからレベル上げは普通のMMOに比べてラクになった。やはり、直接体を動かすからだろうな。


 VRはプレイヤーの力量がモロに出てしまう。ある程度ゲーム製作側も差が生まれないようにしているが、こればかりは難しい。


 そしてこの会社は本当にプレイヤースキルが重視だ。装備などでステータスを補えるが、プレイヤースキル次第で格上の相手も撃破可能だ。


 思考しながらもモンスターを警戒したが、次に出てきたのは二分ほど経ってから。問題なく撃退する。


 やはり、初心者のためのフィールドだけあって次の出現までに時間がある。効率はあまり良くないな。

 その隙にメニューを開いて、スキルを割り振り。筋力にステータスをすべて割り振る。


 ゲームを始めた人の最初の目標はLv10。

 この辺りから取得できるスキルが増えてくるらしい。


 それから、Lv5になるまで魔物を倒してから一度安全地域に移動した。

 スキルポイントの割り振りをしようと思ったわけだ。


 その前に簡単にスキルの説明を見ておく。

 スキルはプレイヤーの行動、種族、取得したスキルの組み合わせ、職業レベルに応じて色々なスキルが生まれる。


 スキルはLvがあるので、早めに取得して装備したほうがいい。

 一定レベルに達していないと出てこないスキルもある。空戦士には必須と言われるジャンプ回数を増やす系のスキルがそれに該当する。 


 現在スキルポイントは3ある。

 どのスキルを取得しようか……。


 初めに職業を決めたが、それでもかなりのスキルが取得できる。

 同じ職業でも全く別のスキル構成になるのも珍しくないらしい。


 とりあえず、仮にも空戦士なのだから敵を空中に打ち上げる技とジャンプ回数を増やすスキルを取るか。

 クリティカルアッパーとセカンドジャンプを取得する。


 それと、残り1ポイントが迷う。


 通常攻撃強化、格闘術、剣強化、銃強化、、空中攻撃もほしい。

 この四つすべて取得したい。


 うーん……これでいいや。

 俺は格闘術のスキルを獲得する。


 スキルは装備しないと効果がないからな。装備品と同じだ。


 格闘術Lv1

 つけていると、素手の近接攻撃のダメージがあがる。


 セカンドジャンプLv1

 10秒間ジャンプの後にもう一度ジャンプできるようになる。


 クリティカルアッパーLv1

 5mほど敵を打ち上げる。再使用時間20秒。


 スキルレベルをあげるにはスキルを使用するか、戦闘を終えればいい。

 使用したほうが上がりやすいが、取得しておけば、微量ではあるが経験値は入る。


 中には一定のレベルまでいかないと解放されないスキルもある。セカンドジャンプはLv20になるとサードジャンプに進化できる。


 戦闘中にも自由に変更できるので、この組み合わせを覚えておくのが大事だ。

 当分お世話にはならないだろうけど。


 メニューを開き、戦闘を補佐するシステムを設定する。

 消費アイテム欄に収まっているレッドポーションLv1×10とブルーポーションLv1×10を腰の袋に移す。


 腰についた道具袋。アイテムを五つまで入れることができて、戦闘中にすぐに使うためのいわば、ショートカットキーみたいなものだ。


 メニューを開いてアイテムを使う場合は早くても五秒程度かかるが、これならすぐにアイテムが使用できる。


 入れられるアイテムが五つの制限がある。ポーション系は50個まで1枠に持てるので250が限界だ。 

 道具袋に移す前のアイテムがどこにしまわれていたのかは知らない。異次元にでもしまってるのだろう。


 所詮ゲームだ。気にするだけバカらしいか。

 その後もひたすら狩りをしていると、レベル10になる。


 時間もいい感じだ。夕陽が草原を照らしていて、中々綺麗な情景だ。

 無事初戦闘も終えた。腹も減ってきたし、食堂に向かうとするか。


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