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神聖独劇  作者: さとう
終章――神聖独劇
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始まりと終わり

 果てしない旅は光から始まった。それは遥か昔のこと。ただ、それはそう思っているだけで、実際には私の時間がどう進んでいるのかはわからない。光に包まれたとき、そこで私は私を失う時間がある。眠るときとは全く異なる無の時間、その間に何が起こったのかは知り得ない。

 目を覚ますのは、場所も時間も、必ず違うところ。そこで、ある時は己が物語の主役となって行動し、ある時は一人で人生を省みて考えるだけで終わることもあった。登場人物にすらならないことも多かった。肉体を失い、空間に遍在しているのか、意識だけで存在し、誰かの言葉を聞いたり、行動を見たりするのだ。

 そうして、どんな時にでもあったのは光。手の届きそうな距離にあることもあった。逆に、遥か遠く憧憬や希望というような形で彼方で輝いていることもあった。今になって思い返せば、それを目指して私は動いてきたように思う。


 光は常に孤独だった。それは私に似ていた。私がこれまでしてきたことは、光と同じことだった。たった一人で世界を駆け抜け、どこにでも現れる。誰かの希望となり、標となる。輝ける光を見た人々は幸福が訪れる予感に満ちていた。その傍らで彼らを見送り、再び光を目指して一人、孤独の中へと戻る。

 あの光も同じ一人きりの存在で、私を幸せに導こうとしていた。光――私を導く希望、そして、私は誰かの光。


 それが今、一つになろうとしている。あの光と私が一つに。

 目の前に、様々な記憶の中で幾度か見たことがある扉が顕現し、心地良い響きとともに開かれた。その先に望むのは殺風景で静かな地平。その景色をいつも見てきたが、あと一歩のところで離れていった。呆気にとられ立ちすくんで見ていると、静かな世界の上で、光が煌めき、かつての記憶が溢れだした。

 過去と未来、忘れていた人や言葉を始めとする様々な記憶が留めなく溢れ満ちてゆく。その情景は筆舌に尽くしがたいものだった。横溢する記憶の勢いが徐々に弱くなり、止まると思われた次の瞬間、光が強く瞬いた。すると向こうの世界は美しい世界に変わっていた。

 すべてがあって、すべてがない、憧憬と混沌の中で、神聖を寿ぐ世界が生まれた。光の記憶によって織り成された新しい世界が向こう側に広がる。追い求めてきた光が形作る神聖なる世界。扉を潜れば私の旅が果たされるだろう。

 光に迷い、誘われ、目指してきた長い旅が終わりを告げ、繰り返されてきた命は無くなり、すべてと一つになる。その時が来たのだ。

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