光の旅人
長い時間を旅してきた。どこまでも続く世界の中をたった一人で、光を目指してきた。同時に、それは孤独とともに存在の彼方へ向かう逃避と内省の旅でもあった。しかし、己が無い故に、なにから逃げて、なにを省みるべきなのか分からなかった。
夢を見る。それは現実の意識を持って見る、世界の物語であった。
いつか見た夢は今以上に孤独で、真っ黒な世界を彷徨っていた。深く暗い世界だが、不思議と恐ろしくはない。自分が誰で、いつから、どこへ向かって進むのか分からぬまま、終わりの許されない残酷な世界が続いていく。そんな中で這いつくばり必死に自分を探していた。
違う夢でも存在を探していた。果てしない再生、繰り返される生に疲弊し衰弱している。遍く満ちる声は聞こえるが、己を認めせるための言葉が届くことはなかった。最後の力を振り絞り精神を、魂を、意識を吐き出すが誰にも届かない。
魂の救済を求め、罪から逃げたこともあった。暗く険しい森の中を、恐怖し傷つきながら駆け抜けた。何を犯した罪かは分からなかったが、それは心に絡みつき離れることはない。罪に縛られながらも、それはあの時においては存在の証だった。罪の起こる以前の記憶はなく、罪によって終えることができた。歪な存在証明。
この現実において、いくつか奇妙な人物にあったこともある。その最たるものは、一人の青年。彼は話しかけてくると、いきなり己の存在について語り始めた。
俺には三つの自我と肉体がある、と言っていた。魂、精神、意識、それぞれが個別の意志を持ち、肉体から出たり入ったりしている。それらは肉体を観察し、肉体もまたそれらをみている。そうしているうちに、いつしかすべてが平面の世界へ変容するが、それたちだけは各々の形を保持したままであり、己は平たくなりながらその景色を見る。それから、青年は自分自身の意味と存在を失い、存在を求め彷徨うようになった、と言っていた。
これまで会ったものの多くは、それが夢の中だとしても、存在を探していた。そして私自身、今現在において、存在を探している。彼らの話を聞いて、己に足りないものを理解した。私には存在がないということを。どこかに、たぶん光に囚われたときから自分を失っていた。
存在を求めるものたちが語りかけてきたのは、なにかの啓示なのだろう。再び私自身を取り戻すために、光に導かれるままではなく、いつか存在を取り戻して、あの光はきっと私そのもの、やがて己が光と一体となって、かつての記憶は蘇り、これからの軌跡を描く、光はすべてで、空っぽの私と一つに、すべてが一つになるのだ。
光に惑わされ、導かれ、追い求める、そして光そのものを目指すもの。私は光、きっとそうなのだろう。




