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神聖独劇  作者: さとう
第一九章――英雄奇譚
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憤怒と呪詛

 騎士としての誇り、英雄と讃えられた誉れを粉々に砕かれた聖騎士。使命を果たすことができず、剰え、自分だけが生き残ってしまった。

 数多の命を奪い手にした名声、名誉、栄光に何の意味があるのか。世界を愛で包もうとした慈悲、優渥、憐憫に満ちる人を守れずに。

 彼は己の不甲斐なさを嘆いた。乙女の言葉を思い出すが深い悔恨の念、そして、運命への怒りを抑えることはできなかった。


 騎士は猛り吠える。


 ――神よ! あなたは本当に正しきものなのか! 今、聖なる乙女は、神に捧げしその身を、あろうことか我らに仇なす者の槍に突かれ、清き愛とともに失われたのだ!


 ――彼女は神の定めしことと言われたが私は認めない! このような悲しみを生み出すのがあなたの定めなのか? このように苦しみを味わわせるのがあなたの役目なのか? 違う、あなたは幸福と平和を与える存在であるはずではなかったのか!


 ――いと高きものよ! あなたは残酷だ! 祈る者に死を、守る者に苦しみを、愚か者に生と喜びを与えるとは! これを機に、あなたに背く者は、罪無き命が無惨に果てる姿、悲哀に嘆く者を嘲笑うことに愉悦を見いださんとするだろう。なぜそのような不遜な輩に罰をお与えにならない? なにゆえそのような過酷な運命を織ったのだ! 神よ!


 英雄は狂い呪う。


 ――人として生きる私に神の叡知なぞ知る由もない、だが、あなたに祈る者を破滅させる運命など馬鹿げている! 乙女は血の流れない大地、人々が手を取り合い笑顔の溢れる国、そして、神の、あなたの名のもとに幸福と平和の世紀が訪れるのを祈り、願っていた!


 ――なのに、なぜそれを無下にする運命を創り給うた! 清き人の命を冷酷に扱う運命など呪ってやる! それが、あなたを否定することになろうと厭わない!


 ――人の命は永遠に有るなどありえない。それゆえに人は激しく命の灯りを燃やす。あなたはなぜそれを吹き消したのか? 常しえの高見からでは刹那の炎の価値はわからないか?


 ――私は、見えざるあなたに祈りを捧げ何かを乞うぐらいなら、失われた純潔が手を差し伸べた溢れる生命を慈しむ! あなたの悪戯や戯れから灯りを守るのだ!


 ――運命など変える、いや、越えて見せよう! そうだ、神よ、あなたを越える!

 ――平和や安寧を我ら人の手に取り戻そうではないか!

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