表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
神聖独劇  作者: さとう
第一八章――永遠の地平
65/71

希望の世界

 扉の向こうの世界は、夢幻の情景とともに常しえの光に満ちていた。

 ――天上より吹きたる一陣の風が真実の牧草地を渡り、悔恨と諦念の浜辺を抜け、古の祈りが眠る大海原へ去ってゆく。

 真理の光を注ぐ太陽は、幻惑の光を放つ月と戯れている。絶望の山々は雄々しく聳え、挑むものをことごとく拒み、艱難辛苦の谷は嘆くものをたぶらかす。

 静かに佇む丘陵、生死を寿ぐ青空、悪徳を孕む黒雲、禍々しく誘う森林。試練の砂漠には無念の涙で出来た泉が溢れ、旅人の無慈悲な乾きを潤す。憎悪の渓流は慈悲の小川と合流し、太古の海へ達する恩讐の大河へ。

 艶やかな豊饒は歓喜に歌い、紅蓮に盛る悪疫が猛り叫ぶ。蒼白とした狂気は悲しげに囁き、たおやかなる幸福が愉悦と踊る。

 ――それは希望の世界、誰もが訪れる静寂の世界。


 その地に足を踏み入れると、世界の相貌は変化した。

 ――感情と想像が渦巻き、激しく移り変わる天候に息を呑み、鮮烈に輝く光と自然に目眩を起こす。

 蠢く概念はいつも側にいる、そして、なにかを語りかける。しかし、その言葉は忘れられた言語であり、意味を理解することはできない。

 移ろう感情の波に揺られ、心の焦点は定まらず、委ねられるままに朽ちてゆく。

 ――そこは永遠の地平、命の巡る最涯ての地平。


 すべてがある世界から、すべてがない世界へ。果てのない大地で、ひとりとなった。

 寂寞の地平で、何も分からず立ちすくんでいると、眼前に光が満ちて広がった。

 光が存在を包むと、たぶん私はもうそこにいない。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ