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神聖独劇  作者: さとう
第一七章――未来へ
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痴者と光の教え

 はるか昔、彼は主の欺瞞を暴き、夢幻の闇へ葬られた。天空の輝きから顕れた巨大な御手に魂を握り締められると、一切の望みを断たれ暗黒の深淵に投げ落とされたのだ。また彼は永い時の中で微睡みに入ると、未来と過去の物語を見た。

 どれもがひとつの結末に向かう、あるものは無念に果て、あるものは自ら堕ちてゆく。結末は眩く輝き捉えることは出来なかったが、根底に共通する想いは感じ取れた。どの物語にも流れていた想い、それは彼も抱き、そのものでもあった――孤独。

 男は時間によって存在を剥ぎ取られていったが、孤独の想いは消えなかった。孤独は失われていく自己を繋ぎ止める唯一の友であった。

 深淵を落ち、時には昇り、幾億とも思える時を越えた先に、かつて見た結末と同じ輝きが見えた。光の中へ落ちてゆき、包まれると、自分がなにもので、なにを為すべきなのか、全てを悟り、再び地上へ戻された。

 しかし、彼は真実と真理の重みに耐えることができず、狂気に触れ、光の物語から得た教えを叫び歩いた。


『太陽は昇った。残酷な導きが始める。恐れ慄け、祈り乞え。黙す光は罪を考えている。

 走れ、急ぎ、回れ、手を伸ばせ。体に刻まれる傷から記憶は零れる。太陽を追いかけろ。是も非も越えてゆくのだ。』


『立ち止まるな。いつか光の使者が降りてくる。御言葉を聞き逃さぬようにしろ。沈黙を恐れるな、天に救いを祈れ。

 走り続けろ。やがて太陽の来訪者が訪れる。啓示に耳を傾けろ。慄く魂を悟られるな、天に赦しを乞え。

 だが、主は酷薄なる御心を持つ。無慈悲に審判を下すのだ。光は瞬き、罰が魂を貫く。我らはただ無様に平伏すことのみを許される。』


『季節は巡り、太陽と月が昇る恒久の世界が顕れる。永遠の中へ飛び込み、常しえに連なる命の環を繋ぐのだ。

 命の虚空の中に神と罪の物語は隠されている。物語は全ての記憶を呼び起こし、生命を永劫の回帰へ同化させる。』


『眩い光が訪れ、沈黙の夜明けはやってくる。汚泥に塗れた栄華を甦らせる時が来た。東の地の果てに古の叡智が眠る海が見える。命の花が知る理を静かな海へ投げ入れろ。世界は虹色に輝き、光の旅人が運命を唄う、その言葉は世界を変容させる。』


『鮮やかな旋律は祝福の輝きへ。黄金の扉は祝福とともに開かれ、光は満ち溢れるだろう。進め、光の向こうへ、未来へ。金色絢爛の扉を潜るのだ、第二の地平が、聖なる地平が待っている。』


 その姿を見た人々は蔑みと憐れみを持って、彼を『全てを悟る痴者』と呼んだ。

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