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神聖独劇  作者: さとう
第ニ章――未来への記録
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似非の詩

 ええ、彼と話したわ。いつもお昼ごはんを食べている場所で見かけたことのない男の人がいたの。そう、それが彼。特別いい男でもないけど、どこか悟っているような、達観した雰囲気があって、それがすごく魅力的だったわ。

 普通なら挨拶もしないのに、その雰囲気のわけが知りたくて話しかけたのよ。どこから来たんですか、とね。そしたらなんて答えたと思う? 光に導かれ遠い世界からここにきた、そう言ったの。何を言ってるのかと思ったけど、そのときの表情は真面目で、さらに不思議な魅力の影は深くなってたの。それだけで、なんだか本当なんだなと思えた。

 続けて彼は語り始めたわ。確かこんなことだったと思う。


『無限の彼方に有限なる者は想いを馳せる。星と星を駆け巡り、果てしない闇を切り裂きながら永劫の光に身を窶し彷徨い続ける。思想、思惑、信仰、誓願、祈り、信奉……光には必要のないもの。

 生なすものすべてが光を喰み、己の糧とする。それは、いつまでも、これかれからも繰り返される生命の営み。

 繋がりゆく命の輪から親愛と慈悲は生まれ、世界を包み、正しい道と選択の自由を行使できる未来が訪れる。善悪の彼岸を渡り、光は闇夜を晴らし歩むべき道を照らす、さらなる光を心からの恩沢と豊饒でもって育む。

 やがて善行は全世界に広がり草木花を喜びで咲かせ、繁栄の調べを歌いあげる。

 狂気を孕んだ過去は過ぎ去り、黄金の未来はもうすぐそこに。そして、黄金による光の反射の中を我々は歩みゆく。

 次は喜びの歌を歌おう。暗黒の帳が降ろされることはなくなった。暗鬱の嵐も遠くへ去っていった。輝ける意志を持ち、未来へ前進するのだ。』


 はっきりと覚えているわ、なぜかね。頭から離れないの。そして、最後にこう付け足して、彼は旅立っていった。


『未来とは不確定性に導かれる収斂の結果だ。偶然の奇跡と必然の奇跡の差異は意識の違いに過ぎないように、意識の違いで未来の明暗も変わり、また、汲み上げる意味の取り方によっても変わる。

 未来は行為者の行動によって選択される。意識の数だけ多様な未来を生み出す。』


 前言の詩的な表現と打って変わって、論理的な言葉だったわ。それで彼の話た意図が少しだけ分かった気がした。

 たぶん、彼はきっと暗い未来からやてきたのよ、遠い世界っていうのがそう。だから、最善の選択と行動を続け、どんどん広め、今の人たちに明るい未来を目指して欲しかったのかもしれない。

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