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神聖独劇  作者: さとう
第十五章――古き記憶
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鎮魂の調べ

 遠い過去に失われた数多の魂よ、あなたたちの記憶を私は唄おう。

 栄華の輝きに映える衣服を纏い、笑い、楽しむ、幸ある人々。

 繁栄を極めた時代、幸福の絶頂、そして、完成された世界。

 そこには人の手による永遠があり、至福の道があり、遥かなる未来が開かれていた。

 なんと美しく、したたかで、厳かな、天の国にも似た御国であったか。

 人は皆、愛を語り囁き、歓喜に歌い踊る。

 苦しみを始まりとする悪因は振り払われた、生きることこそが美徳。

 虚ろな人々よ、この唄を聞くものよ、かつてには輝ける時代があったのだ。


 しかし、輝ける時代は永く続くものではない。

 悪政による民衆の貧困、反乱と暴動、嘲りの声が広がり、欺瞞に満ちた平和が音をたてて崩壊することもあるだろう。

 ときには未知の存在の侵略、侵攻により平穏を怒号が呑み込むこともあるはず。

 だが、輝ける都はいずれとも違った。では、どのような滅びの道を辿ったのか。

 人の意志を越えた大いなる力、天の裁きが大地に落とされたのだ。

 それは煌めく光の尾を揺らし、切り裂く音を引き連れ、空を渡って来た。

 光の雫が夜の空に溶けゆき、音が止むと静かな閃光が満ちた、刹那、大地は震え破壊が押し寄せた。

 破壊のうねりはあらゆるものを包み込んだ、真実も、嘘も、絶叫も、祈りも、すべてをその腕で乱暴に抱いたのだ。


 そうして世界は沈黙した。闇の中で、希望も絶望もなく、人は静寂の地平を見たのだ。

 人類の到達した最高の叡智、栄光の象徴、それらの半分は脆くも瓦解した。

 もう半分は押し寄せる大海がその内に閉じ込めてしまった。

 私が唄うのは、形をとどめ深い青色の底で眠りにつく、見知らぬ都。

 そこは辛くも逃げ延びた、遠い先祖が生まれた場所であり、私に受け継がれる血の故郷でもある。

 古い都が沈みすでに幾千の時を越えた。

 甦るときを待っているのか、それとも、もはや息を引き返すことなく永遠に眠り続けるのか。

 私に知るすべはない、できることは古代の文明を唄い、その存在を伝え続けることだけである。

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