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神聖独劇  作者: さとう
第十四章――祈祷と叛逆
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祈りて乞え、天は默し、罪を定める

 いつも、いつまでも祈り続けるその行為に、未来への儚い希望が乗せられる。静かな廃墟、崩れかけた祭壇の上、聖母像は世界を憐れむ。男はその姿に両の手を合わせ、跪き、身分も羞恥もすべてを捨て、ひたすら言葉を紡ぐ。

 罪を告白し、赦しと救いを求め、聖母像を通し天へと祈る。過去の行いを洗い流し、未来の歓喜を予感しながら、救済の道を歩み行こうとしている。彼は祈りを最善とする深き者、信じることを最良とする愚か者、即ち、救い難き者。


 天には楽園が待っている、そこは祈る者に祝福の鐘を鳴らし、信じる者に永遠を与える。それを疑わず男は生きてきた、上辺だけを掠い、都合よく解釈して。歪んだ信仰に意味はなく、意図も汲まずに、享楽を得ることができるだろうか、天と交歓の宴が持てようか。

 否、信仰とは世の事実を真理と違えることなく、自己の深淵を知り、暗闇の中の光射す道を歩むこと。教典に記されるは光の道に至る術、暗黒から立ち上がる支え、迷いに陥ったときの標。楽園は、天の加護を祈り、試練を乗り越え、暗黒深淵より出で、己が導き出した光を信仰する者が辿り着ける境地である。


 男は懶惰の四阿で寝転び、安逸に胡座をかいてきた。そのような者が自己の不忠、不義、不信、不従順、不正を信仰無き祈りで清算しようとしている。そこに赦しなどあろうはずもなく、救いなど、なんとおこがましい願いであるか。

 彼の安易な思考、軽薄な行為に天は失望し、悲しみ、憐れんだ。見方を変えれば男は自我の無い魂とも云える。そのようなものを生み出したことに、また、同じ過ちを犯すもの今後現れないように、反省の意味を込め、天は罪を定めた。そして後世の戒めとし、男を罪深き者、原罪の祖、背負い人として、東の涯ての孤島へ送った。

 後世には男の顛末が伝わり、罪の意識が世界を覆った。この物語は人々に節度をもたらし、堕落への警鐘となって響き続けている。

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