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神聖独劇  作者: さとう
第ニ章――未来への記録
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偽りの予言

 ここに記すのは、私が彼と出会い聞いた言葉を、思い出せる限り書き残したものだ。

 彼はいつからかそこにいた。誰かを待っているでもなく、どこかへ行く気配もなかった。傍から見ればなんの変哲もない普通の男でしかない。しかし、私は妙に気になって、ある日声をかけた。

 彼が言うには、自分は光の旅人だと、そう言っていた。普段の私なら一笑に付して終わりにしていたかもしれないが、その時は違った。何を根拠に信ずるかに至ったかは今でも自分でわからない。それでも、その言葉は真であると思えたのだ。

 そして、続けて語りだした言葉が次のものである。


『我々の星には数多の生命が静かに、強かに、慎ましく、威厳に満ち、また、慈愛と優渥にも満ち満ちて暮らしている。だが、誇りと尊厳の寵愛を受け、そして、与えられる最上の循環に適した土壌を持ちながら、破壊と蹂躙に勤しむ痴愚なる生物がいるのだ。

 生なすものすべてが、この痴愚なる生物の所業によって悲痛の声を上げるも、その声はあまりにも小さく、彼らの耳に届くことはない。そもそも、彼らの耳は忍び寄る同胞の暗殺や謀略の物音を察知するのに使われいるから、他の生物の声など聞けるはずもない。

 また、その手には拭いきれぬ血が染み込み、その目は己の栄光に満ちた幻想の未来しか映っていない。心に平穏など宿りはせず、常に疑心に淀んでいる。

 頭は同胞の裏切りや、世界に蔓延る悪徳の狂信者、対立組織、無辜なる民が反旗を翻すのではと不安に煽られ妄想に取り憑かれている。

 そうして己の未来と見えざる敵によって愚かな行為を企て、破滅に向かい走り始めている。痴愚生物は、この世に腐敗した正義の雨を降り注ごうと、いや、ばらまこうと準備しているのだ。

 明日への光は邪悪な意志により閉ざされ、狂気は世界を覆い、滅びの道を我々は歩み出している。

 私は、未来を、過去を、そして今を知る。悲しい終わりはもううんざりだ』


 以上が私の思い出せる全てである。この言葉から感じたのは終わりへの予言であった。憂いの残響が漂うその言葉は、あたかも経験した未来を変えるため、この時代へ飛んできたような雰囲気があった。

 このあと、男は立ち上がり、重い足取りでどこかへ行ってしまった。寂しげな後ろ姿を追う気持ちにはなれなかった。なので、彼がどこへ向かったのかも分からない。

 たぶん、光に向かったか、もしくは光となったとだと思う。なんせ彼は光の旅人なのだから。

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