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神聖独劇  作者: さとう
第十一章――夢幻人
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腐敗

 僕らの精神進化は閉ざされた。遥か昔から続く繋がりに綻びが生じ、邪な喧騒が世界の解体を始めた。緩やかに、着実に蝕まれ崩れてゆく世界、破滅の薫りが漂い衰退の道へと誘っている。

 永遠への論理は科学の理論によって崩され、始まりから終わりへの幻想も不可解な現実のために儚く散った。夢を失い明日の絶望に怯える毎日に安息は無い。

 揺蕩う浮世に望む未来があるはずもなく、確固たる意志も実在によって突き崩された。積み上げられた過去は、夢幻より吹き付ける虚空の風によって形骸すら残さず消される。そして、続く世界に僕という形は意味を持つことを許されない。


 いったいどうしろと言うんだ。綺麗な言葉を連ねては悪徳に惑わし、暗い言葉に苦悩を与える。明日への一歩を奪う言葉たち。世界は悪辣に僕らをいたぶる。


 この頽廃する世界ではまた、絶望した諸人が己の価値を傲慢不遜に正しいことのように謳い、祈る者は自らの力を放棄し、蔑む者は自らの力を過信する。その姿の滑稽さ、見苦しさは世の終わりをありありと映している。


 賢しらが命の価値を語る。――曰く、命とは尊く厳かで、神聖にして侵すことのできない無償にして、価値の計れないものだと。

 痴れ者が死の意義を説く。――曰く、死とは最も美しく穢れの無い、未来への新しい可能性だと。

 物乞いが生の意味を誇る。――曰く、生とは運命の具象であり、不可侵で、それ自体が輝きを放つ素晴らしいことだと。


 世界が滅びに向かう最中、愚かな者ほど現実を見ず、このように尊大に美徳を喧伝する。散りゆくものらに目を向けること無く、己の正しさが世界を救うと信じている。

 こうなったら終わりだ。愚者だけが蔓延り、是正認識の力は腐る。本当に正しき人は沈黙し、ただ終わりを見守る。そして世界は静かな大地へ還るしかない。

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