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神聖独劇  作者: さとう
第十一章――夢幻人
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深淵へ

 良心と罪の意識が相剋するとき自分の中に大きながらんどうが生じ、その暗い穴が自分を見つめる姿を遠くから眺めるという奇妙な景色を見ていた。

 遠くの自分ががらんどうに入ると、穴に見つめられた自分がさらなる暗黒に絶望し、昇り、また落ちていく。

 気が付けば傍観者から体験者へ変わり、暗闇の中にいる。そこに入れば昇るのも落ちるのもどちらも同じことなんだと思う。

 洞穴に呑み込まれ、そして全てが小さくなり閉じて行く最中に覚える感情がある。


 ――諦念。苦難。悔恨。艱難。煩悶。辛苦。懊悩。――


 肉体に宿る意識は内から沸き上がる不安に彩られ青ざめる。心に潜む精神は肉体の心拍に合わせ七色の罪悪感を抱く。そうして心と理知が反発し混乱の極みへと至る。

 昇りながら落ちていく永遠と思える暗闇の中、静かに終わりを待つ。七色の罪悪感を噛み締め、繰り返す自己問答の先、不意に変化が訪れた。

 突然、暗き世界に壮麗な喇叭の音が響くと感情は反転し、魂を駆り立て、精神と意識を新たに耕し希望の種を蒔き始めたんだ。


 “ああ、何故これほど苦しんでいたのか”

 そう思ったとき、自然と安堵の涙が流れ、その雫によって希望の種は急速に成長を促され一つの大樹へ育った。安らぎの樹は一時の沈静を与えてくれた。

 いつしか罪の意識も薄れ、良心の気色に染めあがる。だが、決して救われた訳ではなかった。


 時間が経てば樹は腐り、枯れ、巨大な穴が顔を覗かせ、がらんどうは罪の意識を放ち、安らかな心と衝突する。そう、最初に戻ったんだ。

 懊悩は繰り返し続き、自分の中へまた落ちてゆく、ここに終わることなどないのかもしれない。

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