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神聖独劇  作者: さとう
第十章――幻想の種
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 目を閉じて暗闇の静寂へ耳を澄ます。無音が部屋を飛び交い眠りを邪魔する。そこで音へ向けられた意識を、脳髄の思考へ変える。

 溢れてくるのはくだらない妄想、思念ばかり。取り留めのない疑問。これからのこと、これまでのこと。そして、改めて自分について考える。


 今の自分にはなにがあるだろうか。何もない。かつて、あれほど燃え上がった何かに駆られた衝動は無くなった。情熱の過ぎ去った肉体には一抹の未来もない。未来がなければ、希望もない。ただ真っ暗な世界が広がる。

 暗黒の世界。それは宇宙にも似ている。広がる宇宙の中、たった一人。なにもない、始まりへ、始原へ収束してゆく。真っ暗な中で一人。孤独が暗闇をつくる。孤独。果てしない、闇に向かい落ちていく。

 変わらない風景、見飽きた景色、鼻を突く嫌な臭い、耳を覆いたくなる静寂、思考は繰り返され疑問の渦に呑み込まれていく。

 忌わしき夢が広がる。吐き気を催すほどの嫌悪感。近いようで遠い彼方、人々が呪詛で固めた仮面をつけ、愚昧に満ちた嘘を吐く。濁りきった世界。正すべき世界。

 蒙昧なる人々は望遠鏡で星の煌めく天を仰ぎ、すべてを包む空を忘れる。盲目の僕は偉大で腐った権威にすがり、救世主の言葉を失う。忘れられた人。忘れた人々。頽廃と破滅の予感がする。

 様々な想いを感じながら遥かなる時を越えた。幾星霜を過ぎ、ついに明かりが見えた。一点の光。手を伸ばし光を捉える。光はたちまち広がり、包まれ、私は太陽となった。


 ――そんな夢を見た。どこから夢だったのか、判然としない。もしかしたらすべては現実だったのかもしれない。

 しかし、一人の私に、確かめるすべはない。

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