ひとり
光の世界、繰り返される生によって感情は削ぎ落とされ、生きる力を奪われた。残されたのは、命の理、光の記憶、世界の軌跡、時間の鼓動。すべてはもう私に必要のないものだ。
彷徨い続けた肉体は疲弊しきっている。精神というかつては巨大であった柱もすっかり風化しぼろぼろ、意識も鮮明な像を結ばないことが多くなってきている。虚ろな魂は彷徨い続け存在する場所を求めるも、見つからず、終わりを迎えるしかない。
終わりへの確かな実感に涙が静かに零れ落ち、ぬるい温度が頬を伝う。世界に抑圧されてきた精神は解放され、また、肉体に隷属された意識も切り離され遠のいてゆく。
本当に最後なのだろう。肉体の感覚もなくなってきた。
生ける時代、他者との深い接触を試みるも、それは虚しく終わり、必ず離れていった。私は日常に横たわる充足された空気と混じることを許されない。常に一人であった。
果てない再生は『無』で満たされた心の器を作り、無は思考を吸収し、私という孤独を生んだ。世界か、神か、自然か、私をさらっていったのは。だが、もう恨んだりしても意味はない。すでに手遅れなのだから。
声はそこかしこに満ちている。しかし、言葉が届くことはない。静寂の地平線に消えてゆく魂の絶叫、暗黒に呑み込まれる精神の咆哮、深淵に落ちゆく意識の嘆き。私の存在である言葉たちは人に辿り着くことはない。
ああ、私はなにものだ? 答えてくれ…… 私を知らないか? どこかに落としてきたみたいなんだ。
自分が無いんだ。誰か、誰でもいい、私を知ってる人はいないか?




