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第1話 札幌駅・オブジェ 同期率:38%(フレーム越しの解像度)

手元には1時間半という使い道のない時間が残された。 12月のある日の午後。 札幌駅の構内は、帰省客や観光客の喧騒で膨れ上がっている。

西コンコースに向かう。待ち合わせの定番である、とにかく巨大な白いオブジェが人波の中に置かれている。僕はその中心に開いた穴の前に立ち, 少しだけ腰を落とした。

「AIからの指示は、1分間ここを覗くこと。」

穴の向こう側を、色とりどりの服の裾が通り過ぎていく。フレームに切り取られた色彩の断片が、ただ右から左へと流れていくのを眺めた。石に指を触れると、指先から体温がわずかに吸い取られていく。 立ち上がると、しばらくしゃがんでいた膝が少し固まっていて、自分の体重をいつもより重く感じた。

そのまま東コンコースにある赤い足の像を横目に、地下へと続く階段を降りる。 階段の途中で、足を止めた。 地上階の熱気と、地下から上がってくる少しひんやりした空気。その二つが混ざり合う場所に立つと、肌に触れる空気感がわずかに変わるのがわかった。僕は首のマフラーを少しだけ締め直した。

コンコースから離れた静かな壁際に腰を下ろし、バックパックから「ちくわパン」を取り出す。 周りの人間は皆、何かに追われるように早足で通り過ぎていく。

一口ずつ、ただ口を動かした。 飲み込んで、また次を口に運ぶ。その繰り返しを眺めるようにしながら、数分間、誰とも視線を合わせずに過ごした。

最後の一口を飲み込み、空になった袋を丸める。 指先に残ったパンの袋の感触を確かめてから、僕はまた人混みの中へ戻るために立ち上がった。


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