2.黒歴史を繰り返さないために。
今日はもう1話投げます。
そこまででオープニング終了。
『えー!? もしかして芥川、マジになっちゃってたのー?』
『冷静に考えて、あり得ないだろ? お前が天川さんに告られる、ってさ』
天川からの嘘告白があってから少し経って。
その噂はどこから漏れ出したのか、クラスメイトの陽キャたちがこちらを小馬鹿にしてきた。それに対して俺は黙っているしかできず、彼らの笑い声が嫌というほどに耳へ突き刺さってくる。
そのたびに、あの時に浮かれてしまった自分が恥ずかしくなった。
そして逃げるようにして教室を出たが、
『…………ここでも、か』
廊下を歩いていると周囲からの視線を感じる。
微かに耳に届いてくるのは、やはり嘲笑混じりの声だった。天川セイラは学校を代表するような有名人であり、美少女だ。そんな彼女からの嘘告白を真に受けた陰キャがいたとなれば、笑いものになっても当然だろう。
そんな当たり前の流れも理解できなかった自分が嫌になるし、嘘の告白を仕掛けてきた天川への恨みも募った。
もちろん、一番愚かなのは舞い上がった自分だけど。
『はぁ……いつまで続くんだ、これ』
自然、そんなため息が漏れた。
そして結局のところ、俺を笑う風潮は卒業まで続くのだ。
◆
「そ、それじゃ……また、明日」
「……あぁ、また明日」
天川セイラのおっかなびっくりな言葉に、俺も慎重に言葉を選び答えた。もう二度と一時の気持ちに流されて、後悔するようなことがないように。そう思っているからこそ、こんな当たり前な挨拶にさえ緊張してしまった。
だけど、仕方のない話だろう。
俺はあの日以降、卒業するまでの期間を苦しんだのだ。
言ってしまえば黒歴史やトラウマのようなもので、昨夜に見た悪夢のようにつかず離れずを続けている。
「……行った、よな」
会場の入り口付近。
天川の背中が見えなくなるのを確かめてから、俺は周囲の目を気にする余裕もなく、その場にしゃがみ込んだ。
そして大きくため息をつきながら、このように思う。
――本当にツイてない、と。
ようやく記憶も薄れ始めた頃合いだったのに、どうしてこんな偶然が起きてしまうのだろうか。俺は己の身に降りかかった不運を呪いながら、またため息。
そしておもむろに立ち上がって、深呼吸を繰り返した。
「……大丈夫。あのことを知っているやつは、俺たち以外にいない」
その上で、自分を安心させるように言い聞かせる。
アイツの動向に注意さえしていれば、妙な噂が広がるようなこともないはず。だったら対処はしやすい。その点についてだけ考えれば、同じ学部に入ったのは不幸中の幸い、というやつなのかもしれない。
そう考えることにして、俺はアパートへの帰り道を歩き出した。
「でも、それにしたって――」
すると、その道中で。
俺は天川のことを思い出し、こう素直に考えてしまうのだった。
「……なんていうか、大人びて綺麗になってたな」――と。
正直に言ってしまえば、驚くと同時に見惚れてしまったのは事実。
しかし、そのことを思い返した後に――。
「だあああああ!! 俺はもう、あんなこと繰り返さないからなぁ!?」
あの過去を思い返して、一人で頭を抱えるのだった。
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