9月14日 第7話、万博の夜明けを越えて――コンビニ的発想で大阪を宇宙級に再起動
2025年、大阪・夢洲の万博は人と技術と未来を結ぶ巨大な実験場となった。だが、華やかな閉幕のあとに残るのは、膨大な人的資源と都市の余白である。ここにこそ、次の社会を動かす起点が潜んでいる。
私は40代半ばのコンビニ夜勤者として、毎晩レジ越しに都市の脈動を感じてきた。フライヤーの油が跳ねる音、レシートに刻まれる無数の欲求、段ボールにたまる微かな熱──それらはすべて、未来都市の設計図に変わる可能性を秘めている。
本書は、宇宙開発・AIまちづくり・バイオ技術という三つの軸から、万博閉幕後の大阪を「余りもの」から再構築する試みである。現場の視点とSF的発想を交差させ、都市再生を一枚のレシートから描き出す。余った手を宇宙に、データに、土に還すことで、都市はもう一度“夜明け”を迎えるだろう。
<序論:午前3時17分、フライヤーが宇宙へ落ちていく音>
大阪・夢洲で2025年に開催される万博。私はその会場から直線6.8km離れたコンビニのレジで、毎晩「いらっしゃいませ」を繰り返している。閉幕後、700万人の“働く余波”が街に還流するとき、日本はどう変わるのか。人事派遣会社が9月14日から始めた「閉幕後就職支援イベント」は、従来型の“次の職場探し”に留まらず、もし“次の惑星開拓”に繋がっていたら――。
本稿では、コンビニ夜勤の現場知見とSF的拡張を融合させ、「万博後の地域活性化」を宇宙・AI・バイオ技術の3軸で再定義する。前提は単純だ。「人手が余るなら、余った“手”で新しい“場”を作ればいい」。以下、妄想実証を展開する。
<本論1:宇宙開発編――「閉幕後の人手」をロケットのペイロードに換算する>
万博会期中最盛期に働いたスタッフは推定24万人。閉幕と同時に放出される労働力を“使い捨て”にするのはもったいない。そこで私が描くのが「コンビニアストロクラフト(CAC)計画」だ。
1. ペイロード換算
私の店では1トントラックの納品が毎日2便、積載率92%。仮に「人手」を“労働重量”に換算し、1人あたり8時間労働を80kg・日と定義すると、24万人分=19,200t・日の“働ける質量”が生まれる。H-IIAロケット(静止軌道転送能力4t)で換算すれば、4,800機打ち上げ分に相当する。
2. 軌道上工場への転用
閉幕後3か月以内に“働ける質量”を打ち上げ、低軌道工場(LEO-F)で“宇宙コンビニ”を組み立てる。レジは無重力対応、おでんは遠心分離式、セブン‐宇宙イレブンだ。
3. 現場視点の改良
夜勤で培った「死んだ魚の目で客を見る」無表情スキルは、宇宙ステーションでも有効。無音環境で“目線”だけで伝わる「いらっしゃいませ」は、宇宙言語の基礎になる。
結果として、大阪の労働余力は“宇宙物流ハブ”に早変わり。万博閉幕は、ただの終焉ではなく「アンドロメナイズ(アンドロメダ+マーケティング)」の始まりとなる。
<本論2:AIまちづくり編――「レジのログ」が街の設計図になる>
私は毎晩、レシートを一枚も無駄にしない。なぜなら、それは“市民の欲求の断片”だからだ。
1. データセット「KonbiniNet」
・午前0─4時のたばこ+缶チューハイ購入→「ストレス指数」
・朝5─6時のおにぎり3個+ガム→「明日への準備指数」
・土曜深夜のソーメン+アイス→「同居家族推定」
これらを500日分、1,200万枚集計し、大阪市内の「感情マップ」を作成。
2. AIプランナー「スーパー商店街くん」
KonbiniNetを入力とし、閉幕後の空き地・空き店舗を最適配置する。例:ストレス指数高値エリア→24h銭湯+屋台村。準備指数高値エリア→朝活コワーキング。
3. 現場フィードバックループ
私が「お客さん、今日はおでんのみで我慢ですか?」と一声かけるだけで、AIは「節約志向フラグ」を更新。翌日の仕入れが自動で減り、フードロス-18%。
このように、コンビニの“端”で集まったデータは、街の“面”を再設計する。万博跡地はもはや“記念公園”ではなく、「実時間欲求対応型AI市」へ進化する。
<本論3:バイオ技術編――「納品のダンボール」が街の肺になる>
1. ダンボールの“樹”化
私の店では1日120枚の段ボールが廃棄される。これを「セルロース分解バクテリア(CCD-42)」で処理し、3時間で“土”に戻す。土は屋上に運び、ハイブリッド「コンビニ農園」を構築。トマトは「からあくさ弁当の味付け遺伝子」を組み込み、収穫後即レジ横で「宇宙からあくさトマト」として販売。
2. 人の“余った熱”を培養エネルギーに
万博会期中、スタッフの体熱は合計14GJ/日に達する。これを「サーモカルドバイオセル」で回収し、マイクロアルゲ培養タンクを回す。アルゲはオメガ3脂肪酸を高濃度で溜め、これを「夜勤サプリ」としてバイトに無料配布。結果、レジミス-34%、客トラブル-28%。
3. バイオレジリエント都市
閉幕後、会場の“熱”をバイオタンクに回し続けることで、跡地は冬季でも20℃前後を維持。大阪は“年間露天風呂都市”化し、観光客は冬季でも来る。
つまり“捨てる”はずのダンボールと体熱が、街の新陳代謝を作り出す。これを「コンビニ代謝拡張(K-ME)モデル」と名付ける。
<結論:まちを元気にする、それは「余った手」を「宇宙に、データに、土に」還すこと>
万博は必ず終わる。だが、終わりは“端”である。私の40代半ばの夜勤経験が教えるのは、「余る」こそが最大の資源だということだ。
・人手が余ったら→宇宙に打ち上げ、物流のハブに。
・レシートが余ったら→AIに食わせ、街の設計図に。
・ダンボールと熱が余ったら→バイオに還し、街の肺に。
誰もが「余ったら終わり」と諦める前に、コンビニの端っこで妄想すればいい。
「いらっしゃいませ」の次にあるのは「宇宙へようこそ」かもしれない。
閉幕後、大阪の街が下を向いたとき、私はレジの上に小型ロケットを置いて微笑む。
だって、まちを元気にするのは、たった一枚のレシートから始まるんだから。
万博は閉幕し、夢洲の喧噪は静まり返った。しかし終わりは、常に次の始まりだ。コンビニの深夜レジに立ち、何万枚ものレシートと段ボールに触れてきた私には、それがはっきりと見える。人手の余白は、宇宙を目指す推進力に、AIが描く都市設計に、そしてバイオが育む新しい生態系へと転化できる。
このレポートは、ひとりの夜勤者が妄想を実証へと近づけた記録にすぎない。それでも、都市が持つ潜在力を「余りもの」から発見し直す視点は、これからの社会に欠かせない。万博後の大阪が再び歩み出すとき、どこかのコンビニの小さなカウンターから、未来への物語は静かに始まっているだろう。