10月10日 第33話、腰痛ベルトと宇宙野菜が描く、コンビニ発まちづくり論
深夜のコンビニには、不思議な静けさがある。
客足の絶えたレジの向こうで、私は腰をさすりながら、棚に並ぶおにぎりを整える。湿布の匂いが微かに漂う。時計を見ると午前2時。外は無音の世界だ。
そんな夜勤の最中、ふとスマホのニュースで「宇宙でレタス栽培が成功」という記事を目にした。AI制御の光で育つ緑の葉。腰に鈍痛を抱えたまま、その光景に妙な親近感を覚えた。
ここはただのコンビニだ。けれど、24時間灯りを絶やさぬこの場所は、地域の最後の明かりでもある。
もしこの灯りが、AIや宇宙技術とつながったら? 腰痛を抱える夜勤バイトの現場から、地域の未来を描けるとしたら?
そんなありえない発想を、今夜は少しだけ真面目に考えてみたい。
序論
筆者は45歳、某大手コンビニチェーンで5年目の深夜バイト従業員である。腰痛持ちで湿布が必需品だが、人手不足の店舗で急遽夜勤を請けることも珍しくない。本稿では「腰痛対策で退職を検討するも踏み切れない」自身の体験を起点に、SF的な地域活性の可能性を妄想展開したい。
まず前提として、日本のコンビニ数は2023年時点で5.8万店超だが、2025年時点で4.2万店まで減少(帝国データバンク調べ)。筆者の勤める店舗も24時間営業を維持するため、バイトが急遽夜勤を請ける「穴埋め文化」が常態化している。この「穴埋め」が、地域活性のカギを握ると考えるに至った過程を記す。
本論
1. 腰痛と「穴埋め夜勤」が教える地域の現実
筆者が腰痛を発症したのは、2024年秋頃から。レジ業務で前傾姿勢を続けるうち、起床時に腰が伸びなくなった。整形外科では「腰椎椎間板ヘルニアの疑い」と診断されるが、深夜バイトのシフトは減らさないと生活できない。
ここで重要なのは「穴埋め夜勤」のメカニズムだ。
昼間シフトの大学生が試験期間に入ると、店長は筆者のような「柔軟に動ける中年バイト」に深夜依頼。
筆者の家から店舗まで、自転車で7分という立地が「深夜でも来られる」と判断される。
深夜は客数が少ない反面、品出しや発注業務が集中する「効率の矛盾」。
この経験は、地域活性における「柔軟性」と「効率性」のジレンマを象徴している。地方では若者が流出する中、筆者のような中高年が「穴埋め役」として機能する構図は、行政の地域活性政策が目指すべき「多様な人材の活用」と相通じるものがある。
2. SF的妄想その一:腰痛を克服する「AI姿勢補正バイト制服」
腰痛対策で整体や腰痛ベルトを試みるも効果は一時的。しかし、2025年2月、筆者はバイト先のオーナーが参加する「コンビニ産業展示会」で衝撃的な展示を見た。
展示内容
装着型外骨格技術を活用した「コンビニバイト専用制服」。
腰部に装着したAIセンサーが姿勢をリアルタイム解析。
荷物の持ち上げ時に自動的に補助力を発揮。
筆者の妄想
この技術を応用し、地域全体の「健康データプラットフォーム」を構築。
全バイトが装着する制服から腰痛リスクをAI解析。
地域の高齢者も同じシステムで健康管理。
データは自治体の「健康見える化マップ」に反映。
腰痛リスクの高いエリアに整体師を派遣する「モバイル施術車」巡回。
結果として「健康寿命延伸地域」として自治体の交付金が増加し、バイトの腰痛問題は地域活性の起点に変わる。
3. SF的妄想その二:深夜のコンビニを「宇宙野菜栽培拠点」に
筆者の勤める店舗は、住宅街と商業施設の境界に位置。深夜2時から4時は来店客が1時間に3人程度という「超暇タイム」が発生する。この時間を有効活用する妄想を、科学系ユーチューブチャンネルで得た知識で拡張する。
妄想の種
2025年現在、宇宙空間での野菜栽培が実用化(JAXAのISS実験)。
完全人工光型植物工場のコストが2023年比30パーセント低下(農水省資料)。
SF的展開
深夜バイトの空き時間を活用し、店内奥のバックヤードで「宇宙野菜栽培」を行う。
天井にLED植物工場モジュール設置。
深夜バイトが水やりと生育管理。
収穫したレタスは朝食用サラダバーで提供。
余剰分を「宇宙野菜」としてECサイト販売。
これにより、
深夜バイトの「体を動かす時間」が腰痛予防運動に。
地域産野菜としてブランド化し観光名所化。
宇宙技術を身近にする「近未来感」が若者の来店動機を刺激。
4. SF的妄想その三:AIが予測する「最適バイト配置」で人手不足解消
筆者が経験した「急な夜勤依頼」は、AIが解決できる社会課題でもある。
現実の問題
シフト管理が属人的(店長の「勘と経験」)。
バイトの「今日は入れます」メッセージがLINEで錯綜。
腰痛持ちなど健康管理が必要な人材の活用が非効率。
妄想の解決策
「コンビニ人材最適化AI」を開発。
各バイトの「腰痛リスク」「希望シフト」「通勤時間」を学習。
雨天時は腰痛持ちをレジ業務(濡れにくい)、晴れは品出しと最適配置。
急病者が発生した場合、10キロ圏内の「柔軟に対応可能なバイト」をAIが自動スカウトリスト化。
結果として「バイトの身体的特徴を尊重する職場」として地域イメージが向上。若者のバイト応募が増加し、筆者のような中高年も無理なく働き続けられる。
結論:まちを元気にする「コンビニ起点SF」
筆者が腰痛と戦いながら深夜バイトを続けるのは、表面的には「生活のため」だが、根底には「地域の灯りを消すまい」という使命感がある。
SF妄想を現実に落とし込むと、以下の3点が地域活性のカギとなる。
健康データプラットフォーム:バイトの腰痛問題を起点に、地域全体の健康管理。
宇宙野菜というコンテンツ:近未来感で若者の関心を引き付け。
AIシフト最適化:多様な人材が無理なく働ける職場環境。
これらは全て「深夜のコンビニ」という縮図から始まる。筆者が腰痛ベルトを装着しながら深夜シフトに入る姿は、地域が抱える課題と可能性の両方を象徴している。
「まちを元気にする」のは、壮大な政策より「腰痛に悩むバイトの小さな工夫」かもしれない。
夜勤を終えて外に出ると、空が白み始めていた。
腰はまだ重い。それでも、自転車のペダルを踏むたびに、「今日もこの街が動き出す」と思える瞬間がある。
AIも宇宙野菜も、今はただの夢かもしれない。けれど、夢を見るのは自由だ。むしろ、現場で汗をかき、腰をさすりながら働く人間ほど、未来を妄想する資格がある。
コンビニの灯りは、街の呼吸だ。誰かが立ち止まり、誰かがまた動き出す。その連続が、地域を支えている。
腰痛を抱えてでも、今日も立ち続ける人たちへ――その姿こそ、まちを照らす本当のエネルギーだと思う。