10月6日 第29話、超地域活性宇宙コンビニ計画:食料システム法をSF的に再解釈する試み
本稿は、地方衰退のただ中で夜勤に立つ一人のコンビニ店員が、政策と現場の断絶を埋めるために編み出した“妄想的提言”である。改正「食料システム法」が掲げる理念──「持続的食料供給」「環境負荷低減」「消費者理解の増進」──は、官公庁や学術界の言葉としては整っている。だが、その条文の向こうで、現場の人間が何を見ているかは、ほとんど語られない。
深夜のコンビニに立つと、政策が見落としている風景がある。誰もいない駐車場、値上げを嘆く高齢者、廃棄される惣菜。そこには、制度設計の文書には書かれない「地域の限界」が、静かに滲み出ている。だが同時に、そこにこそ「再起動の兆し」も潜んでいる。
本稿の目的は、制度の再解釈と空想の融合にある。条文の背後に潜む思想をSF的に拡張し、「宇宙」「AI」「バイオ」という異なるスケールの技術を地域経済の文脈に接続することで、政策の外側にある創造的ロジックを可視化する。すなわち、本論は政策提言であると同時に、現場からの哲学的抵抗であり、未来設計の試みである。
――夜勤の青白い光の下で、私は思う。
このレジの光も、宇宙の星も、同じ「公共照明」なのかもしれない。
序論:夜勤バイトが見つけた「地域消滅」の予兆
深夜2時、店内を照らすLEDの青白い光の中、私はレジカウンターで温冷両用ケースの温度調整ボタンを押していた。目の前の高齢女性が「また値上がりしたのね」とため息混じりにそう言いながら、栄養補助食品を1個だけ購入する。私が勤めるこの郊外型コンビニエンスストアでは、最近似たような光景が繰り返されている。
この2年というもの、深夜シフトで目にする風景は確実に変化していた。かつては学生グループで賑わった揚げ物ケース前も、高齢者ばかりの客層に。惣菜の大量廃棄と、棚に並ばない新商品たち。私が働くこの「ミニストップ藍住店」は、四国某県のベッドタウンに佇む典型的な郊外店だが、ここ半年で来客数が30パーセント減少し、深夜帯の客層はさらに高齢化していた。
「これは単なる景気のせいなのか?」――深夜の什器整理中にふと目にしたのが、今回の「食料システム法」の改正記事だった。新聞記事では「持続的食料供給」「環境負荷低減」「消費者理解の増進」といった専門用語が踊っていたが、私のような現場の人間にはピンと来ない。代わりに頭に浮かんだのは、深夜のバックヤードで段ボールを積みながら考えた「宇宙とのつながり」だった。
本論:SFコンビニ店員が考える3つの宇宙活性プロジェクト
1. 宇宙小麦プロジェクト:宇宙開発と地域農業の融合
深夜3時の商品補充中、冷凍ケースのLEDが点滅を繰り返すのを見て思いついた。店内温度管理システムのエラーコードを眺めながら、「宇宙空間なら安定環境で小麦が育てられるかも」とつぶやいた。当店の場合、冷蔵ケースの故障が地域物流の混乱を招くように、食料システムの脆弱さが地域衰退に直結する。
もし人工衛星軌道上に小麦工場があれば? 映画『インターステラー』を思い浮かべながら、新聞記事中の「みどりの食料システム戦略」をSF的に拡張する。宇宙空間で無重力栽培された小麦は、病虫害ゼロで生育し、1ヘクタールあたりの収量は地上の10倍。我が県の耕作放棄地に宇宙小麦の地上栽培基地を造り、軌道上の宇宙農場とリアルタイムで生育データを共有する。
深夜の品出し作業中、レジカウンターのPOSシステムと宇宙農場管制室を連動させる妄想に浸る。客がバーコードを読み取ると、画面の向こうに宇宙小麦の生育状況が映し出される仕組みだ。当店でも「宇宙小麦パンコーナー」を設置すれば、客足が戻るかもしれない。実際の改正法では「技術研究開発」が認定対象に含まれるが、宇宙開発まで射程に入れた解釈は独創的すぎると笑われるだろう。
2. 脳波POSシステム:AIまちづくりの具現化
真夜中の品出しで商品棚の偏りを発見した私は、レジカウンターのタッチパネルを触りながら考えていた。当店では深夜帯、高齢者ほど商品を探すのに時間がかかる。店内を徘徊する客の視線をAIが解析し、最適な棚配置を自動提案するシステムが作れないか?
改正法でいう「流通の合理化」を、宇宙物理学者のリサ・ランドール博士の「余剰次元」理論と組み合わせる。客の脳波パターンをAIが学習し、ウォークインケースの照明が自動的に「高齢者は青LEDを好む」「学生は温白色が購買意欲を刺激する」と調整されるコンビニ。このデータを使って、市役所と連動した「地域欲望マップ」を作成し、空き店舗の活用計画を立てる。
実際の改正法にある「中小企業の税制特例」を応用し、市役所の「地域食料システム構築プラットフォーム」とコンビニPOSデータを共有。深夜の来客パターンから「孤独死防止アルゴリズム」を開発し、地域包括支援センターと連動するSF的未来。コンビニが宇宙とのつながりだけでなく、地域の高齢化問題を解決するAI中枢になる妄想だ。
3. 人工光合成惣菜:バイオ技術で地域を活性
深夜3時30分、期限切れ惣菜の大量廃棄作業をしていると、唐揚げの油の臭いが充満するバックヤードでひらめいた。改正法でいう「環境負荷の低減」を、NASAの人工光合成研究成果と組み合わせる。
店内厨房にNASA式の人工光合成装置を設置し、二酸化炭素と水から直接、唐揚げやコロッケの原材料を合成する。深夜シフトの私が操作するタッチパネルで「今日の特売惣菜」を設定すると、装置が自動的に大豆油と小麦粉を生成。店内POPに「宇宙との共生惣菜」と書けば、SF好きな客が押し寄せるかもしれない。
実際の改正法では「食品ロスの削減」が認定対象に含まれるが、私の妄想はさらに先を行く。惣菜の包装にQRコードを印刷し、読み取ると宇宙小麦の生育状況や人工光合成の二酸化炭素削減量がリアルタイムで表示。客が商品を手に取るたびに、地域活性ポイントが溜まるゲームアプリを連動させる。
結論:宇宙コンビニが作る「まちを元気にする」未来
夜勤明けの朝6時、店を後にする時に見た風景が私の妄想を加速させた。高齢者だけの町に、宇宙小麦を原料にしたパンを買い求める学生や、人工光合成惣菜をケースに入れる家族連れが増える。未来のコンビニは、宇宙とのつながり、AIとの共生、バイオ技術の融合によって、単なる小売店から「超地域活性宇宙コンビニ」へと進化する。
改正「食料システム法」の理念をSF的に拡張することで、単なる法律の条文が、宇宙とのつながりによって地域を活性化する具体的なプロジェクトに変わる。深夜のコンビニで温冷両用ケースの温度を調整する私が、宇宙とのつながりを感じながらボタンを押す――その小さな行為が、未来の地域活性、宇宙との共生活性を象徴する行為になる。
この妄想論文が示すように、宇宙開発、AIによるまちづくり、バイオ技術の融合によって、40代コンビニ夜勤バイトの私が、「まちを元気にする」未来を具体的にイメージできる。改正法という現実の条文を起点に、宇宙とのつながりによって地域を活性化するSF的未来――それが「超地域活性宇宙コンビニ」計画だ。深夜のレジカウンターで温冷両用ケースの温度ボタンを押す私の指先が、宇宙とのつながりを感じながら、未来を創造する。
この論文は、学術的正当性よりも「現場の手触り」を優先して書かれた。私は研究者でも行政官でもなく、ただの夜勤バイトだ。だが、毎晩コンビニのレジ越しに見える世界は、確かにこの国の縮図だと思う。人が減り、店が減り、光が消えていく。その現実を前に、「政策」と「空想」のどちらか一方では、もう未来を描けないと感じた。
だからこそ、私は“妄想”を選んだ。
それは逃避ではなく、再構築の方法だ。現場の直感をSFの言語で表現することで、政策の枠を一度壊し、そこに新しい構想を立ち上げる。宇宙小麦も、脳波POSも、人工光合成惣菜も、決して冗談ではない。未来の制度設計は、現実と空想のあいだを往復しながらしか育たないからだ。
深夜のレジカウンターで、私は何度も思った。
「この光の先に、誰がいるんだろう」と。
けれど、もしかしたらその“誰か”は、宇宙の向こう側にいるのかもしれないし、未来の地域社会の中にいるのかもしれない。
私たちのまちは、まだ終わっていない。
ボタン一つで温度を変えるように、発想一つで未来も変えられる。
この「超地域活性宇宙コンビニ」計画は、そんな確信の記録である。