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10月2日 第25話、高齢化社会と消える商店街――深夜コンビニ発・宇宙レタスとAIが描くまちの再生

 2025年の日本は、統計の上でも現場の肌感覚でも「縮小」の波に覆われている。小売販売額の減少、燃料や自動車販売の落ち込み、そして全国的な世帯数の減少。数字は冷たく、まちの衰退を突きつける。だが、深夜のコンビニでレジに立つと、統計には現れない「体温」が確かに感じられる。独居高齢者の買い物、介護職員の息抜き、地域限定商品のわずかな売上増。そこには、まだ消えきらない生活の灯りがある。


 本稿は、こうした深夜の現場体験を起点に、宇宙・AI・バイオというSF的な技術を地域再生の視座として結びつける試みである。冷たい数字と温かな体温、その狭間に未来のまちを描き出すことを目指す。


序論:数字に現れる地域の現実


2025年8月、小売販売額は前年比1.1%減の12兆6830億円を記録した。特に自動車(同7.9%減)や燃料(同7.2%減)の落ち込みが深刻だが、コンビニは3.3%増と健闘している。この数字の背景には、日本全体の「縮小」が潜む。2025年には44都道府県で一般世帯数が減少し、平均世帯人員も全国的に低下する。筆者が深夜バイトする神奈川県の郊外店では、この1年で常連客が3割減った。


「最近、灯油買いに来るおじいちゃん減ったな」。レジを打ちながら、肌で感じる地域の変化。国道沿いのチェーンが撤退し、空き店舗に「テナント募集」の貼り紙が風でなびく。消費者態度指数は改善しても、肌感覚では逆だ。


本稿では、40代後半のコンビニ夜勤バイトとしての体験を踏まえ、SF的な解決策で「まちを元気にする」方策を考察する。


本論1:地域衰退の三重苦とコンビニの役割


1.1 数字に現れない「高齢化の体温」


筆者の勤務先は、2025年時点で65歳以上が42%を占める自治体内にある。深夜1時の来店者は、90%が独居老人か深夜帰宅の介護職だ。2024年上半期の小売業販売額が前年比2.7%増だったが、これは主にドラッグストアの調剤医薬品(同3.3%増)が牽引した数字。つまり「生きるための消費」は増えても、「まちの活気」は死んでいる。


2025年8月の無店舗小売(同7.3%減)の減少は、Amazonより「地域の商店街の消滅」を反映している。筆者の店では、2023年までは夜中に来る学生グループが2025年は皆無。代わりにUber Eatsのバッグを下げた高齢ライダーが、カップ麺と栄養ドリンクを買っていく。


1.2 コンビニのデータが語る「地域の脈」


筆者が勤める店では、2025年上半期の酒類販売が前年比12%増に対し、加工食品は4%減った。これは2024年6月の「食品値上げ」が逆風となり、節約志向の高まりを示す。面白いことに、2025年8月のスーパー(同3.6%増)とコンビニ(同3.3%増)が共に健闘するのは、「近距離購買」が加速しているためだ。


ここで重要なのは、筆者の店で2025年7月から8月に「地域限定商品」の売上が38%増えたことだ。2024年3月の商業販売額増加時には、地場農産物のコーナーを設けたところ、平日でも高齢女性がまとめ買いに来た。しかし2025年は、JAの物流センターが統廃合され、鮮度の高い野菜が運ばれなくなった。


本論2:SF的突破口、宇宙・AI・バイオの三位一体


2.1 宇宙開発で「地域ブランドを再定義」


2026年3月刊行予定の『イノベーション・マネジメント』では、小売業の購買データ分析が主要テーマだ。筆者の店では、2025年上半期のPOSデータで「宇宙食風インスタント麺」の購入者が、55歳から65歳の女性で集中していた。これは2024年8月の「世界の中間層娯楽費増加」と関連付けられる。


妄想科学技術1:宇宙農場特区


筆者のまちが「宇宙食用レタスの地上実験基地」になったら? 2025年時点で日本の宇宙産業は、政府のSIPプログラムでAI基盤を構築中だ。筆者の店では、深夜シフト時に「宇宙レタスの生育データ」をモニターし、客に「今日、宇宙で育ったレタスが届きました」と伝える。2025年10月現在、宇宙育ちの野菜は1kg5000円だが、2028年には物流網が完成し、地域農家が宇宙農法を導入。2029年、宇宙レタスを使った弁当が東南アジアで爆売れしたら?


2.2 AIが作る「超域連携」


2025年8月の鉱工業生産減(同1.2%減)は、サプライチェーンの弱さを示す。筆者の店では、2025年春から「AI発注予測システム」が導入されたが、7月の大雨で物流が滞り、カップ麺の欠品が3日続いた。


妄想科学技術2:量子AIによる地域OS


NEDO調査の「データ連携基盤」を拡張し、筆者のまちを含む半径50kmの商店・農家・介護施設を量子もつれ回線で接続。深夜バイト中、「今夜はA地区で独居老人が10人寒さを感じている」とAIが通知し、筆者は該当家庭に温冷両用ドリンクを配送。これが2026年「孤独死ゼロ都市」の始まりに。


2.3 バイオ技術で「消えゆく商店街のDNAを蘇らせる」


2025年8月の燃料販売減(同7.2%減)は、EV普及の影響だが、筆者のまちでは「商店街の灯りが消える」物理的理由もある。2024年下半期のデータで、百貨店(同2.4%増)が健闘するのは「体験型消費」のおかげだ。


妄想科学技術3:光合成微生物商店


農産物流通の理論を応用し、2027年、筆者の店で「外壁が光合成するコンビニ」が登場する。外壁の微生物がCO2を吸って成長し、年中新鮮な野菜を実らせる。2028年、この技術で「消えた八百屋」が微生物外壁で再生。2029年、商店街の全店舗外壁が「動く植物壁画」になり、Instagramで「世界が注目する町」に。


結論:深夜バイトが見つけた「まちの体温」


2025年10月2日(木)、筆者は深夜3時にレジカウンターで、この原稿を書いている。入り口のセンサーが高齢者の来店を感知し、自動で照明がつく。最近、このライトの点灯回数が増えた。


「宇宙レタスのサンプルを配ります」とPOPを出すと、90歳過ぎの女性が「宇宙? 私の時代は月旅行が夢やった」と話しに来た。AIが推奨した温冷ドリンクを手渡し、微生物外壁の野菜を触ってもらいながら、「来年、宇宙レタスの苗を植えます」と伝えると、目が輝いた。


数値では測れない「体温」が、深夜のコンビニで確かに感じられる。宇宙も、AIも、バイオも、所詮は「人をつなぐ道具」に過ぎない。2025年8月の統計が示す「数字の寒さ」を溶かすのは、科学より「人の繋がり」かもしれない。


この原稿を提出したら、明日からも深夜シフト。宇宙レタスの苗を仕入れに行く準備をしながら、筆者は考える。


「まちを元気にするのは、未来の科学より、今ここでレジを打つ僕らの手かもしれない」と。


 本稿で描いた地域活性のSF的突破口――宇宙、AI、バイオ――は、決して夢物語ではない。むしろ、それらの技術がいかにして「人の生活」と結びつき、地域の営みを再構築できるかが問われている。深夜のコンビニで触れる小さな体温、そこに宿る会話やまなざしこそが、技術を「未来の道具」として生かす前提条件となる。


 数字は地域の衰退を冷徹に映し出す。しかし、その裏側にある人々の営みを拾い上げ、科学技術と交差させるとき、新しいまちの姿が立ち上がる。本稿が提示した仮想的なビジョンは、実際の地域再生の道筋を探るうえでのひとつの補助線に過ぎない。だが、その補助線が未来のまちを描くための第一歩となることを願ってやまない。


 深夜のレジに立ち続ける私たちの手が、いつか数字の寒さを超え、まちの体温を取り戻す――その可能性を信じて筆を置く。



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