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5、デート


今日は学校自体はあるが進学する奴が自習するだけで特に何もない。俺は高校にはいかず、そのまま冒険者一本でやっていくつもりのため行く必要はないのだが、魔法が使えるようになった今、改めて勉強しなおすことにした。丁度学校には魔法を使える先生もいるし、それ以上に魔法に詳しいやつもいる。



「つーとむ、おっは~」


「おお、いいところにきたな。ちょっと悪いんだがこの属性相性理論について思うことを教えてくれ」


「…」


「?」


何故かむすっとした顔でこちらを見つめている。しかし、その顔も可愛らしく、大変眼福である。


彼女は百舌鳥才花。俺の幼馴染にして超有望な冒険者だ。彼女のスキルはあらゆる魔法系スキルの極致ともいえるもので、それを扱う彼女ならこの手の質問ちょちょいのチョイ(死語)のはずだが、どうしたんだ?


「な、なんだよ」


「…あのさぁ、一昨日ぶりの美少女幼馴染にかける最初の言葉がそれでいいの?」


「う、あー、ええっと、あ、なんか今日の才花は綺麗だな!」


「今日以外はきれいじゃないっていうの?」


「っう、いや、そんなことない。いつもきれいだなって、可愛いなって思ってますそれが今日は一段と綺麗に見えるなって。」


ど、どうだ!?正解か!?


「うーん、まぁ及第点かな、それで、属性相性についてだったよね、それについては…」


なんだかんだ言いつつもしっかりと教えてくれる。やっぱり才花はいいやつだ。それにやはりあらゆる属性の魔法を使いこなすだけあって単一の属性じゃなく幅広く、そして深く魔法について理解しており、実際の経験を交えた説明は大変分かりやすかった。


「なるほどな…つまり属性相性ってのはこの属性はこの属性に対して弱いとか、強いとかそういうのだけじゃないんだな」


「そういうこと。基本的に火属性は風属性に強いって言われてるけど、それだけじゃなくて風属性は火属性の効果を強化することもある。結局は魔法って言っても起こす事象は基本物理現象だからね。絶対的な相性ってのはないよ」


「なるほどな、結局は使いようってことか。ありがとな、助かったよ。やっぱ才花は天才だ!」


「べつに~、これくらい大したことないし」


「いや、大したことあるって」



キーンコーンカーンコーン



学校のベルがなった。もう昼か。今日も午後はダンジョンに行く。なぜか分からないがダンジョンに行けば行くほどお金が減るのだ。そのためにはダンジョンでお金を稼がなければいけない。


…自分でも矛盾してるのは分かってるよ。


だがしかーし、今日からはしっかりと稼げるダンジョンに行くつもりだ。そのダンジョンは小鬼の住処と違って少し遠いため、電車を使わなければいけないがその時間を加味しても十分稼げるダンジョンのはずだ。


「よし、じゃあ才花ホントにありがとな!!また機会があったら教えてくれ!!」


そう言ってそのまま去ろうとした、が、制服の袖を掴まれ、引き留めれた。引き留めたのはもちろん才花だ。


「どうした?」



「別にーどうしたってことじゃないんだけどさ、最近私忙しかったじゃん、今日って久々の全OFFなの。で、最近私頑張りすぎてたし、ご褒美にどっか友達と遊びに行こうかなーって思ってて、」


ふむ。何が言いたいのか分からないがなんで顔が赤いんだ?


「確かに最近の才花は頑張りすぎっぽかったな。いいんじゃないか?久々に遊んでも」


お金はたくさんあるだろうしな。


「うん、それでね、最初遊ぼうと思ってた女友達が今日は彼氏と予定があるっぽくて、ドタキャンされちゃって、他の人と行こうかなーって」


「そりゃ災難だったな」


「…」


おいおいなんでそんなジト目で見てくるんだ?可愛すぎるだろ。さっきから何が言いたいんだ?


「あーもうっ!!もういい!!誰も私の相手してくれないし2組の音鳥(ねとり)くん誘ってみようかな!最近なんか私に興味あるみたいだったし」


「な、なにぃ!!」


3年2組の音鳥太郎は中学生にも関わらず、スキル『チャラ男』の影響で髪は金髪、肌は日焼けサロンで焼いたかのような浅黒さをしている。性格も生粋の陽キャで地域の商店街ではおじいちゃんおばあちゃんに挨拶を欠かさない超好青年だ。


音鳥と才花が一緒に歩いている姿を想像するとなぜだか頭が、頭が…アァー!!


だ、だめだ。ダンジョン?知ったことか。だいたい俺がなんでダンジョンに行ってるのか分かってるのか?手段と目的をはき違えるな。



現実に戻って前を見てみるとそこにはすでに才花はいない。俺が脳破壊されている間に行ってしまったらしい。


急いで探すと教室から出て2組の方の教室に向かおうとするポニーテールがちらりと見えた。


俺は強化した肉体に任せて教室を駆けた。


「うおっ」 「ちょ、なんなの」 「な、なんだぁ」


教室を出て廊下に出る。2組の教室を見ると今まさに教室に入ろうとする才花の横顔が…!!


「まて!!」


「キャッ」


俺は廊下をトップスピードで駆け、その腕を掴んで強引に俺の方を向かせた。勢いで俺の方に倒れ込んできた才花を抱きしめるようにして受け止めてしまった。やばい、今俺すごいことをしてしまっている気がする。


やばい、やわらかい。そしてなんか良い匂いがする。シャンプー?香水?それとも…って、いや、そんなことしてる場合じゃない。何とか理性を保とうとするが、顔を上げた才花のうるんだ瞳が俺をまた現実から…


って、こんなことじゃダメだ。何か言え!!なんでもいいから引き留めろ!!


「ほ、ほかの奴のとこなんて行くな。俺じゃ、俺じゃダメなのか」


な、何を言ってるんですかあなた(俺)は!!


頭がぐるぐるする。くそ、こんなの師匠にまる一日修業してもらった時以来だ。頭が回らない!!いや、ぐるぐるしてるからむしろ回ってるのか!(?)


「馬鹿、強引すぎ…いいに決まってるじゃん///]


何ですかその可愛い声は!!今までそんな声聞いたことないんですけど!!アァアア!!


「って、いつまで抱きしめてるの?皆見てるよ?いい加減恥ずかしいんだけど」


ッハ!


周りを見てみるとキャーとかやるなーとか言ってる奴や拍手している奴までいる。


めっちゃ恥ずかしい!!


「す、すまん、って、おい、才花が抱きしめてきてないか?」


「んー?なんのことー?」


くそ、これ以上はもう俺の理性のATフィールドが…!!こんな場所で!!


と、俺の理性がビーストモードになりかける直前でやっと離してくれた。


「じゃ、駅前2時に集合ね。私は先に帰ってるから。我はあまねく偏在、ここにありて彼方にあり。『異空間移動(ディモーション)』」


何やら詠唱をしたかと思うと目の前から突然消えた。恐らく高位の空間魔法だろう。それをあんなラフに使うなんて…


それよりも、今何時だ?時計を見ると12時30分。時間まであと1時間半しかない!!


急いで帰らねば!!





$$$




うん、30分前に着いた。流石に早すぎたか。てか今考えたらこれ普通にデートだよな?

そう意識したら途端に不安になってきた。どうしよう俺、一応かえってシャワー浴びたけど臭くないかな?てかもう少し服買っとけばよかった。基本道着かジャージで生きている俺にとって服なんてものは場所だけ取る置物だったのでクローゼットを開けてもほとんどなかった。くそ!!馬鹿馬鹿!努ちゃんのバカ!!


「あれ、ツトム、まだ待ち合わせの30分も前だよ?早くない?」


そう悶々としていると後ろから声がした。振り返るとそこのは美女がいた。


ベージュのなんかニットのワンピースにジャケットとなんだ、なんか絵を描く人がかぶってるあれ、そうだベレー帽だ、それをかぶってる。ウン、服詳しくないからなんか口で説明するとあれだな。


そこにいつもはしないメイクをしてきている。メイクをしなくても十二分に美人だが、したことによってさらに美しさが美しくなってる。(?)


とにかく、なんていうんだろう…恋人感っていうんですか?ウン。大変眼福です。


「…それは才花もだろ?」


「えへへ、ばれちゃった?ちょっと張り切りすぎちゃった。…変じゃない?」


!!変態じゃないかって!?まずい、おれが変態であることがばれたか!?

いや、落ち着け、変態じゃない、「変じゃない?」だ。ばれてないばれてない。


「変なわけあるか、正直…めっちゃかわいい…と、思う」


「うふふ、ありがと!あんまりメイクしないから不安だったけど、よかった!大変だったんだから!」


!!?変態!?変態って言ったか!?今のは確実に言ったよな、やっぱり、ばれたか!?

いや、いやいや、変態じゃない、「大変」だ。落ち着け俺、ばれてないばれてない。


「…ちょっと、そんなにじろじろ見ないでよ、流石に恥ずかしいから…この変態」




やっぱり変態だった。











電車に揺られて数分、向かった先は大手商業施設ロイロイと書いてシカクイショッピングモールだ。

ここは普通のショッピングモールとしてもでかく、それに加えて営業している会社がもともとダンジョン産業を生業としていたのもあって冒険者向けの商品も数多く存在している。


「初めて来たけどでっけー」


「え、ツトム来たことないの!?」


「うん、初めてだけど、もしかしてやばい?」


「やばいも何も、もうダンジョンダイブしてるんだよね?武器とか、防具とか、ポーションとか、そういうのどうしてるの?」


「装備は近所のホームセンターで買ったナイフ2本と、リュックくらいかな?まぁまだ小鬼の住処しかダイブしてないから基本余裕だったよ」


まぁ、死にかけたけど。それはカッコ悪いので言わない。


「うーん、確かにツトムなら格闘術もあるし、ゴブリンなら余裕かもね。でも慢心してたらいつか痛い目あうよ?」


「それは…痛感したよ。でもな、かっこ悪い話だけど正直金が無くて装備なんか揃えられないんだよ」


俺が今欲しいのは何よりもまず剣、そして軽鎧だ。しかし、剣は安いものでも2万はする。鎧至っては全部そろえようとしたら安くても10万は超えるだろう。


そんなお金をポンと出せるほど駆け出し冒険者の収入は良くない。他の初心者冒険者が最初どうしているのか教えてほしいくらいだ。


「もしかして、しらないの?ここなら4桁台でもしかしたらいい剣が買えちゃうかもしれないこと」


「な、なにぃ!!」








シカクイの地下3階、冒険者向けのコーナーの中でも何故か暗く、倉庫をそのまま店にしたような場所があった。そしてそこに積まれているのはたくさんの武器や防具だ。


看板にはへたくそな字で「初心者応援コーナー」とか書かれている。めちゃめちゃ怪しい店だが駆け出し冒険者からかなり重宝されている人気の店らしい。


ここには大手、中小問わず、多くの武器メーカーに就職している鍛治氏の試作品や会社が定める規定に収まらなかったもの…つまりジャンク品が集まっており、それを安く売ることで駆けだし冒険者を応援しようという店らしい。


中には無名だが腕のいい鍛治氏が作った作品などもあり、宝探し的な要素もあって大変繁盛しているんだとか。


近くにあった剣を見てみると、なんと8000円!?安い!!しかし、直剣にも関わらず、先端に行くにつれて少しゆがんでいる。これではすぐに折れてしまうだろう。


これは、レイピアか?値段は…2万円か、ちょっと高いな…ん?名前が書いてある。み、くりや?

御厨か!?あの伝説の刀工の!?なんかのテレビで「おいらは刀しか打たねぇ」って言ってたよね!?え?レイピア?偽物か?いや、でもこの独特の波紋、明らかに御厨製だ。これってやばいんじゃないか?


他にも単に粗悪品、質はよく、値段もそれなりにするが曰くのあるもの、いたって普通のものなどいろいろある。


これは…おもしろい!!


「どーお?面白い?」


ッハ、夢中になっていた。せっかく二人で来たのに女の子を置いて武器に夢中になるなんて、これじゃデートの途中でパチンコに行って「あ、ここ見学とかだめだからちょっと外で待ってもらってていい?」って言うクズ彼氏と一緒じゃないか。


「ごめん、夢中になってた…」


っく、嫌われてしまったか?


「わっかる―!まさに宝探しって感じだよね!私も初めて来たとき夢中にって漁ったなー。よし、じゃあお互いちょっと探してみよ!!いいかな?」


「いいよ、って言うか、むしろお願いしていい?」


「もっちろーん、やっぱり私達冒険者だね!!」


なんだこの可愛い生物は。




音鳥太郎 スキル「チャラ男」の保持によって元々快活な性格がさらに快活に。人脈の広がりも留まることを知らず、その人脈を使って中学生にしてボランティア団体を設立、数多くの先進国に微々たるものではあるが支援を行った。近年、ミーチューブというサイトで、「チャラ男に世界は救えるか」を設立。まだまだ発展途上ではあるが登録者も増え続けており、そこで得た収益は全て恵まれない子供たちに寄付している。有望な冒険者候補である百舌鳥才花の話を聞き、持ち前のコミュ力で近づき、支援の重要性とボランティア活動の意義について熱く弁論。今後冒険者として成功したらその一部を寄付することを音鳥の名前を少し使わせてもらうという制約のもと口約束ではあるが取り付けた。

中学卒業後も奉仕の精神で活動し、晩年にはノーベル平和賞を受賞。かれの最後の言葉「皆楽しくないとダメっしょ☆」は名言として長く教科書に載ることになる。


なお、この作品には二度と出てこない。


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