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誰か、がいた  作者:
1/17

プロローグ


 あの人と過ごした時間は、きっと幻だったんじゃないかと思う。

 

 怖いほど静かで、穏やかで、なのにいつも死の匂いがしていた。

 

 気づかないふりをしていた。

 本当は、初めて目が合わせたときからわかっていたかもしれない。

 

「この人は、どこにもいけない人なんだ。」

 

 引き止められなかった後悔と、それでも隣にいたかった自分。

 何もできなかった、無様な人間だ。

 

 言葉にできなかったことは、たくさんある。

 けれど、一生忘れられない。

 

 あの人が本をめくる指先が、今でも目に焼きついている。

 静かな午後だった。

 何も起こらないまま、時間だけが静かに流れていた。


 陽の光が揺れて、埃がゆっくりと舞っていた。

 ページをめくる音が、かすかに響いていた。


 あのとき、

 何ひとつ変わらないはずの日々の中で――

 心だけが、そっと揺れていた。


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