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誰か、がいた

作者:
静かで、やさしい時間だった。
何気ない会話と、本をめくる音だけが響いていた日々。
それでも僕は、彼の背中を、いつも目で追っていた。

言葉は交わしていた。
でも、本当に伝えたかったことは、最後まで言えなかった。

触れられないものが、たしかにあった。
それでも、あの静けさだけは今でも胸に残っている。

声にならなかった感情が、
いちばん深く残ってしまった。

幻だったのか、それとも――。
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