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逃亡するのに女装していた男魔道士、女戦士と知り合って一緒に旅する事になる  作者: ヘラジカ
第五章:獣の厄災

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5-18:追放者

 異世界から来た。


 魔獣使いの女は確かにそう言った。


「下手な嘘はよせ。だったら、何故同じ言葉で話せている?」


「それはこっちが聞きたい。何故、お前たちは私と同じ言葉を使える?」


 僕の問いに魔獣使いの女は質問を質問で返す。


 こいつ、この場に及んでふざけているのか?


「この国には魔法の力を弱める結界も張られている。貴様が本当にその異世界から来たのだとしたら、まともに魔法が使えるはずがない」


「結界? あの程度のものならば無効化するのは容易い」


「貴様、さっきからふざけやがって!」


「クロエ、落ち着いて!」


 いけない、魔獣使いの女のその返答と態度に柄にも無くイラついてしまった。


 エリンになだめられた僕は冷静さを取り戻す。


 そして、僕が落ち着いたのを確かめてから魔獣使いの女は口を開いた。


「お前たち、魔獣が何処から来るのか知っているか?」


「ついさっき、何も無いところからいきなり生まれたのを見たばかりだよ。ねえ、クロエ」


「え? そ、そうなのかなあ?」


「お前たち、あれを見たのか。だが違うぞ。あれは魔獣が生まれたんじゃない。私がいた元の世界から追放された魔獣がこの世界に送り込まれてきただけだ」


 送り込まれてきた、か。


 僕が何となく抱いていた違和感はそれだ。


 あの光の中から魔獣が出てきた感じ。あれは何処か別の場所にいたものが出てきた感じだ。


 だから、エリンが言っていた生まれるという表現に違和感を抱いていたのか。


 すると、この女の言っている事は……。


「魔獣は私が元いた世界でも害ある獣だ。倒すのも大変だからこの世界に追放して捨てている」


 この話が本当ならば、身勝手ではあるがこの国、いやこの世界を侵略するために魔獣を送り込んでいるのではないだけ幸い、なのか?


「私は魔獣と魔法を研究した末、魔獣を操る術を発明してそれを体得した。なのに、なのにだ。そんな私は危険視され、魔獣と共にこの世界に追放されてしまったというわけだ」


 今までの話がこの魔獣使いの女による苦し紛れの口から出まかせでなければ同情できなくもない酷い話ではある。


 だが、獣を操る術が危険なのも確か。


 現にこの魔獣使いの女による被害、すなわち獣の厄災による被害により兵は負傷し、商人は積み荷を奪われている。


 どの道、危険分子として処罰する他は無い。


「残念だが、今までの話が全て本当だったところで貴様を助ける理由にはならない」


「そんな事は分かっている。でも、せめて殺される前にこの異世界に追放された無念と、帰る方法を見つけておきながらあと一歩のところで果たせなかった無念だけは誰かに聞いてほしかっただけだ」


 成る程なあ。しかし、あと一歩のところで帰還できなったというのは、どういう事だ?


「黒魔道士。お前が協力さえしてくれれば私は元の世界に帰れたのにな」


「どういう事だ?」


「私はこの世界に追放される前、追放される事を恐れて帰還方法を予め調べていた。だが、その方法が問題でな。実行には白魔道士と黒魔道士が最低でも一人ずつ必要で、私一人だけの力ではどうにもならない。だから、この世界に追放されたばかりの時は黒魔道士が見当たらなくて絶望した」


 国が黒魔法を禁止していたからな。黒魔道士が見つからないのは当然だが、この魔獣使いの女はそれを知らなかったというわけか。


「だから、お前たちが魔の厄災と呼ぶエクスエナの存在を知った時は狂喜乱舞し、それが殺されたと知った時は怒り狂った。そして、お前の存在を知って再び希望が見えてきたというのにな、結果はこのざまだ」


 それで僕の事を、黒魔道士の事を探していたのか、こいつ。


「ねえ、クロエ? 協力してあげたら?」


 エリンが突拍子も無くそう言い出す。


「いや、協力しろって言われてもさあ。それって、こいつを逃がす事になるし、良くないだろ?」


「でも、この人が元の世界に帰れたとしたら、獣の厄災による被害はもう起きないんだよね?」


「それは、まあ、そうだけどさあ」


 そうなると、これは気持ちの問題だ。


 こいつをここで殺すなり公の場で裁きを受けさせて処刑するのも、こいつを元の世界に返すのも結果は同じ。ただ、暴行や強奪に対する報いを受けさせるかどうかが違うだけ。


「協力してくれるのか? 私からも是非お願いする。なあに、お前たちにも損はさせない。私が元の世界に帰る目的は一つ。私をこの世界に追放した連中に対する復讐だ。そして、そいつらはこの世界に魔獣を送り込んでいる連中と同じ。だから、私を元の世界に返してくれたらこの世界に出現する魔獣の数は減るぞ」


 魔獣使いの女は必死に、そしてやや早口でそう言った。


 元の世界に帰りたい心と、追放した連中への復讐心とが彼女をそうさせたのであろうか?


「元の世界に返してあげようよ、クロエ。魔獣だってこの人が居る居ないに関係なく暴れていたわけだし」


 確かに、魔獣の出現自体には魔獣使いの女は何の関係もない。それどころか、この女が魔獣を統率していたおかげで、むしろ被害数自体は抑えられていたのかもしれないしな。


 魔獣の被害が増えたというが、それはあくまで兵士や商人が襲われる事により国に報告される数の話。


 統率される事の無い魔獣の数が増えていれば、人知れず魔獣に殺されて行方不明扱いになる人がもっと増えていたかもしれない。


 そう考えると、この魔獣使いの罪はもっと軽いのかもしれないな。


 元はと言えば、こいつがこの世界に追放されなければ獣の厄災自体がなかったわけだし。


「わかった、協力してやる」


「おお、恩に着る!」


「礼ならそこのエリンに言え。彼女が僕を説得しなければ、僕は貴様をここで殺していた」


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