4-13:最弱の同級生、実は
他の助けは間に合いそうに無いし、このままではローズマリーは魔獣にやられてしまうだろう。
──彼女を見殺しにしてまで僕が黒魔道士である事を隠す必要も無いか。
僕は氷の黒魔法で巨大ウサギの魔獣を攻撃した。
「何ダ イルジャナイ カ 黒魔道士」
魔獣は気になる事を言いながら消滅した。
そう言えば、喋る魔獣に会ったのは二回目か。
以前出会った商人から、喋る魔獣は獣の厄災関連かもという話を聞いた事を思い出す。
だとすれば、魔獣の最後の言葉。あれが、黒魔道士を求めているという意味だとすれば、何れ獣の厄災とも出くわすかもしないな。
だが、今はそれよりも。
「く、く、クロエ!? い、今のは!?」
魔獣が殺られて動けるようになったのか、ローズマリーは後ろに下がるようにゆっくりと動いてはいるが、今度こそ腰が抜けたのか立ち上がれないでいる。
「黒魔法。今さっき使って見せたのは、氷柱を出すやつだな」
「黒魔法って、冗談だろ? 黒魔道士でなきゃ使えない、よな?」
ローズマリーは怯える様にそう言った。
「最近になってまた、新たな黒魔道士が出現したという話を聞いた事はないか? その件で抹殺対象として手配されているのが僕だ」
僕のその言葉にローズマリーは怯えながら、しばし黙る。
そして、最初はか細い声で、それが段々と大きくなるようにこう言った。
「うそ……嘘……嘘だッ! 男でなければ黒魔道士に成れるわけないだろ!!」
妹のクラウディアはそうではなかったのだがな。
いや、あれは実際かなりの無理をしていたし、むしろ白魔道士としてはそれ以上の実力だったから、黒魔道士ではなく、あくまで白魔道士なのか?
僕も一応は白魔法が使えるが、白魔道士と偽る程度の実力しか無いし。
だから、やはり男でなければ黒魔道士と呼べる程の者には成れない、か。
「ああ、僕は男だ。今まで騙していて悪かったな。卒業の儀式を受けるには、性別を偽って魔法学校に入学して卒業する他無かった」
「嘘だ! クロエ、あんた治癒の白魔法が使えていたじゃないか」
「あれは男でも頑張って無理をすれば使える。だから、女でも頑張れば黒魔法を使えるようになるぞ」
魔法の才能がある程度以上無いと無理かもしれないがな。
「そんなわけ──。だったら、男だって証拠を見せて。そのローブの下をアタイに見せれば一目瞭然だろ?」
そう言われた僕は、ゆっくりと下からローブをたくし上げ、下半身を露わにする。
「こんな見苦しいものでいいのなら。切り落としてあるから、お望みのものは見られないかもしれないがな」
ローズマリーは怯えた表情のまま、僕の下半身を見つめている。
「どうして、こんな事を?」
「魔の厄災エクスエナを殺すため、黒魔道士に成るしかなかった。だけど、殺してしまった今となっては理由も目的も無いな」
「魔の厄災はエリンが討伐したんじゃあ?」
「表向きはそういう事になっているし、現にその戦いにはエリンも参加した。だが、結局殺したのは僕だ」
僕のその言葉にローズマリーは青ざめる。
そして、こう聞いてきた。
「まさか、アルベルト様の事を殺しに来たのって?」
何だ、僕が黒魔法で武の厄災アルベルトを討伐しに来たのではないかと不安になってだけか。
「心配しなくていい。武の厄災を討伐したいのはあくまでエリン個人の意志。僕は手を出すつもりはない」
「今まで騙していたのに、そんなの信じられない」
「単純に殺す理由が無い。皆に慕われているのだろう、アルベルト様は? 魔の厄災と違って、今まで悪く言う人を見た事がない。そんな人を殺したって仕方ないだけだ」
本当の事だ。元より武の厄災討伐に興味は無い、
それに、
「僕が殺さなければいけなかったのは魔の厄災エクスエナだけだ。エリンには借りがあるから今は協力しているに過ぎない」
「そっか。あんなの見せられたらアタイにはどうする事もできないし、信じるしかないや」
僕の下半身を見つめたまま、ローズマリーはそう答える。
「そんなに見られると恥ずかしいな」
「黒魔法の方だよ!」
ローズマリーは目を逸らし、僕はたくし上げたローブを元に戻した。
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