3-1:厄災近くの村
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魔の厄災エクスエナが国から三厄災の一人と認定された決定的な理由。
それは、国内の領地の一部を奪い、支配し、自分の国としてしまった事が大きい。
他にも殺人を主とした罪が山ほどあるし、言ってしまえば領地を奪う時にも殺している。
それなのに、国家から見た一番の罪が領地の奪取というのは、何とも皮肉だ。
僕とエリンは今、エクスエナが支配する領地の付近にある村にいる。
彼女の領地に攻め入るため。
いよいよ、エクスエナを殺す時が来たというわけだ。
「何か、思ったより賑わっている村だね」
「人の出入りがあるせいだろうな。あの商人たちはエクスエナの領地を行き来しているみたいだ」
僕は、エクスエナの領地の方角から村にやって来る荷馬車を指差し、エリンにそう言った。
魔の厄災と国から危険視されていようが、交易が無ければ生きていけない。いや、交易が必要なのは向こうに住む住民たちの方か。
兵糧攻めにしたところで、エクスエナ本人だけならば略奪で乗り切るだろう。
既に何人も殺している堕ちた存在だ。
そういう行為には躊躇無いし、兵糧攻めにするのは愚策。
だから、平和のためにもエクスエナの領地で売買を行う商人たちに罪は無い。
むしろ、取り残された住民が無事であると希望が持てる。
「エリン、とりあえずこの村で食料を補充して、可能ならばエクスエナの情報を集めよう」
商人たちの中間地点になっているだけあって、食料の入手は期待できそうだ。
それに、上手くいけば商人たちから向こう側の事を聞けるかもしれない。
そう考えたからだ。
「では、行きましょうかエリンさん」
僕は、男だと怪しまれないように女装時の喋り口調に変えてこう言った。
「クロエ、相変わらず切り替え早ッ、って待ってよ!」
村に入ると、果たして僕の考えた通り保存食を売っている店があった。
店に入って保存食を買い足したところ、店員のおばさんに珍しいものを見た感じで話しかけられる。
「お客さん、商人ではなさそうだけど何しにこんな村へ?」、
「旅の途中なので食料の買い足しに」
「旅? って、この先は魔の厄災エクスエナが支配する地域だよ! 特に女の子は危ないから行っちゃダメ!」
警告されるのも当然か。
だが、
「大丈夫。私たち、そのエクスエナを倒しに行くんだよ!」
僕がそう答えようとしたところ、エリンが先に意気揚々と答える。
「馬鹿な真似は止めなさい。女が行っても養分にされるのがオチだよ」
養分?
反対されるのは分かりきった事だが、気になる事を言っていた。
これは、もう少し詳しい話を聞いた方がいいかもしれない。
「あの? 養分というのは?」
「魔法の力を吸い取られてしまうんだよ。討伐に行った連中の白魔道士の力が吸い取られてね、回復はできなくなるわ、エクスエナは黒魔法をガンガン使ってくるわで大変だったって話だよ」
なるほど。
この話で一つ分かった事がある。
エクスエナがどうやって黒魔法を使っているかという疑問だ。
女で黒魔法を使うには、かなりの魔法力を消耗するはず。
なのに黒魔法を使いこなしている事に今まで納得がいかなかった訳だが、今の説明で理由がよく分かった。
足りない分の魔法力は相手の白魔道士から補給していたと。
相手の回復力を削ぎつつ攻撃力を得るという、単純だが実に合理的な方法だ。
しかし、それならば。
「でしたら、魔法力を持たない人たちだけで攻めれば倒せるのでは?」
「そう考えて戦士だけで行った奴らもいたけど、駄目だったんだよ」
僕の考える程度の事は試して当然か。
だが、何故失敗したのかが問題だ。
単純に戦士たちが弱過ぎたというわけでは無いと信じたい。
「どうして駄目だったんですか?」
「それは、そうだねえ。酒場に丁度エクスエナの領地から逃げてきたアンナって娘が働いているから、その娘から聞いたらいいよ。何で女の子が行っちゃ駄目なのかも分かるから」
それは丁度いい。
今のエクスエナ領内の様子も詳しく分かりそうだ。
「酒場、ですか。ありがとうございます、行ってみます」
「あそこは宿にもなっているから、ついでに泊まって行ったら?」
「ううん、大丈夫。私たち、の……」
エリンが喋ろうとした口に、僕はそっと手を当てて静止させた。
「ちょ、ちょ、何!?」
「しーっ、野宿するなんて言ったら、また心配させるでしょうが」
僕は小声でエリンにそう言って二人で店を後にし、酒場へと向かう事にした。




