2-5:修行場
このダンジョンに入るのは止めておけ。
と、森の中から現れた老人の男は僕たちに言ってきた。
「えっ? どうしてなの、おじいちゃん?」
老人に対し、エリンが理由を尋ねた。
すると、老人はこう答える。
「このダンジョンの敵は強いが、中には金になるようなものはない。だから、金銭目当てなら止めておけと言っている」
「そうなんだ。でも、どうしてそんな事教えてくれるの、おじいちゃん?」
「町で遊ぶための金目当てでこのダンジョンに入る奴が後を絶たないからだ。お前らもそうなんだろう?」
それで、この警告か。
という事は、この老人はこのダンジョンについて詳しそうだ。
だとすれば、もしかしてこの方は……。
「にしても、『おじいちゃん』呼ばわりか。まったく、戦士ビルダルの名も落ちたものだな」
やはり、か。
そうと分かれば、無視するわけにはいかないな。
僕は戦士ビルダルと名乗る老人に話しかける事にした。
「このダンジョンには戦士用の武具しか眠っていない。しかし、真の存在価値は修行場。そうですよね?」
「その通りだが、お前それを何処で?」
「ジョルダン・エナ・エリクシールの名を出せば、お解かりいただけるかと」
「なんだ、ジョルダンの奴から聞いたのか。あいつは元気にしていたか?」
「最後に会ったのはもう何年も前ですが、その時は酷く落ち込んでいました」
「うーむ、そうか。今は元気になっているといいが、俺たちももう歳だからな」
と話していたところ、エリンが話に割り込んできた。
「あの? ジョルダンさんって誰?」
そして、エリンの問いに対して老戦士ビルダルが僕にこう質問してきた。
「何を隠そう、俺とジョルダンでこのダンジョンを作ったのだが、嬢ちゃんはジョルダンとはどういう関係なんだ?」
まあ、そう来るよな。
だから、僕は本当の事を答えた。
「ジョルダン様は親戚のお爺さんで、幼い頃はよく遊んでもらっていました」
「親戚!? って事は、嬢ちゃんひょっとして『五指』なのか?」
『五指』か。
古い呼び名だな。
エリンが「何それ?」って顔をしている。
今でもその名前を知っているのは、古い人間を除けば恐らくは一族の人間しかいないだろうな。
「そういう事になるのでしょうか?」
「なるほどなあ。って事は、嬢ちゃんがクラウディアなのか?」
違う。
だって僕は、
「僕の名前はクラウディオ・ロナ・エリクシール。クラウディア・ロナ・エリクシールは僕の妹です」
「クラウディオ!? 嬢ちゃ……いや、お前もしかして男なのか!?」
ここで、僕が男だと気づいたか。
まあ、元よりジョルダン様の話をした時点で隠すつもりは無かった。
というか、話す他無いと思ったからだ。
そうしなければ作った本人にダンジョンを使う真っ当な理由を説明できないからだ。
何故ならば、
「そうです。訳有って女装しています」
「そ、そうか。まさか、お前……いや、それより妹の方はどうしている?」
顔つきが厳しいものに変わり、身構えている老戦士ビルダルに対して、僕は理由と共に答えた。
「僕の妹、クラウディア・ロナ・エリクシールは『エクスエナ』と名乗り、魔の厄災と呼ばれるまでの罪人と化しています」




