2-4:交易都市ポン
「通れてよかったね、クロエ」
都市内に入るなり、エリンが僕に話しかけていた。
「ええ」
「さっきの兵士が言っていた『エクスエナ』って、クロエが倒そうとしている相手だよね?」
その通り。
魔の厄災『エクスエナ』を殺すのが僕の目的だ。
だが、エリンは何でそんな話題を?
「なのに、私の修行に付き合ったりしていてもいいの?」
何だ、そんな事か。
「エリンの師匠たちも言っていたでしょう? まずは修行しろって。私も一緒に修行して今より強くならないといけないからです」
「そっか。私の修行がクロエの旅の邪魔になっているわけじゃないんだ。安心した」
「それより、まずは食料を買い足しましょう」
とりあえず買物だ。
何時また黒魔道士だとバレて逃げなきゃいけなくなるか分からないしな。
保存食を中心に買い足しておかなくては。
幸いにして、ここは交易で賑わっている都市。
町に行き来している商人たちが利用するから、旅向けの食料は揃っている。
そんな訳で、僕とエリンは食料の補給を行った。
ここまでは順調だ。
次は、どうしよう?
他にも色々やりたい事はあるが、まずは宿を確保するか。
幸いにして、槍使いの老戦士たちから、大会の優勝賞金としてお金も貰っているし。
故に、とりあえずの宿代は何とかなる。
だが、そこが問題だった。
「嫌だ、今日も野宿する! 宿代が勿体ない!!」
エリンが、宿に泊まりたくないと言い出した。
「エリンさん、ちゃんと宿に泊まれるように貴女の師匠さんたちからお金を預かったのです。そんな事言わないでください」
「いーや! あんな形で優勝なんて認めたくない!」
変なところでプライドが高いなあ。
面倒くさい奴だ。
「そんな事言わないで、宿に泊まって疲れを癒しましょうよ」
「そんなに宿に泊まりたいならクロエが一人で泊まって! 私は野宿するから!」
ここでエリンと別れるのも手か。
だが、お世話になった老戦士たちからエリンを預かった以上、僕のプライドがそれを許さない。
お金も貰っているし、持ち逃げみたいになるのも嫌だしな。
仕方ない、今日も野宿にするか。
今日はベッドで寝れると期待していたのになあ。
「分かりました。明日からにしようと思っていましたが、行きましょうか」
「えっ? 行くって何処に??」
「修行する場所ですよ。修行の旅でしたよね?」
「あっ、そっか」
「どうせ野宿するなら修行場の近くの方がいいでしょう? これから毎日通うのですから」
修行場というのは都市から出て少し歩いたところにある森の中だ。
そこならば、テントを立てて野宿もできるし、修行場に通い易いからいいだろう。
そんな訳で、僕とエリンは入ったばかりの交易都市ポンから一旦出た。
「町から出ちゃったけどいいの?」
「大丈夫だ。目的の場所は町の外にある。心配しなくても町のすぐ近くだから、戻りたい時は簡単に戻れる」
町には買物等の用事がある時にまた戻るつもりだ。
本当は都市内の宿に泊まりながら毎日通うつもりだったが、仕方ない。
「クロエって切り替え早いね。町から出たらもう口調変わっちゃうんだ」
「ずっと気を張っていても疲れるしな」
仕方ないとは思ったが、冷静に考えてみれば、手配されている身としては都市の外にいた方が安全だし、多少は気を抜けるか。
四六時中気を張っていると何処かでボロが出そうになる。
女装して魔法学校に通っていた頃は、それで一度失敗しそうになった事もあるしな。
それ以来、何処かで気を抜く時間を作るようにしていた。
だから、エリンの選択の方が正しいかもしれないし、前向きに考えよう。
記憶を頼りに森の中を少し歩いたところ、目的地は簡単に見つかった。
「何これ? 遺跡にしては新しいけど」
エリンが修行場の建物を見るなりそう言った。
どう説明したら良いのかと悩んだが、話すと長くなるので手短に答えてみる。
「簡単に言えばダンジョンだ。まあ、入ってみれば分かる。というか、僕も話に聞いていただけで入るのは初めてだし」
「ふーん」
「とりあえず、実際にダンジョンに入る前に、まずはキャンプ地を準備しよう」
なるべくなら、日が暮れる前にテントを立てた方がいいしな。
とまあ、そんな事を話ながら修行場となるダンジョンを外から眺めていると、森から一人の年老いた男が現れる。
そして、その年老いた男は僕とエリンに対し、こう話しかけてきた。
「もしかして、このダンジョンを漁るつもりか? だったら止めておけ」




