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1-9:大会会場に人が集まる

 しばらくすると、戦士でも白魔道士でもない人間が増えてきたが、恐らく観客たちだろう。


 エリンはまだ戻って来ない。暇だなあ。


 そう思っていたところに森の老戦士たちが現れた。


「ここにいたか。エリンは一緒じゃないのか?」


「はい。大会の受付に行ったみたいで」


「そうか。まったく、あの娘は大事な武器を忘れよってからに」


 そう言った老戦士が持っている杖の様な棒は、よく見ると鞘に入った槍だった。


 そして、別の老戦士もまた棒状の様なものを持っているが、そっちは槍ではなく杖だ。


「ついでに、杖が見つかったから持ってきたぞ。お前さんも丸腰というわけにはいかんだろうしな」


 武器は短剣を隠し持ってはいるが、杖があるならあった方がいい。


 魔法を使う時に安定するからである。


 だが、今回は魔法を使う事は基本ないはず。


 となると、攻撃を受け流す用途が主か。


 まあ、とりあえず杖があるだけでありがたい。


「ありがとうございます」


「気に入ったのなら持っていっていいぞ。住処にあった武具の中に埋もれていたものだから気にするな。どうせワシらは使わんしな」


 泊ったあの砦跡にあったものか。


 多分、昔あった内戦で使われたものの残りだろう。


 老戦士たちの言う通り、本当に要らないもののようだ。


 だったら、遠慮なく貰っておくか。


「けっ、槍使いの爺さんたちかよ。こんなところで何してやがる?」


 突然、後方から声がした。


 振り返ると中年の男性がいる。


 老戦士たちの事を知っているみたいだし、この村の人間だろうか?


 言葉遣いが乱暴だし、それが見た目にも表れている。


 あまり、感じが良くない。


「なんじゃい、ワシらがここにいて何が悪い?」


「これから始まるのは剣の試合だ。なのに槍なんか持ち込んで乱入する気か?」


「誰が剣の試合だと決めた!? 試合に武器の制限なんかないわッ!」


 いきなり雲行きが怪しくなってきた。


 とりあえず、この喧嘩を吹っ掛けてきた中年男が気に食わないなあ。


 黒魔法で灰にしてやるのは簡単だが、今使って騒ぎにしたくはない。


 ぶっちゃけ正体がバレたところで村を焼き払うくらいの事はできる。


 しかし、それは僕の望む事ではない。


 無差別に人を殺す趣味もない。


 だが、このままでは喧嘩が始まってしまいそうだし、僕が仲裁に入っても止められそうにない。


 どうしようか?


 と、その時だった。


「師匠たちの事を悪く言わないで!」


 声の主はエリンだった。


「ちっ、エリンか」


 男は気まずそうに、しかし荒々しさは治まらない感じでそう言った。


「何で師匠たちの事をそんなに悪く言うんだ!!」


「槍なんて今時流行らない。本当の事を言っただけだ」


 半ば半ギレの様子のエリンに、男はそう答える。


「だからって、そんな言い方しなくても!」


「爺さんたちにそそのかされて、槍を習い始める奴が出てきたら、苦言の一つも言いたくなる」


 男のその言葉に、エリンは黙り込んでしまった。


 自分のせいとなれば、これ以上は言い返せない様子。


 そこに、男は更に言い放った。


「だいたい、槍なんて持ち歩き難いだろ。現にエリン、お前だって今持ち歩いていないじゃないか」


「うッ!」


「そういう事だ。だから、お前も槍なんて止めとけ」


 そう言って、中年の男は去って行った。


 槍を忘れたタイミングというのが悪かったな。


「ほれ、エリン。忘れ物の槍ならワシらが持ってきてやったぞ。安心せい」


 落ち込むエリンに老戦士たちが声をかける。


「し、師匠ぅ。武器を忘れるなんて、私戦士失格かな?」


「実戦の試合なんて今日が初めてだろう? 誰もが最初から上手くできるわけじゃない。少しずつ慣れていけばいい」


 半泣きのエリンに老戦士たちは優しく答えた。


「そっか、そうだよね。私、頑張る!」


 老戦士たちの言葉に、すぐに元気を取り戻したように見えるエリン。


 まったく、感情がコロコロ変わって忙しい奴だなあ。


「それじゃ、クロエも頑張ろう!」


「う、うん……」


 急に僕に振られたので少し戸惑ってしまった。


 まあ、とりあえずは最初の試合を頑張るか。

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