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1話

 帝国歴XXX年18歳になった彼女は義弟であるアルトに

 嵌められて命を落とした。


 彼女の名はエルシリア。

 薔薇色の髪にルビーの様な瞳のアルファード帝国の平民だ。

 エルシリアは育ての親が言うに産みの親に捨てられたそうだ。

 物心つく頃には育ての親である義母クレアと義父キースに蔑まれ

 義弟アルトにいじめられ

 3人の義家族に毎日罵詈雑言と暴力を受けていた。


「このグズ!ノロマ!サッサと掃除しろ!!」

「お前みたいなグズ女だから産みの親に捨てられるんだよ」

「あーぁ、こんなバカが姉なんて恥ずかしくて外歩けねぇわww」

『・・・・』


 酷い暴言を言われてもエルシリアは何も言わず耐えていた。

 こんな人達でも育てて貰った恩がある

 食事もろくに与えて貰えず空腹にくれながらも

 雑用をこなし、日々過ごしていた。


 誕生日だって祝って貰った事もない。

 自分の誕生日がいつか分からないまま1年また1年と過ぎていき

 エルシリアはおおよそ18歳になった。


 その日は朝から嫌な予感がしていた。

 数日前から義家族達が慌ただしく焦りで表情が歪んでいる

 そんな中でもエルシリアはいつもの仕事を淡々とこなす。

 ....エルシリアは気づかなかった

 義家族達がエルシリアを見て気持ち悪いほど笑っていることに。


 エルシリアがいつも通りの雑用をこなし仕事をしていると

 武装した騎士達がエルシリアを包囲した。


『え...え?』


 困惑した様子のエルシリアに騎士団長らしき人が

 巻き物を取り出し、声を張る。


「罪人エルシリアは隣人の家に忍び込み貴金物を盗みだし帰宅した隣人の婦人を殴り殺した。また税金を横領し自宅に隠し、似たような手口で数々の民家に忍び込んだ!住居侵入罪・窃盗罪・殺人罪並びに横領の罪で逮捕する!!」

『私じゃないです!!』

「お前の家族からの証言もあるし証拠もあるんだ!往生際が悪いぞ!!この罪人を早く連れていけ!」


 当然エルシリアは何もしていない

 彼女は嵌められたんだ。

 だが物的証拠が出ている以上エルシリアの罪はなくならない。


 エルシリアの悲痛な叫びも虚しく彼女は連れていかれた。


『なんで...?私は何もしてないのに...』


 地下牢に監禁されたエルシリアは悲しみに暮れる。

 自分は無実だと訴えても誰も信じてはくれない

 何故自宅から証拠が出てきたのか、横領とはどういう事なのか

 いくら考えても答えは出てこない。


 数日後エルシリアの死刑が決定した。


 *****


 エルシリアの死刑実行当日の朝

 彼女は疲弊している。

 冤罪が晴れぬままエルシリアの命のタイムリミットが

 着々と進んでゆく。


「さぁ実行場所に行くぞ」

『・・・・』


 エルシリアは全てを諦めた。


 地下牢から出て向かう死刑実行場所はエルシリアが住む街の大きな広場だった。そこには大勢の人が溢れている。エルシリアが処刑台に上がると批判が沸いた。

 沢山の心無い言葉がエルシリアを貫く

 エルシリアは唇を噛みしめ俯いた。


 いよいよ死刑が実行されるその時

 義母クレアが声を上げる。


「待ってください!最後に娘と話をさせてください」


 死刑実行人からの許可を取り義家族3人が処刑台に上がる。

 傍から見れば娘の悪事に胸を痛めて悲しんでいるようだ。


「お前がいてよかったよ罪被ってくれてありがとう」

『...揃いも揃って私を嵌めたんですね』

「いつまでたっても役立たずのグズ女の使い道なんてそれくらいだろ?」


 ニタニタと気持ち悪い笑みを浮かべ、エルシリアにだけ聞こえる声で話す。

 隣家に忍び込んだのはクレアとアルトで殺人はアルト。税金の横領は言わずもがなキースである。この3人はエルシリアへの育児放棄や暴力だけじゃ飽き足らず、あろうことか自分達の罪までエルシリアに擦り付けたのだ。


『最低....』

「どうとでもいえば?」

「最後だから教えてあげる。」


 クレアは笑みを深めて言葉を続けた。


「あんたの産みの親はあんたを捨てたわけじゃない。馬車の事故で死にそうな母親からあんたを奪ったんだよ」

『っ!?』

「キッチンの床下に隠したこの紋章が証拠さ」

『...見殺しにするなんてあんた達は良心がないの?!』

「あるわけないでしょう?」

「いままでご苦労様」

「もう大丈夫です...可哀そうだから楽に逝かせてやってください」


 ウソの涙をそれぞれ浮かべて処刑台から降りていく。

 エルシリアは憎しみでいっぱいになった。

 処刑執行人である騎士団団長が持つ剣がきらりと光る。


『ぇ.....』


 突如エルシリアの脳内に流れ込んだ()()()()()()

 彼女はいったい誰なのか。こことは違う科学が発達した世界でエルシリアが知っているはず無いのにエルシリアは日本という世界を()()()()()


 彼女の名前は桂木(かつらぎ)悠紀(ゆき) エルシリアの前世だ。


「思い出すならもっと早く教えてよ…」


 乾いた笑いが零れる。

 折角思い出しても懐かしく思う間もないまま

 ザンッという残酷な音と共に意識が遠のいた_。


 *****


『ハッ...!!』


 エルシリアは飛び起きた。

 ドッドッドッと鼓動がうるさい

 深呼吸をして息を整える。


『なにこの手...小さくなってる?まってかがみ!』


 パタパタと鏡の前までくるとエルシリアは驚いた。


『か、からだがちぢんでるでる!?』


 エルシリアは10年前のおおよそ8歳に逆行していた。

 罪を着せられ処刑された痛みも感覚も本物で少し震えている。


 このままじゃダメだここから逃げなきゃ、とエルシリアは考える。


『今は9月の半ば...たしかきのうから3かかんあの3人はりょこうにいってるはず...』


 エルシリアは逃げるなら今しかないとそう思った。

 急いでキッチンに行き、床下に隠された家紋が描かれている紋章を手に取りパンを懐に忍ばせた。エルシリアの少ない荷物を纏め自宅を後にした。


 エルシリアの住んでいる所は街外れで首都からだいぶ離れおり馬車で遅くて3日。エルシリアは首都に向かう為積み荷の馬車に忍び込んだり優しいお爺さんに乗せて貰ったりと乗り継いで首都に到着した。


『おじいさん、のせてくれてありがと!』

「どういたしまして」


 優しいお爺さんにお礼を言って別れると当ても無いまま歩き出す。

 エルシリアは馬車に揺られた3日間で気づいた

 自身の魔法のステータスが見れることを。


 人目につかない場所に移動すると、エルシリアはステータスオープンと唱えた。


 ------------------------------------------------------


 エルシリア・???(8) Lv.55 転生&逆行者

(桂木悠紀)


 HP:700/700

 MP:3679/3679


 戦闘スキル

 火属性魔法:Lv.10

 水属性魔法:Lv.9

 聖属性魔法:Lv.999

 補助魔法 :Lv.10


 ------------------------------------------------------



『..8さいで??』


 エルシリアは火と水の魔法が使えて8歳にしてはLv.が高い。

 特に聖属性魔法はカンストしている

 エルシリアは自らの手で傷をつけて試そうとした所、路地裏から呻き声が聞こえてきた。

 不思議に思いその声がする方へ向かうとローブを被った10歳くらいの男の子がいた。おそらく高位貴族だろうと直感した。


『だ、だいじょうぶですか...?』

「・・・」

『わっ...』


 男の子はエルシリアの方に倒れてきて咄嗟に支えるも体格差故に支えきれずそのまま倒れ込む。男の子は気を失っているようだ。

 体制を変え所謂膝枕の状態にした。


『ひどい傷...』


 エルシリアは〝ヒール・リザレクト〟と唱えた。


『おぉ、成功した』


 傷がみるみると癒えていった。


『暇だな...』


 それから数十分男の子が目を覚ました。


『あ、おきた。どこか痛むとこある?』

「...君は誰だ?」

『わたしはエルシリアっていうの。あなたは?』

「俺はルーベル。君は回復魔法が使えるのか?」

『うん、使ったのは今日がはじめてでけどね』


 屈託のない笑顔で話す

 エルシリアにとって同じ年の子と話すのは久々だった。

 ルーベルはエルシリアの笑顔に胸が鳴いた。


「助けてくれてありがとう何かお礼がしたい欲しい物はあるか?」

『んー、欲しい物より連れてって欲しいとこがあるの』

「どこだ?」

『この紋章の家紋のとこ』


 エルシリアが見せたのは床下に隠されていた紋章だ。


「これは...どうしてこれを?」

『実は...』


 エルシリアはルーベルに説明した。

 逆行のことは言わずに義両親がしでかした誘拐のことを。


『それで掃除してる時にこれを見つけたの』

「なんなんだその義両親は!」


 ルーベルは怒りを露わにした

 見ず知らずの自分のために怒ってくれるのかとエルシリアは何とも言えない気持ちになる。


「...とりあえず移動しようか」


 ルーベルは笛を吹く。

 すると、どこからともなく護衛が現れた。


『っ!?っ!?』

「はは、大丈夫だよこの人らは俺の護衛たちだから」

『そ、そうなんだ...』

「誰か1人一足先にローディス公爵家に伝達してくれ。公爵の探しモノを連れて行くと」

「ハッ!」


 護衛の1人が敬礼をしすぐ行動に移した。


「さぁ、俺達は馬車で向かうとするか。」


 ルーベルはエルシリアを馬車が待機されている所までエスコートし、紋章の家紋であるローディス公爵家へ向かった。

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