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3話 仄華から見た天使と密会初日

《仄華》


 入学式の日、桜舞吹雪く並木道で私は天使を見た。


 私が市ノ瀬さんを知ったのは入学式当日。

あの時は引越しのゴタゴタで忙しかった。

 (うぅ……、せっかくの入学式なのにまだ荷物が片付いてない。辛い……。)

と、トホホなテンションで桜が咲く並木道を歩いていた。

 周りは家族と一緒に来ている人、友達と楽しく歩いている人、これから同級生になるであろう人達を横目に、単身でこっちに来た私はちょっと憂鬱な気分だった。

だけど……。

 (うっ……、風が強い……。)

桜吹雪が視界を塞いだ刹那、私は天使を見た。


《+》


 それから入学式、早々に指定された体育館の席に座った私は周囲を見渡した。

 (さっき見た天使な子はいるのだろうか……。)

脳裏に焼き付いたその天使のような少女に一目惚れした私はキョロキョロと視線をばらまく様は他の人からはちょっと引かれていただろう。

 「あっ……。」

そっと……視界を横切る一人の少女。

たなびく美しい茶色く長い髪に綺麗な黄色い瞳。

体育館の窓から入る光が少女の背中に翼を付ける。

 (あぁ……、あの子が……。)

そう確信できた……。


《+》


 あれから物陰に隠れて、市ノ瀬さんを観察したり……。

タイミングよく手伝ったり……。

と、回想してみたものの……。

 (あ……、これストーカーだわ……。)

今、隣でお弁当を食べてる市ノ瀬さんを横目に私は申し訳なさそうにコンビニで買ったパンを食べる……。



《仄華》→《琴音》



 ノリと勢いで告白した日から翌日。

私は七瀬さんと一緒に学校の屋上で昼食を食べている。

 「…………。」

 「…………。」

ただ問題があるとすれば……。

 (思ってたよりも会話する内容が無い……。)

そう、お互いにゼロスタートな上に普段から物静かな七瀬さんはただ淡々と包装を持ち手にしてパンを食べている。

 (なにかないの……、なにか……。)

私はない思考を無理やり回転させて会話を考えた。

 「今日は良い天気ですね……。」

 「……、そうね……。」

 (んん……、失敗したーーーー……。)

流石に天気デッキは手札事故が必然であった……。

無事、誘発阻止された私は再度思考を廻らす……。

 (ない……、思ってたよりもない……。)

そう……、悲しいほどに……、ないのである……。

 (うぅ……、どうしよう……。)

と、露骨に頭を抱えていたのだろうか。

そんな私に七瀬さんから―。

 「そのお弁当って手作り?。」

 「いえ、お恥ずかしながらいつもおかずは冷凍や惣菜の詰め合わせなので……。」

 「へぇ……。」

 「幻滅しました?。」

 「いや……、毎日お弁当作っててすごいなーって……。」

 「でも冷凍ですし、手抜きと言われたら手抜きですし……。」

 「それでもすごいよ。毎日なに入れるか考えるから。」

 「そんな大袈裟な。」

普段はなんとも思わないし、お世辞とスルーしてた言葉が、七瀬さんから言われると何故か嬉しくてたまらなかった。

 (七瀬さんに褒められたー……。)

私はウキウキで今日の昼食を完食した。


《〇》


 それから学校が終わって家に帰った私は早速お母さんに―。

 「お母さん!。料理教えて!。」

 「どうした急に!?。」

これから1ヶ月に渡る料理修行が幕を開けたのは別の話……。

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