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男装ガールと同棲します!!~男だと思って楽しく絡んでいた陰キャの彼女が、気が付けばめっちゃ輝いていた件~  作者: サイトウ純蒼
第三章「女の子は可愛くなる権利があるんです!」
40/70

40.乱闘!?

「あれ? マコー、帰ったのか??」


 化粧をした真琴。

 皆の視線を浴びながら帰ってきたマンションでは、既に龍之介が帰宅してその帰りを待っていた。



(ど、どうしよう!? 今の私は女の真琴……)


 この姿を見られたら自分が『おさげの天使様』だということがバレてしまう。そうなれば一緒に住むこともできなくなるし、せっかく築いてきた龍之介との関係も全て終わってしまう。

 真琴が部屋にいる龍之介に大きな声で言う。



「りゅ、龍之介さん!! ベランダに人影が見えたんです!! ちょっと見て来てくれませんか!!」


「え、マジか!? ちょっと待ってろ!!」


 真琴はドアの隙間から廊下へ出てベランダへ走る龍之介の足を聞いてから、音を立てずに中に入る。そして全身から汗を噴き出しながらゆっくりと自分の部屋へと入って行く。

 しばらくして龍之介が部屋の近くへやって来て言う。



「ベランダ、何もなかったぞ。って言うかお前、いつの間に部屋に入ったんだ?」


「あ、ああ、そうだった? 洗濯物と見間違えたのかな??」


 龍之介も少し様子がおかしい真琴を心配する。



「マコ、お腹減ったよー、早く飯にしようぜ」



(ゆ、夕飯……)


 真琴は悩んだ。

 お腹を空かした龍之介の為にすぐに夕飯は作ってあげたいと思うが、今この姿で出る訳にはいかない。せっかく桃香がメイクしてくれたので、もうちょっと部屋で鏡を見たりしていたい。真琴が言う。



「さ、先にお風呂入ってて。少ししたら作るから」


「お風呂? ん……、まあ、いいか。じゃあ先に入るぞ」


「え、ええ」


 真琴はドアに耳を当て、龍之介が歩いて行くのを確認する。



(よし、今だ!!!)


 真琴は急ぎ部屋を出てキッチンへと走る。

 そして残り物の食材で簡単な野菜炒めなどを作り、ご飯を炊き部屋に戻る。そして部屋にある鏡で自分の姿を見てだらしない表情を浮かべる。



「うへへへ~、可愛いよお~、私~」


 何度見ても自分だと思えない表情。

 鏡の中の美少女に見惚れ、何枚もスマホで自撮りする。




「マコ~、風呂出たぞ~、ご飯まだ~??」


 その時部屋の外から風呂を終えた龍之介の声が響く。彼は既に真琴無しではまともな生活ができない程になってしまっている。真琴が答える。



「あ、作って置いたから先に食べてて。私、お風呂に入ってから行くから!!」


「あ、そうなんだ。分かった、先食べてるよ」


 龍之介は何も疑いもせずにそのままキッチンへと向かう。

 真琴はその後もしばらく自分の顔を鏡で見つめながら時間を過ごし、龍之介に隠れてお風呂に入っていつもの『マコ』に戻って遅い夕飯を食べた。






 翌朝、龍之介が起きてくると真琴はキッチンで鼻歌を歌いながら朝食の準備をしていた。明らかに機嫌がいい。龍之介が声をかける。


「マコ、おはよー。なんか機嫌良さそうだな」


 真琴が振り返って答える。


「えー、そんなことないですよ~、いつもと同じです~、るんるん~」


 そういいながら鼻歌を歌う真琴。絶対機嫌いいじゃねえかと思いながら龍之介が椅子に座る。真琴が朝食をテーブルに並べなら龍之介に尋ねた。



「ねえ、龍之介さん」


「ん? なに」


「龍之介さんは綺麗な女の人って好きですよね~?」


 一瞬何を聞いているのか分からなかった龍之介。でもすぐに答える。



「そりゃ、当然。マコも好きだろ、綺麗な女の人?」


 真琴が笑みを浮かべて言う。


「そりゃもちろん。むふふふっ……」


 何だか少々気味が悪いと感じた龍之介は、早めに食事を終えて大学へと向かった。






「ねえ、亮子~、亮子って化粧とか興味ある??」


 高校に登校した真琴が、教室に入って来た亮子に声をかける。余程化粧が嬉しかったのか、その顔は笑みで溢れている。亮子が答える。



「うーん、興味はあるけどちゃんとしたことないかな~」


 真琴と同じ地味な人生を送って来た亮子。化粧などしたことはなかった。真琴が小さな声で言う。



「私ね、少し化粧教えて貰ったんだ。放課後、ちょっとしてみない?」


 そう言って鞄の中に入った買ったばかりの化粧道具を亮子に見せる。


「いいの? やるやる!! 教えてよ!!」


「いいよ! ああ、楽しみ!!」


 真琴と亮子はハイタッチして胸ときめかせる。

 そんなふたりをカエデは教室の後ろで腕を組みながらじっと見つめていた。






「うわー、可愛い!!」


 放課後、涼子とふたりで校舎外れの人気ひとけのない女子トイレに向かった真琴。涼子は真琴がカバンの中から取り出した化粧品を見て歓声を上げる。

 校則で禁止されている化粧。そんな背徳感がふたりをより興奮させる。真琴が言う。



「でしょ? 可愛いでしょ? 昨日買ったばかりんなんだよ」


「いいなあー、ねえ、どうやって使うの?」


 真琴が得意気に化粧品の説明を始める。



「化粧下地をやってね、ファンデを塗って……」


 桃香から教えて貰ったばかりのメイクを楽しそうに話す真琴。涼子も興味があった化粧に好奇心いっぱいで聞く。

 そして一時間弱、コスメと格闘しながらふたりの顔に見事化粧が施された。



「うわぁ……、綺麗……」


 涼子が鏡に映った自分の顔を見て声を上げる。

 クラスでも目立たないふたり。だが今鏡に映った女の子は、そんな地味なキャラとは一線を画す自信に満ちた女の子であった。真琴が言う。



「可愛いよ!! 涼子」


「真琴だって、すっごく綺麗!!」


 ふたりはいつもとは違う自分に興奮しながら褒め合う。涼子が言う。



「ねえ、こんなんで男子の前歩いたら、みんな驚くよね!」


「うふふっ、そうだよね。でもその前に先生に叱られそう」


「そうだね、あはははっ」


 ふたりに笑みが溢れる。

 放課後なのでこのまま見つからずにすぐに帰るつもりだ。真琴はそれだけで十分であった。涼子という友達と一緒にちょっと悪いことをする。それだけで十分楽しかった。



「何やってんの? あんた達」


 そんなふたりの耳に、最も聞きたくない声が響いた。



「橘さん……」


 そこにはクラスカースト上位、真琴を苛める橘カエデとその取り巻きが立ってこちらを睨んでいた。カエデが赤い髪をかき上げながら言う。



「こんなところで何やってんのよ、朝比奈」


「あ、あの……」


 真琴が鏡の前にあった化粧道具を隠す。取り巻きが言う。



「化粧してたんだ~? 校則違反じゃん!!」


 カエデがその化粧道具、そしてメイクされたふたりの顔を見て言う。



「お前らみたいな女が、化粧なんかしても無駄なの分からないの??」


「きゃはははっ!!」


 カエデの言葉に取り巻きが笑う。



 ――女の子は誰もが可愛くなる権利があるんだ


 その時、真琴の頭に龍之介の言葉が浮かぶ。大丈夫、自分は間違っていない。そう強く心に思った真琴がカエデを睨むように見つめる。

 真琴の怯まない目。それにイラっとしたカエデが、鏡の前に置かれた化粧品に手を伸ばしながら言う。



「お前達にこんなもの必要ないんだよ!!」


 そう言って手を伸ばしたカエデに、亮子がその手を掴むようにして言った。



「や、やめてよ!! 橘さん達に関係な……、きゃ!!」


 邪魔をしようとした亮子をカエデが反射的に突き飛ばす。



 ドン!!


「いったぁ……」


 カエデに突き飛ばされた亮子がトイレのドアにぶつかり、そのまま床に座り込んだ。真琴が叫ぶ。



「亮子!!!」



 パァン!!!



(え?)


 その瞬間、真琴が振り上げた右手がカエデの頬を強く平手打ちした。驚いたカエデが殴られた頬に手を当てながら言う。



「な、何するのよ!!!」


「そっちが先に手を出したんでしょ!!!」


 震える体に力を入れ真琴が言い返す。カエデは真っ赤な髪同様、顔を赤くして大声で言う。



「生意気、生意気、生意気っ!! 許さないっ!!!!」


 その言葉を合図にカエデ、そしてその取り巻き達が真琴に襲い掛かる。



 パン!!


「きゃああ!!」

「いたたたたっ!!!」

「やめてええ!!!」


 狭い女子トイレ。

 真琴と亮子はカエデとその時巻き達相手に揉みあい、取っ組み合いを始める。しかし数で敵わないと判断した亮子が相手の隙を見てトイレを出て大声で叫ぶ。



「先生ーーーーっ!!! 先生、いますかーーーーっ!!!!」


 放課後の校舎。

 人気ひとけのない校内に亮子の声が響く。



「ちっ、帰るぞっ!!」


 カエデが掴んでいた真琴の髪を放し、そして睨みつけて言った。



「生意気な根暗女!!! 絶対許さないから!!!!」


 カエデは取り巻き達と一緒に走るようにその場を去って行った。




「真琴っ!!」


 女子トイレにひとり床に座る真琴に亮子が駆け寄る。


「大丈夫? 大丈夫??」


 真琴の顔は腫れ、髪は引っ張られて乱れ、床に抜けた髪がたくさん落ちている。真琴が笑顔になって言う。



「ありがと、亮子……」


「真琴ぉ……、うえーん!!!」


 亮子は座ったままの真琴に抱き着いて大きな声で泣いた。

 だが真琴はずっと怖がっていただけのカエデに対して、初めて立ち向かった自分に内心驚いていた。



(喧嘩しちゃった、橘さん達と……)


 怖かった。今でも恐怖はある。

 でも初めて一歩踏み込んだその景色は、不思議と心地良いものだった。



 ――もう嫌がらせなんかに負けない!


 真琴は自分の背中を押してくれた年上の同居人の顔を思い浮かべた。






「マコ!? どうしたんだ、その顔??」


 マンションに帰宅後、バイトを終えて帰って来た龍之介が真琴の顔を見て言った。真琴が顔に手を当てて答える。



「うん、ちょっと学校でケンカしちゃった」


「ケンカ?」


「そう、ケンカ。ちょっと嫌がらせされて、友達が押されたんでつい……」


 真琴は苦笑いして言った。



「よくやった!!!」



(え?)


 龍之介は真琴を抱きしめて言う。



「お前はちょっと女っぽいところがあって心配していたんだが、そう言うケンカならドンとやって来い! 男ならどんどん殴り合え!!!」



(あははははっ……)


 真琴は内心ちょっと違うかなと思いつつも応援してくれる龍之介に感謝する。



「私、負けないから!!」


「ああ、頑張れ!!」


 龍之介が真琴の両腕を掴んで笑顔で答える。


 亮子や龍之介にクラスのみんな。

 カエデの嫌がらせは続くけど、真琴は今はもうひとりじゃないんだと思うと自然と笑みがこぼれた。

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