俺の父が、大好きな幼なじみの母親をレイプして捕まった。 それから俺は・・・
よろしくお願いします。
クラブが終わって真っ暗な中、少し急いで帰っていると、
向こうに幼なじみの柳田寧々が歩いていることに気がついた。チャンスだ!
「寧々!」
呼びかけると寧々は街灯の下で、笑顔を浮かべて待っていてくれた。
「直樹、どうかした?」
寧々は中学に入って、ぐっと背が高くなり、髪を伸ばし始めてぐっと大人っぽくなっていた。
いつもは冗談を言ったり、からかったり、煽ったりしているんだけど・・・
「うん、どうかした?」
俺から声を掛けたのに、黙り込んでしまったので、寧々は不思議そうに顔を傾けた。
「あのさ、ハーバーランドのクリスマスツリーが凄く綺麗らしいんだよね。
で、終業式の夜なんだけど、俺と行かない?」
終業式の日ってクリスマス・イブ。
勇気を振り絞ったお誘いで、来てくれたらその時に告白するんだ。
「えっ、終業式の夜って・・・クリスマスツリーを見に行くって・・・」
寧々はぼっと音が聞こえたかっていうくらいに顔を赤く染めて、俯いてしまった。
バレた!ドキドキ!
「う、うん。行こうか。」
恥ずかしそうな返事に天にも昇る気持ちになった。
「ありがとう!」
並んで歩きながら、色々と話しかけた。
「じゃあ、6時にクリスマスツリーで会おうよ!」
「うん。」
「その方がその~、ロマンティックだろ?」
「うん。」
「フードコートでご飯を食べようよ!」
「うん。」
「クリスマス寒波が来るみたいだよ。」
「うん。」
手を繋ぎたかったけれど、恥ずかしくて無理だった。
「うん。」としか答えてくれないから、顔色を窺いたかったけれど、
それも緊張していて無理だった。
これまで、どう歩いていたんだっけ?
すぐに分かれ道についてしまったので、思い切って向かい合った。
もっと話したかったけど、照れくさくて、なにを言えば良いのか分からなかった。
「じゃあ、ここで。また明日。」
「うん。」
寧々は恥ずかしそうな笑顔を見せてくれた。
最高に可愛かった!
「クリスマス・イブ、楽しみだね!」
「うん!バイバイ!」
寧々は満面の笑顔で、小さく手を振ってくれた!
最高に幸せな1日だよ!
そんな幸せな気持ちがその日のうちに暗転するなんて・・・
★★★
23時ごろ、お風呂から上がるとちょうど父が帰って来たみたいだった。
「ちょっと、どうしたの、お父さん。スーツが滅茶苦茶汚れているよ!」
母の声にびっくりして、リビングに向かうと青ざめた父がいた。
酒臭い。
父は普段は小心者で凄く優しいけれど、お酒が大好きで、
飲むと顔が真っ赤になって、大騒ぎして周りに大迷惑をかけるのが常なんだけど・・・
母の問いかけに父はぶつぶつと呟きながらも、なにやら誤魔化しているカンジだった。
どうしたんだろう?
玄関から大きな音が聞こえた。乱暴に開けられたようだ。
そして大きな足音とともにリビングに入ってきたのは寧々の父親だった。
俺と寧々、親友の村岡賢は3歳に同じ保育所で友達になった。
そして、その母親3人も大の仲良しとなって、毎年、
夏休みには3家族でキャンプに行くのが常だった。
中学に入って、俺はサッカー部、寧々はバレー部、賢は野球部に入っていたので、
キャンプは無くなってしまい、凄く残念だった。
寧々の父親は朗らかで俺たちにも優しく、酒を飲んでも変わらない人だったのに、
リビングに入ってきた寧々の父親は土足のままで、
その目は真っ赤になってつり上がっていて、
その表情は憎悪に覆われていた。
「てめえ、啓子になにをした!」
「すまない!」
寧々の父親の怒声に父は土下座した!
「死ね!死ね!死ね!」
土下座している父を寧々の父親は何度も蹴り、何度も踏みにじった!
「止めてください!」
ようやく母が寧々の父親を制止しようとしたら、母は張り飛ばされてしまった。
「止めろ~!」
俺はようやく、寧々の父親に抱きついて止めようとしたが、
振りほどかれ、殴られ、倒れたところを何度も蹴られた。
「止めてくれ!蹴るなら俺を!」
父が叫ぶと寧々の父親はまた、父を蹴り始めた。
母は警察に電話をしたんだけど、警察官が止めるまで、
寧々の父親による俺たちへの暴力は続いた。
寧々の父親は警察官に拘束されたけど、去り際に叫んだ。
「アイツだ!アイツこそ捕まえろ!アイツは啓子を!妻をレイプしたんだ!
アイツを捕まえろ!」
警察官はジロリと父をにらんだものの、そのまま寧々の父親を連れ出していった。
「啓子さんをレイプしたって本当なの?」
母が震える声で父を問いただすと、父はまた土下座した。
「すまなかった!」
「なんで・・・」
慟哭する父を見て、母は呆然としていた。
しばらくして泣き止むと父はタクシーを呼んだ。
「自首してくるよ。」
父の言葉に俺も母も答えることは出来なかった。
「忘年会から帰って来る途中、駅で啓子さんに出会ったんだ。
一緒に歩き始めたんだけど、酷く酔っ払っていて、
途中で訳が分からなくなってしまったんだ。
気づくと、公園で服を破かれた啓子さんが泣いていて、
俺は下半身が裸だったんだ。
酔いが一気に冷めて、逃げ出して来たんだ。すまない。」
父親はまた頭を床にこすりつけた。
「なんでそんなことを・・・」
母が号泣するのを見ながら、俺は呆然としていた。
タクシーが到着すると、父は「ごめん。」と呟いて家を出て行った。
母も俺も声を掛けることは出来なかった。見送ることさえも。
母が泣きながら寧々の父親が暴れて滅茶苦茶になった部屋を片付けているのを手伝った。
布団に入ったけど、全く眠れなかった。
なんでこんなことに?これからどうなるんだ?
クラスメイトとの関係、学校生活、クラブ、そして寧々との関係、
この家庭の中ですら、明日からの想像がつかなかった。
★★★
朝になったけど、父は帰ってこなくて、連絡もなかった。
金曜日だったけど、俺も母も寧々の父親から酷くやられていたので、
母はパートを、俺は学校を休むことにした。
そんな気になれなかった。
日曜日の朝、父と面会が出来ることになった。
父は顔に青たんがたくさんあったけど、落ち着いていた。
ただ、口の中が切れて痛いのだろう、口調が少しおかしかった。
「すまなかった。
まず離婚届を準備しておいたよ。好きにしてくれ。
罪を償ったら、2人にもキチンとお詫びするから。
あと、もう一つ。
俺は柳田さんを許さない。
俺に対する暴力はいいよ。当然だよ。
だけど、お前たちにあんなに暴力を振るったのは許せない。絶対に。
だから、訴える。
・・・このことで、お前たちにまた迷惑をかけてしまうかもしれん。
すまない。」
母も俺もなにも言うことが出来なかった。
★★★
月曜日、いつもどおり1人で登校した。
傷はほぼ治っていたんだけど、心の傷は全く癒えていなかった。
金曜、土曜、日曜は家に閉じこもっていたんだけど、誰も訪ねてこなかった。
スマホなんて持っていないので、今、どんな状態か何にも分からなかった。
怖くて友達に連絡することすら出来なかった。
学校に着いたけど、周りの生徒たちから特になにも言われなかったので、
戦々恐々としながらクラスへ向かった。
教室に入ると、すぐに寧々を探した。
寧々が気配に気づいて顔を上げたが、目が合う前に男子が立ち塞がった。
幼なじみで親友の村岡賢だった。
賢は俺を睨み付け、大きな声を出した。
「レイプ犯の子どもがよく来れたもんだな!恥ずかしくないのか?」
だれも驚いていなかった。
クラスメイトのみんなが俺に敵意と蔑みの視線をくれた。
「俺じゃない。」
誰にも聞こえない声で呟いた。
出入り口で立ちすくむ俺に賢が近づいてきて、1発殴られた。
そして誰もいない校内の端に連れて行かれ、憎悪にまみれた声で囁かれた。
「お前の親父、寧々の親を訴えたそうだな!
最低だな!レイプしたくせに、殴られたら訴えるってよぉ!
なんなんだよ、お前の親父!」
「・・・」
黙り込んでいたら、また、殴られた。何度も。
「おい、もうよせ。」
しばらくしてやって来た男子が賢を止めた。
そいつも俺に敵意と蔑みの視線をくれていた。
うん、俺が可哀想なわけじゃなくって、賢のやり過ぎが怖かったんだな。
俺はもう一度、クラスに入ろうとしたものの、
クラスメイトみんなの敵意と蔑みの視線を浴びて怖くなって逃げ出し、
年内は登校することが出来なくなった。
先頭に立って俺に憎悪と軽蔑と暴力を浴びせた村岡賢。
小学校の頃は寧々と賢と3人でいつも遊んでいた。
時々、賢の突拍子のないイタズラで俺と寧々は賢を叱りつけたり、
一緒になって悪ふざけして先生や親に怒られていた。
先月、俺と賢は寧々に一緒に帰ろうって誘われた。
「実はね、先輩に好きだって告白されたんだ。」
寧々が恥ずかしそうに言うと、俺と賢の視線が交錯した。
「「どうするの?」」
「うん。・・・止めておこうかなって。
嫌いじゃ無いけど、私は中一でまだ早いからね。」
寧々の言葉に俺はホッとしたが、賢はそういう俺を観察していた。
そして賢もホッとしていることに気づいて、
お互いが寧々のこと好きなんだって気づいた。
賢が俺に厳しいのはきっとライバルを蹴落とすためなんだろう。
だけど、酷すぎるよ・・・
★★★
クリスマス・イブ。
夕方になって俺はハーバーランドのクリスマスツリーを見ていた。
7時までいたんだけど、当然、寧々は来なかった。
1週間前、あんなに可愛い笑顔を、俺だけに、見せてくれたのに・・・
もう2度と見ることが出来ないんだな・・・
家に向かって自転車をこいでいて、当然だよと思いながらも
涙がこぼれて止まらなかった。
★★★
3学期が始まる直前、6組の担任が家にやってくると淡々と結論を伝えた。
「3学期から、3組から6組に移るように。」
1週間休んだ俺の体調や心を心配するセリフを吐くこともなく、すぐに退去した。
元の3組の担任なんか、電話の1本ですら、かけてくることもなかった。
学校は味方なんかじゃないって痛感した。
★★★
3学期が始まり、自分を励ましながら久しぶりに登校した。
6組に入って、深呼吸してから、「おはよう。」って挨拶したけど、みんなに無視された。
桑島ってヤツが大きな声を出した。
「お~い、レイプ犯の子どもが来たぞ~
女子は気をつけろ~
二人っきりになるなよ~
ヤラレちゃうぞ~」
1時間目が始まる前に、前に出て挨拶したんだけど、
誰も何の反応もなかった。当然、みんなにお知らせ済みだった。
下校時間になるとサッカー部のキャプテンが現れた。
前までは「才能があるよ。頑張ろうぜ!」って笑いかけてくれた先輩だったけど。
「もうクラブへは来るんじゃねーぞ。
マネージャーにも絶対に近づくなよ!」
冷たくそれだけ言うときびすを返した。
6組では何度も馬鹿にされ、何度も罵られた。
黙って耐えていると暴力を振るわれるようになった。
耐えきれず、狂ったような奇声をあげてしまったら、その場は治まったけど、
その奇声を面白がられて、暴力が悪化した。
暴力が続き、耐えきれなくなった俺はぶち切れて、
御守としてポケットに入れていたカッターナイフを取りだしてしまった。
「へっ、や、やれるモンならやって見せろよ!」
桑島の挑発に乗って、俺は踏み込んで、カッターナイフを突き出した。
刺すつもりなんて無く、刃は全く届かなかったんだけど、
桑島はビビって跳び下がり、机にぶつかって、腰を抜かした。
「ま、ま、待ってくれ!ゴメン!許してくれ!」
桑島はカッコ悪く足をバタバタさせて、イヤイヤしながら、哀願していた。
「はははっ。」
あざ笑ってやると消え去っていた自信が少し帰って来た。
それからしばらくビクビクしていたけれど、暴力は無くなって、悪口も無くなった。
でも、掃除は誰も手伝ってくれなかったから1人でした。
授業中、ペアであるいは班で実験等の場面があったんだけど、
誰も組んでくれなくて、1人ぼーっとしていた。
それを先生が注意することもなかった。
何度か、廊下で寧々とすれ違うことがあった。
寧々と話がしたかった。
父のことを謝りたかった。
許してもらいたかった。
笑顔を見せて欲しかった。
レイプの被害者が寧々の母親とは知られていないようだったけど、
賢や寧々の女友達が立ち塞がり、声をかけることはおろか、
目線を合わせることすら出来なかった。
★★★
1月の終わりに母は離婚届を提出して、俺の名字は牧野から椎名に変わった。
住宅ローンを払うのが無理になって、3月に家が差し押さえされ、
母方の祖母の家に同居することになった。
残念ながら同じ中学校区だったけど、母の収入では他の選択肢なんてなかった。
★★★
2年になって俺はまた6組だった。
ちなみに寧々は1組、賢は3組みたい。
同じクラスでバスケ部の井上伸一っていう奴が始業式の日に
ご親切にも再周知してくれた。
「椎名の親父、レイプで捕まっているんだぜ。
名字ロンダリングしているから気をつけろよ。
女子、二人っきりになるんじゃないぞ。」
★★★
4月のある日、教科書、体操服がズタズタにされていた。
またかよ!俺は関係ないのに!
何にも悪いことはしていないのに!
なんで?どうする?
俺はこれからどうすればいい?
何度も考えた。ずっと考えていた。
決めた。
やはり表舞台で頑張ろう。裏世界にはいつでも入れるからな。
まずは勉強を頑張って、さらに体を鍛えるんだ。
残念ながら貧乏で、習い事は出来ない。
空手とか習ってみたかったけど・・・
★★★
市や県の教育委員会へ、市長、県知事、複数の県議会議員、市議会議員へ
助けを求めるお手紙を書いた。
野党系の市議会議員がすぐに動いてくれて、
俺は別教室で1人、ウェブで授業を受けることになった。
誰とも交流はなかった。だけど、被害を受けることがなくってホッとした。
★★★
2学期が始まるとすぐに賢に呼び出された。
何だろう?
引っ越ししたから寧々の家から遠くなったこともあって、
寧々に近づいたことなんてないし、父親も刑務所に入ったままだけど。
体育館裏に行くと賢がやっぱり怒っていた。
「おい、お前のせいで寧々の両親が離婚するんだ!」
「おじさん、捕まってないんだ。」
つい呟いてしまうと、やっぱりぶん殴られた。
「当たり前だろ!レイプ犯をぶちのめしただけだ!」
「母さんと俺もぶん殴ったんだ。
土足で家に上がり込んで、色んなモノをぶち壊したんだ。」
理不尽を訴えたんだけど、また、ぶん殴られた。
「当たり前だ!お前の親父に対する罰なんだから!」
「俺たちは関係ない!」
また、ぶん殴られた!
「なに言ってんだ?連帯責任だろ?
お前なんて、半分、あのクソ親父の血じゃないか!」
「罪は父さんが償っている。俺は関係ない!」
また、ぶん殴られた!
「お前と寧々が友達じゃなかったら、こんなことにならなかったんだ!
お前のせいだ!」
「じゃあ、お前が守ればよかったんだろ!」
今度はぶち切れられて、ボコボコに殴られて、何度も蹴られ、踏みにじられた!
「2度と、俺たちに近づくんじゃねーぞ!」
「・・・呼び出したのはお前だろ。」
イヤミは賢の耳に届かなかった。
傷だらけ、泥だらけで帰宅すると母に凄く心配されたけど、大丈夫って言い張った。
次の日、アザだらけで登校したけれど、当然、だれも慰めてくれたりしなかった。
寧々の名字は柳田から夏木に変わっていた。
★★★
あれから2度目のクリスマス・イブ。
夕方になって俺はハーバーランドのクリスマスツリーを見ていた。
7時までいたんだけど、当然、寧々は来なかった。
みんな、笑顔を浮かべていて、幸せそうだった。
でも、だれかと嬉しそうにこの景色を見ている自分は想像出来なかった。
家に向かって自転車をこぎながら、クリスマスツリー綺麗だったなって思っていた。
★★★
3年になって俺はまた6組だった。
ちなみに寧々は1組、賢は4組みたい。
3年になって、みんなと同じクラスで授業を受けることになった。
担任の学校一の武闘派の先生が、初日にイジメについて厳しく警告し、
また、受験もあることから被害を受けることはなかった。
だけど、ずっと無視されていた。
でも慣れてしまって全く気にならなかった。
俺は成績がよかったので、母と祖母は俺をいい大学に行かせようと
ずいぶん未来を見据えて頑張ってくれていた。
祖母は年金暮らしだったのに、パートでガンガン働き出したし、
母はダブルワークを始めていた。
ありがたかった。
だから勉強、スポーツだけじゃなく、家事も手伝うようになって、料理も少し出来るようになった。
★★★
2学期の期末テストが終わって、また賢から呼び出しを受けた。
もう、譲れないところを譲るつもりはなかった。
体育館裏へ行くと、賢に睨み付けられた。
「お前、どこの高校に行くんだ?」
「どこでもいいだろ。」
「貧乏人なんだから、元町高校は止めて、バイト出来るところに行けよ。
そうすりゃ、邪魔はしないでやるよ。」
「へ~、それはありがたいな。まあ、考えておくわ。」
へらっと笑うと、賢は忌々しげな顔をしていた。
市内で一番の公立高校である元町高校に絶対行くけどな。
★★★
あれから3度目のクリスマス・イブ。
夕方になって俺はハーバーランドのクリスマスツリーを見ていた。
7時までいたんだけど知っている人は誰もいなかった。
家に向かって自転車をこぎながら、やっぱりクリスマスツリー綺麗だわって思っていた。
★★★
年が明けて、明後日が高校入試の日はすこぶる寒い日だった。
俺はいつもどおり2時間目が終わるとトイレに行って小便をしていたら、
黒覆面を被った2人の男子が、バケツを持ってトイレに突入してきた。
そして冷たい水を俺にぶちまけて、ゲラゲラ笑いながら逃げ出した。
その日は体育がない日だったので、着替えなんてなかった。
急いで家に帰ろうとしたら、スニーカーまで無くなっていた!マジか!
上履きのまま、小走りで帰ったんだけど、滅茶苦茶寒い!
家に着いた時には体は冷え切っていた。
次の日、やっぱり風邪を引いてしまった。
熱が38度以上あって、頭がガンガンに痛い。
学校を休んで、1日中、眠っていたんだけど、入試の朝は37度あった。
頭痛は治ったんだけど、少しぼーっとしていて、咳が酷く、鼻もずるずるだった。
担任にお願いしたかいがあって、俺が受験する教室内には同中の受験生はいなかった。
体調は悪かったけれど、邪魔されることはなかったので、なんとか合格出来たと思った。
★★★
合格発表の日、少し遅れて見に行くと、向こうから賢と寧々が歩いて来た。
2人とも合格したらしく、見つめ合って笑っていた。
賢と寧々は俺に気づくとうっとうしそうな顔になった。
すれ違うとき、賢は憎々しげに吐き捨てた。
「おい、警告してやったのに、こっち来るってバカなのか?
しょうがないから、みんなにちゃんとお知らせしてやるからな!」
★★★
卒業式の日、机の中に写真が1枚だけ、入っていた。
俺に水をぶっかけたヤツらが黒覆面を脱いでいるところで、
賢とバスケ部の井上伸一が笑顔で写っていた。
この写真をくれた奴は、俺が可哀想になったのかな?
それともヤツらが嫌いなのだろうか?
中学の3年間、俺はたくさんのモノを失った。残ったのは母と祖母だけ。
父のことは好きだったけど、もう怨みしかない・・・
新しく得たモノは、他人からの憎悪、蔑み、か・・・
高校では嬉しいモノ、楽しいモノを得ることが出来るだろうか・・・
読んでくれてありがとうございました。
これは前編(中学編)で、3月15日に後編(高校編)を投稿します。
よろしくお願いします。