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お題シリーズ4

墓参りする魔王

作者: リィズ・ブランディシュカ



 俺は魔王だ。


 世界を壊し、多くの命を蹂躙するもの。


 混沌をもたらし、破壊をもたらす魔族の王だ。


 しかし今だけは、ただ一人の魔族として墓参りをしていた。


 俺は、魔王城の裏手にある墓の元へ赴く。


 それは立派な墓だった。


 その墓で眠っている者の事を思えば当然の大きさだろう。


 なぜなら、ここに眠っているのは先代魔王なのだから。


 しかし、先代魔王は最初から魔王だったわけではなかった。


 俺が生まれた頃は、どこにでもいる魔族の一人。


 子煩悩で、妻を助けるような、そんなよい父親だったのだ。


 しかし、住んでいた村が人間達にせめられて、妻を亡くしてしまった。


 あの頃の俺は知らなかったが、この世界には、人に悪さをする魔族もいたのだろう。


 人間達はそれで迷惑を被っていたはずだ。


 しかしその村にいた者達は、無害な魔族だったのに。


 父は怒り、人々を根絶す事を決意し、強くなる事ばかり考えるようになった。


 父は、始めは通りすがりの人間や冒険者を殺すだけだった。


 しかし才能があったのだろう。


 父は驚異的なスピードでと力をつけていった。


 そして、魔王になって多くの魔族を率いるようになった。


 だから、そんな日々を送る父は、俺の事など忘れていると思った。


 けれど父はある日、村で自警団をしていた俺の元にやってきたのだ。


 魔王になった父は、病に侵されていて、先が長くない事に絶望していた。


 このままでは復讐を果たす事ができない。


 そう思った父は、自分の復讐の続きを息子に依頼しにきたのだ。


 俺は、復讐の道具となる事に反対していたけれど、日に日に弱っていく父を見ていられなくなって、つい頷いてしまった。


 戦いの才能は俺にも引き継がれていたらしく、自警団でも強かった俺は、魔王となった後人間との戦いに出るようになってからもどんどん強くなった。


 それで俺は、誰もが認める魔王となったのだが……。


 父はそれでは満足しなかったようだ。


 一人残らず根絶やしに。


 と、復讐だけを願いながら、この世を去っていった。


 子供の頃の父は穏やかだった。


 名前も知らない隣人や旅人が怪我すれば、それを案じるほど性格が優しかった。


 それなのに、どうしてそこまで変わってしまったのだろうか。


 俺は墓参りの度に思わずにはいられない。


 これから魔王軍の幹部に指令をだして、人間の町を一つ襲う計画になっているが、気が乗らなかった。


 人間に対する恨みはある。


 しかし、父ほどではないのだ。


 自分の意思のないその戦いを俺は、なぜ続けていかなければならないのだろう。



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