夢の話 昆虫氷河期
第四章 昆虫氷河期
今からおよそ5000万年前、昆虫が地球を支配していた。
昆虫は進化を遂げ、地球上に高度な文明を築いていた。一方、人類の祖先は野蛮な動物で、昆虫たちに管理され、支配下にあった。
昆虫社会は、1億年前から存在し、恐竜時代と言われた白亜紀では恐竜を家畜として飼育し、品種改良を重ねて大型化させ、昆虫社会の歯車の一つとして機能させてきた。
昆虫社会は、統制が取れており、地球の自然をコントロールし、食料不足も無く、争いも無く、今の人類が理想とする循環型環境を構築し継続させてきた。
しかしながら、1億年もの平穏を保ってきた昆虫社会は、昆虫の数が増え過ぎてしまい、昆虫爆発が発生した。昆虫たちは地球上で生きていく事が困難となってきた。
昆虫たちは、宇宙船を建造し、他の惑星に移住先を探しに行くことにした。
この昆虫社会を二分する移住計画は、結局、移住先を探す昆虫と地球に残る昆虫とに分かれた。
昆虫社会の王は、移住先を見つけてくるまでの間、地球に残る仲間が絶滅しないように、冷凍睡眠状態にしようとした。移住先を見つけて帰ってきた時のために、一時期の間、昆虫社会を閉じることにした。昆虫社会では、地球内部の操作も可能であり、地球核のマントル対流を操作して、寒冷な地球環境を作り、仲間たちを氷で囲まれたシェルターに冷凍睡眠させる計画だった。氷シェルターが溶けないように、寒冷な気候を継続させるために氷河期へと気候制御しようとしたのだが、それでは地球の動植物が死滅してしまうので、寒冷な氷期と少し温暖な間氷期を周期的に自動設定した。
その頃人類の祖先は、昆虫社会から火の使い方を学び、寒冷地でも適応して生息していた。
このような進化を遂げた人類の祖先に、目をつけた昆虫社会の王は、氷河期の間は、人間が支配してもよいと約束した。その代わりとして、①氷河期の制御を継続して見張ること、②昆虫を起こさない事、③地球環境を侵さない事、の条件を出した。人類の祖先は、氷河期の番人として、地位と権限を与えられた。
それから1億年後、昆虫たちは地球に戻ってきた。移住先を探す事はできず、昆虫王は亡くなり、半数以上が宇宙船の中で死んでしまった。最後の望みを地球に託して帰ってきたのだ。
しかし地球は変わっていた。氷河期は終わり、温暖な気候となっていた。番人の人間が繁栄して文明を持ち、冷凍睡眠の昆虫も死に絶えていた。昆虫たちは人間社会に報復するために宣戦布告した。
特殊な能力で、全人類の脳にこう呼びかけた。お前たちは約束を破った。天罰を下すことにする。と…。