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死の淵 桃源郷  作者: ぺったんこ
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夢の話

第一章 死の淵 桃源郷


 亡くなった人が忘れられず、その亡骸を持った人々が彷徨い、辿り着く場所。

大切な人とお別れすることを何度も試み、断念した夫婦が、亡き子供とお別れするドキュメンタリー。

 その夫婦は複雑な家庭環境だった。夫40歳。その風貌は70歳に見えるほど老けていた。妻57歳。同じく70歳に見えるほど老けている。

妻は30歳で男子を授かるが、3歳で死亡。その死を受け入れられず、亡骸を隠し持っていた。その後、今の夫と再婚して、息子の事を打ち明けた。夫婦は悩み、時間だけが過ぎた。何度も桃源郷を訪れるが、お別れすることは出来なかった。

 テレビ番組で、仲良しのその夫婦を取材した。取材の途中で、突然、妻が告白。番組に視聴者から誹謗中傷が殺到した。妻はストーカーやバッシングに合い、外に出れなくなった。

 放送後に、死体遺棄せずに、亡骸を持ってさまよう人々が多い事が分かった。その人々が集まるのが、死の淵 桃源郷だった。二回目の取材で、その夫婦が桃源郷に行くのを密着した。猛吹雪の海岸で息子と別れる場所を探し回る夫婦。過去に何度も訪れた話を聞く。あの滝に落とそうとしたが、今日は滝が凍っているからダメだと夫が言う。妻は黙ってうつむいている。テレビ取材スタッフは二人。カメラマンと私だ。私は夫婦二人の話を聞いていたが、理解出来ない。何でこんな事をしているんだろうと疑問に思った。

吹雪の海岸は、足を滑らせば、海に落ちてしまう。波も高い。妻は死んでもいいと思っている足取りだ。私はその女性を見守りながら歩いている。夫は息子の亡骸を入れたバッグを抱えて、前へ前へと進んでいる。そもそも、夫は再婚だから、息子の実の父ではないが、どうしてそんなにこだわるのか。

何時間も吹雪の中歩き回ったが、お別れする事は出来なかった。何度も今日のような事を繰り返していると聞いた。

吹雪は止み、今度は穏やかな空間に来た。剥き出しの岩盤に、小さな池が何個もあり、水は繋がっていたり、いなかったりする。人々が池の周りに集まっている。あの人達もお別れ出来ない人々だと妻がいう。他の人がお別れするのを見て、心を同調させているという。

その後、夫婦はホテルのような建物の3階くらいにいた。外の景色をただただ見ている。突然夫が、バッグを下に放り投げた。成仏してくれよ。と小さく言った。紺のスポーツバッグは、繋がっていない小さな池にポチャンと落ちた。妻は泣いている。私も泣いている。テレビ取材がきっかけでお別れする決心がついたと話された。

下に降りてみると、バッグが池に沈んでいた。水深が浅い池だ。妻は、池は繋がっていて、みんなあそこに集まるんですと言った。池は繋がっていないが、何でそんな事を言うのか意味が分からなかったが、確かにそこに人々が集まっている。

不思議な光景だ。あの人たちは、死んだ人なのか?顔がはっきりと見えない。お別れした者の親族なのか?そこでよく来たねと言っいるようだった。顔ははっきりみえないが、穏やかな空気が伝わってくる。

夫が言った。妻の告白を聞いて、自分も永い間苦しんだ。苦しんだら、いつしか自分の息子になったと。息子の亡骸を落とした池の周りで、夫はラジコンカーを走らせていた。息子が喜んでくれたらいいと。ラジコンカーが池に落ちたが、夫はそれでよかったかのように、コントローラもその場に落とした。


夫婦の永い旅は終わったのか、これから新しい人生を歩むのか、分からないまま取材を終えた。


第二章 犬のわんこ


仲良しの仲間4人組。仕事も住んでるところも違うが、インターネットを通じてつながっていた。ある時、1人のわんこちゃんと連絡が取れなくなった。わんこちゃんは、彼女のハンドルネームだ。眼鏡をかけた30歳位の女性で、いつも仕事に疲れたような顔をしていた。どこかのアパートの201号室に住んでいると聞いた事がある。

わんこちゃんを心配したサークル仲間の3人は、わんこちゃんを探しに行った。わんこちゃんの住んでるアパートまで行ってみたが、不在だった。アパートの大家さんに電話してみた。201号室には誰も住んでいません。と返答された。独身女性が本当にアパートや部屋を他人に言うわけないかと思ったが、腑に落ちない点もあった。わんこちゃんは嘘をつくような人ではないからだ。

ふと、草むらからなにかの気配を感じた。

仲間たちが、わんこちゃ〜んと声をかけた。返事が無い。

今度は仲間たちが、わんこちゃんにまつわるエピソードを話し始めた。すると、草むらの奥から小さく悲しい声で、ワンと言った。

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