人間ドックはみんな嫌
非電化区間に入り、30分が経過した。
松平山駅、紺比野駅、羽真裸駅等も通過した。
それに、特に大きなトラブルも無く、順調に進んでいる。
そして、これから先の区間は、この電車が最終となる。
間違えて降りたら大変だ。
そこで、電車は減速し、山を三つほど越える。
途中二つほどの駅はあったものの、各駅ですら通過するものがあるほどの小さい駅なので、別に問題は無いだろう。
そして再び、ブレーキ。しかし、
「な~、なに今の?」
止まったことに対してよく分かっていないのだ。
そして、電車が止まってからすぐに放送が流れた。
「停車信号が赤のため停車しました」
赤だからか、それならば仕方がないな。
しかし、ここは化茂野駅と仁苦駅の間だ、ここは本線の間で屈指の秘境駅のトップ10に入る勢いの場所で、クマが山ほど出るスポットであるため、ここで止まるというのは怖いものだ。
ここで、もしもクマが来たらと考えると恐ろしい。
もしここを超えたとしても、化茂野から先の区間は、何百kmも、クマの出るスポットを走るので、変わらないのだが、その中で出る確率が一番高いのがここである。
つまり、ここで電車を止められることは、確率としては高いのだが、クマに襲われるリスクを背負っているということになる。
「いやまさかな......」
ここで、自分の不運を嘆く。しかも、ここは秘境に近いので、クマは出る確率は限りなく高くなるだろう。
とても嫌な予感がする。
「なんか怖いです......」
クマは怖いのだ。
「でも、これしか方法が無いです」
それは、死んだフリ
でも、それは迷信だ。
俺は神に祈った。
クマに出ないでほしい、それを脳内で、一分間に20回ほど祈った。
しかし、神は見なかった。代わりに、クマが出た。
最悪の事態だ。
死ぬ!そう思った時だった。クマが電車に食いついた。まるで俺を食べようとするかのように、体をくっつけてくる。
「おお!」
なんと、クマが逃げていった。
何故、逃げていったのだろうか?と疑問に思って外に出て様子を見て見たところ、電車にはクマの歯型がついていたが、それに対応して全ての歯が抜けていた。
つまりあのクマは、歯を全て失ったのだ。
これは幸せだ、幸運だ。
「クマの歯、取れたんですね......」
人間だって乳歯や永久歯は抜けるし、歯のない人だっているんだから、クマの歯が取れたとしても、おかしい所は特にないよな。
命があるだけで、嬉しい。
これが、急死に一生というやつか。
護衛の騎士達も、クマへの対抗をしようと武器を持っていたが、それは途端に不必要になったので、騎士たちは武器をしまうことにした。
調査団も、特に怪我がなかったので良かった。
そして、信号も青に変わり、また電車が動き出した。
電車は仁苦駅を通り過ぎた。
俺たちは安全を確認して、ホッとした。
そして、20時を少し過ぎた頃。
今日の最終目的地である辺来縞平原駅に到着した。
この辺来縞平原駅は、他の電車も走っており、それに乗り換えることになっているが、今日はその最終電車はあるものの、その電車に乗って終点まで行っても、宿泊できそうな場所がなく、ここが宿泊できるスポットであるため、ここで泊まることにした。
ここに来るまで本当に長い距離を移動したので、とても疲れが溜まっている。
今日の移動ルートとしては、1000km以上の区間を移動し、長距離の移動となった。
しかし、目的地はまだ遠い、電車を使うルートは距離的に遠回りになってしまっているのが原因だ。
しかし、徒歩で1500km移動するよりは、確実に楽であるため、こっちの方が選ばれやすいだろう。
流石に、今日はみんなの疲れが相当溜まっているとの事で、明日はアクティビティを用意しようと計画している。
疲れたまま行動すると、更に疲れが溜まってしまう。
世間には、過労死という言葉もあるため、働かせすぎてはいけないのだ、そのため疲れたら休ませないといけない、もしも過労死してしまったら社会的地位が一気に下落してしまうので、気をつけなくてはいけない。
明日やるアクティビティについては、まだ秘密だ。
先にネタバレしてしまっては楽しみが減る、例えばショートケーキのイチゴを先に食べるか後で食べるかみたいなものだ。
これが所謂サプライズといわれるものだ。
とりあえず、殆どの参加者が酒を飲んだ、今日の疲れを癒すためだ。
今日参加した参加者を、全員酒豪と表現した人がいるくらいお酒の飲める人が殆どだ。
だから、いつもは呑み潰れるまでひたすら飲み続けるのだが、参加者の殆どが人間ドックで引っかかって以降人間ドックが苦手になってしまったのも原因の一つとしてはあるが、やはり明日はアクティビティがあるから、飲み潰れて楽しめないのでは、それは嫌だからだ。
というわけで、飲むのは1本か、2本程で済ますことになった。
というわけで、全員がベッドで眠り、明日のアクティビティについてほとんどが無知の状況の中、何処かで楽しみにしている部分があった。
そして、翌朝、アクティビティが行われる会場にまで移動することになった。