4すぐそばに
何とかして週二本くらいあげたいなぁ
あれから何時間が経っただろうか。
さっきまで真上にあった太陽は、地平線に飲み込まれつつある。あたりはオレンジ色に染まり、昼に比べすっかり見通しも悪くなってしまった。人の気配はおろか魔物一匹すら感じない。聞こえてくるのは木々のざわめきだけであり、それを除けば不気味なほど静かである。
「マジかよ…」
希崎の脳裏で再び絶望の二文字が大きくなる。意気揚々と歩き出したはいいものの、ここまで進展がないとさすがに気も滅入る。刻々と時間だけが過ぎ、そろそろ野宿の準備に取りかからなければならなくなってきてた。ここまで何もなかったとはいえ、ここから何も起こらないとは限らない。いや、むしろ何か起こってくれれば幸いなのだが、いかんせん夜になってしまうと視界が悪く、非常に危険である。
希崎は小さくため息を漏らし、適当な薪を拾おうとしていたその時――
「――――だ」
「――――なぁ」
一瞬ではあったが、希崎の耳は確かにその声を聞き漏らさなかった。
「えっ」
希崎は薪を拾う手が止まり、2秒ほどフリーズしてしまった。慌てて我に返り、もう一度声のした方向へと耳を傾ける。
「――――だ!」
「――――んなぁ」
何やら争っているかのように聞こえる。本来ならば関わらない方がいいのかもしれない。
しかし希崎は久しぶりに聞いたその声に興奮し、拾っていた薪を捨て、一目散にその声のする方へ駆けていた。
「――もんだ!」
「――そんなぁ」
さっきより声がはっきり聞こえてきた。おそらくあと数十メートル先に声の主がいる。駆けるスピードはさらに上がり、拍動も短くなっていく。
その時、希崎の視界に2つの影が飛び込んできた。
「おーー」
助けを求めていたため声を出しそうになるが、慌てて口を手で覆い、反射的に茂みへと身を隠す。
「あれって…」
呼吸を整え、茂みから顔を出し、影の本体に目をやると、そこにいたのは2頭のゴブリンだった。1体は筋骨逞しい骨太なゴブリンであり、もう1体はさっきのやつに比べると痩身で、背も低く、見るからに弱そうなゴブリンである。
「だから、ここは俺たちの領地になったんだよ!」
「そんなこといわれても、ここはわしたちの領地なんじゃが…」
「うるせぇ、てめぇらは黙って立ち退けばいいんだよ!」
しびれを切らしたのか、骨太なゴブリンは丸太のような腕を振り上げ、痩身のゴブリンの顔面へ拳を思い切り放った。
「ごあっ!」
鈍い音と叫び声が静かな森に響き渡る。
痩身のゴブリンは口から血を流しながら地面に勢いよく倒れ込み、骨太なゴブリンは自業自得だとでもいわんばかりの視線を痩身のゴブリンへ向け、森へと帰っていった。