3 やや詰み
ぽつぽつと書き始めようと思います
自身をすっぽりと覆っていた光がなくなり、希崎は恐る恐る目を開く。
どうやら転生してもらった場所は森の中のようで、どこを見ても青々と茂った葉を携えた木と固い地面が続き、第二の人生スタートにしてはハードな序盤となっている。まわりの木々は風に揺られ、ざわざわと規則的なリズムを保ち、幾重かの深みを持ったその音を希崎は既に6回は聞いていた。
「……やばくないかこの状況」
目の前の状況をまだ整理できておらず、まともに感想を述べることすらもままならない。
仮に希崎が転生前に神様からチート級の魔法を授かっていたならば、この状況であっても何かしらの打開は出来たかもしれない。
しかし希崎はチート級の魔法以前に魔法その物を持たせてもらっていないため、脱出する方法は限られている。
それどころか、前世でも森から自力で抜け出した経験がない。ましてやここは異世界であり、前世より危険なのは明らかだ。
思案し、だんだんと状況がつかめてきたのと同時に、【絶望】の二文字が色濃くなっていく。
しかしいつまでもここに突っ立ているわけにもいかない。森の中ではあるが、ここは夢にまで見た世界なのだ。何かしら行動しなければ、ここで餓死するか何かしらの魔物の餌にされてしまうのが自明の理だ。
「よし、歩くか」
これが今の希崎に出来る最大限の答えだった。魔法が使えないとなれば、とりあえず足を使うしか方法がない。幸い日はまだ真上にある。前世でいえば昼の12時くらいだろうか。日中ならば森の中といえども見通しがよく、歩いて索敵するのに最適である。
こうして前途多難かと思われた異世界転生に一筋の希望が見え始め、希崎は口角を上げ足早に索敵を始めた。