表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

71/73

999話 混沌と終焉。


 999話 混沌と終焉。



 ――天童は抗った。

 己の全てを賭して、

 大いなる混沌――『ソル』と戦った。


 天童は強くなった。

 ガキの頃とは比べ物にならないくらい、

 候補生をやっていたころとは次元違いに、


 強くなって、強くなって、強くなって、

 そして、強くなった。


 しかし、



「やはり、無理だったか……天童久寿男。お前ならばあるいはとも思ったんだが……」



 大いなる混沌――『ソル』の言葉を受けて、

 天童は、


「ふざけやがって……」


 ボロボロの姿で、

 しかし、

 決して折れていない目でソルをにらみ、



「必死こいて……全部積んだのに……『てめぇに殺された作楽たち』の執念も覚悟も……全部、全部、全部……なのに、どうして届かねぇ……」



「さぁなぁ……それは私も知りたいところだ。お前だけじゃない……どうして、『誰』も『最後の壁』をこえることができない? どれだけ尽くしても、何を与えても……結局、『お前ら』は届かない。退屈だよ……本当に……ずっと、ずっと……退屈で仕方がない」


 はるか遠くを見て、そうつぶやくソルに、

 天童は、

 すぅうと息を吸い、




「……俺じゃお前には勝てねぇ……」




 吐き捨てた。

 事実を述べる。

 天童では届かない。

 天童久寿男では、ソルには勝てない。


 だからソルはうなずいて、


「ああ、そうだな」


 至極つまらなそうに、


「貴様では私には勝てない」


 事実を並列させる。

 意味のない時間。

 遠くを見るソルの心はからっぽで、

 今に対して、驚くほど無関心。


 ――だったのだが、




「それでも……」




 おもむろに天童が口を開いたのを受けて、

 視線を虚空から天童にもどし、


「ん? どうした? 何を言う? 『それでも』……なんだ?」




「それでも……俺は……」




 奥歯をかみしめて、

 前を向く。


 長い戦いの中で、

 天童はとっくに、

 あきらめ方を見失っている。




「どう転んでも、これが最後……負ければ終わり。勝てたら、もはやこの命に未練無し。だから、威勢よく叫ぼう。――さあ、てめぇは、全力で、耳をかっぽじれ」




 ギンッッ!

 と鋭い目でソルをにらみつけ、


「俺は……熾天使の首席にして天使軍総大将、究極超天使『天童てんどう 久寿男くすお』――貴様を殺し『全ての運命』を守る者! すなわち! この世界の『主人公』だぁあああ!!」


 叫びと同時に飛び出して、

 すべての力を結集させる。

 限界を超えて、

 果て無く、


 どこまでも膨らみ続ける、強大な力!!


 ――それを、



「貴様は間違いなく世界の主人公だ。しかし……足りない」



 ソルは、涼やかな顔で受け止める。

 子供の駄々でもあやすみたいに、

 優しく、平熱のまま、


「お前は強くなった。『カス以下だったガキの頃』とは比べ物にならないくらい強くなった。正直、お前のような心根の持ち主がここまでくるとは思っていなかった。とんでもない奇跡……いや、もしかしたら、その弱さが必要だったのかもしれない」


 おだやかに、落ち着いた口調で、


「お前は、『弱さ』を知っていたからこそ『その領域』にまでたどり着けたのかもしれない」


 『最初』から強かったら、ここまで抗うことはできなかったかもしれない。

 ――なんて、そんなことを思いながら、

 ソルは、


「お前は強い……強くなった……『弱さ』を背負い『命の最強』に届いた……だが、『私』には届かない。この事実には、私も、ため息しか出ない」


「俺の『底』を見た気になったな! そいつはフラグだぜ! 『その幻影』の一歩先へと踏み込んで、風穴をあけてやる!!」


「むりだよ、天童久寿男。お前はすでに出し尽くした。一歩先はもうない」




「あるんだよぉおおおお!! 最後の最後のとっておきぃいいいい!」






評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
ソルが望む、最後の壁って何なんですかね? 望み通り強さの壁を越えても、エネルギー枯渇で世界が滅ぶし、 センを見てると、絶望が足りないと感じる 気になる点、 最終的な天童久寿男の存在値はどれくらいで…
[一言] この話数で行くと最終話は1001話でセンエースの方の話のスタートにたどり着く的なあれか?
[気になる点] この時のソルって、ソルの本体ですか? また、ソルの見た目ってどんな感じですか? [一言] 案の定、オールカットされましたね。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ