エピローグ3「混沌」
エピローグ3「混沌」
「あ、ちなみに、トコちゃんとの3Pはいいんすけど、高瀬も一緒となると、ちょっとまだ無理なんで、全員でのプレイを強要されるのだけは勘弁してほしいっす」
「……あとでいくらでも聞いてやるから、今はエロギャグを一旦忘れて、真剣に答えてくれ。おまえ、ガチでここに住む気か?」
「そうっすね」
「いやいやいや、断れ、断れ! さすっっがに、お前も普通にイヤだろ!」
「これは、主の命令っすよ、センセー。つーか、みっともないから、おたおたすんな。何言ったって、状況はかわりゃしないんだから、いい加減、ハラくくれ」
「……お前……ちょっ、ほんとにマジか? 『その顔』で言ってくるって事は、マジなんだろうけど、本当にいいのか? 普通に考えたら、どう考えたってイヤだろ、年頃の女子高生が、同年代の男と一緒に住むなんて、俺がそっちの立場だったら、地獄でしかないと絶望するぞ」
「どうせ、チキンすぎて、誰にも手は出せないだろうから、別にいいっす。まあ、手を出してきたとしても、ぶっちゃけ、いいんすけどね。ボク、ガチでセンセーの事、好きなんで」
佐々波の、本当に覚悟が決まっているっぽい発言を受け、
天童が心底から絶句したところで、
引越しの準備を終えたトコと高瀬が部屋に入ってきた。
さすがに、二人は、佐々波ほど豪胆ではなかったが、
「――まあ、あたしも、流石にイカれた状況やとは思うけど、でも、このクソガキ共に好き勝手はやらせへん。久寿男、押しに弱いところあるから、なんか心配やねん。ようは、監視にきたってことやね」
「――だって、いずれ『主』になる男と一緒に暮らすとか、メチャメチャオモシレーじゃん。ぶっちゃけ、ここまでの男だとは思ってなかったら、正直、テンション、ブチ上がりっぱなし。覚悟しといてね、天童さん。あたし、ガチで落としにいくから」
妙な覚悟だけは決まっているようで、
多少、空気はギスギスしているが、
当たり前のように、天童の部屋を占領しはじめた。
妙にヒートアップしていく現状。
頭が思考を放棄しそうになる。
もともとはそういう人間。
『面倒』を前にすると『心』が逃げ始める。
だが、
「作楽さぁん。いちいち、グラスをあげるたびに、机を拭くの、鬱陶しいんで、やめてもらえますぅ?」
「あたしは、コップ跡のワッカを見るとイライラすんねん」
軽くモメはじめた作楽と高瀬を見て、天童は、反射的に立ち上がった。
人間は成長をする。
思考の放棄は諦め、覚悟を決めた。
二人の間に割って入り、
代案を出してなだめつつ、
『スキを見つけてはちょっかいをかけてくる佐々波』に説教をする。
――どうやら、天童の方も、ハラが決まったようで、
「まずはルールを決める! 価値観の相違に対する配慮と、家事の分担について、徹底的に話し合うぞ!」
「おっ、なんか、マジで結婚したみたいっすね」
「アホは黙ってろぉ! 一緒に暮らすとなれば『ごっこ』じゃすまねぇ。いいか、理解しろ! これは戦争だ! 互いの法律をぶつけあう、ルール制定という戦いだ!」
「というわけで、『夕食にマムシジュースを出した日の夜は寝かさないぞ法案』が衆参両院に可決され、見事成立と相成りました。おめでとうございます。パチパチパチィ」
「お前、もう、帰れぇ!!」
「今日から、ここがボクのおウチっす」
そこで、ついに作楽が立ち上がり、
「おい、クソガキ、ええ加減にせぇよ」
「言ってやれ、作楽! 俺が許す! 渾身の喉輪を見舞ったれぇ!」
「今のルールやと、誰を寝かさんか決まってへんやないか」
「……作楽さん?」
「そうだよねぇ。あいまいな部分は排除して、『どれの時は誰か』ってのを決めておないとダメなんじゃね? あたしん時は、エナジーエックスね」
「高瀬さん?!」
「そうっすね。そこを決めておかないと。いやぁ、ウッカリしてたっす。あっはっは」
「ほんま、アホやなぁ」
「ダメな先輩ですねぇ」
「一丸となって、悪ノリすんなぁあ!!」
焦っている天童を面白がる女共。
腹をくくってきた女三人との戦争。
男だけが血みどろになるのは、最初から目に見えていた。
(体が不死身になったとたん、心を削り合う戦争の始まりか……あのババァ、本当は俺の事嫌いなんじゃねぇか?)
将来起こりうるだろう、さまざまな地獄を想像して、天童はため息をついた。