表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
クズニートの成り上がり~『剣の翼』を手に入れ、『ボーナスダンジョン級チート訓練所』で最強になったクズ男の至高堕天録~  作者: 閃幽零×祝百万部@センエースの漫画版をBOOTHで販売中
第二部『堕ちていく、クズ男』

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

56/73

30話 アホやなぁ。


 30話 アホやなぁ。


「妙な事に、あいつは『姉の死について』だけ忘れている。もしかしたら、姉の死という記憶データが重すぎたのかもな。『姉の死という重荷』を消すのにエネルギーを使い切ってしまったせいで、他の記憶を消せなかったのではないかと、勝手に推測しているが……もちろん、真実は知らん」


 回転率の上がった天童の頭が、

 高速で、言い訳を補強していく。


「もちろん、深い部分の本音を言わせてもらえれば『あの女がどうなろうが、知ったこっちゃない』が……しかし……さっきの推測が仮に事実だった場合、『あの女の処分』という結果は、俺にとって、少し意味が変わったものになる。一言で言ってしまうと……あいつが消されたら、俺は、あいつをこの手で殺したような感覚に陥ると思った。俺のバカみたいなミスが、あいつを殺したのだと。――くだらない感傷に過ぎないが、俺は、感情を自在にコントロールできるほど、性能の高い人間じゃない。ありていに言えば、自己責任の損傷は『1』で抑えておきたいんだ」


 天童は、そこで、わざとらしくならないよう、慎重に溜息をつく。


 『言い訳がヘタクソ』なのは自任している。

 『追い詰められるとアップアップになる自分の脆さ』は熟知している。 


 だが、ここは重要な場面。


 天童は、とにかく必死になって、脆く崩れそうになる『弱い自分』を抑え込み、


「善良な人間になりたいとは毛ほども思わないが、わざわざ、『身勝手な人殺し』という『ちょっとした荷物』を背負うのは『軽く面倒くさい』と思った。まさしくクズだ。つまり、俺は、俺という人間を全うしているだけなんだよ」


「主天使を相手にしながら、お荷物を5人も守ったんやろ? 大手柄中の大手柄やん。誰も久寿男を攻めへんよ。仮に、『全員守れんかったんか、ダサいのう』とかズレた文句言うてくるアホがおったら、あたし、そいつにナイフを乱れ刺しながら言うたるわ。『お前、出来んのか』って」


「猟奇的にナイフを使う必要は微塵もないと思うが……」


 と、軽く呆れた顔で、

 一言だけ前を置いてから、


「お前以外の誰がどう思おうとどうでもいい。俺はただ……」


 そこで、天童は、『今の自分』に可能な『一番気合いの入った顔』をして、


「お前に『インポッシブルなミッションをコンプリートした』と自慢したかった。結局のところ、それだけなんだよ。――『主天使と闘って勝っただけやなく、お荷物を全員守ったやなんて、ほんますごいなぁ。かっこいい、すてき、抱いて』と、ほめてもらいたかった。それだけの、本当にちっちぇえ見栄だ」


「ほんまに、あんたは見栄っ張りなやっちゃなぁ。あと、あたしのマネ、ヘタやわぁ。ゾっとしたで。自分、ほんま、戦闘能力以外、とんでもなく無能やなぁ」


「少尉、よくみたまえ、すでに私のライフは0だ。『死体蹴り』は軍規違反だと知らんのかね?」


「いまさら、自慢が一つ増えた所で、あたしの中での『久寿男のすごさ』に変動とかないで。天使としての性能という評価部分は、とっくにカンストしてんねんから」


 空気が弛緩した。

 作楽の表情にも柔らかさが宿った。


 ――『ここが勝負どころだ』

 と踏んだ天童は、

 丹田に気合をブチこんで、

 渾身の『弱い男』の表情で、

 温めていたハイスピンジャイロをど真ん中に投げ込む。



「……『イイ女』の前では、永遠にカッコつけ続けてしまうのが、男という、みっともない生物の、どうしようもないサガなんだよ」


「い……イイ女って……アホちゃうん。なに、おだててんの。なんも出ぇへんで」



 顔を真っ赤にして、背中をバンバン叩いてくる作楽に、


「お前から何かを貰おうと思った事は一度もねぇよ……つぅか、痛ぇよ、力加減下手か」


 軽口を叩きながら、天童は、心の中で、


(の、乗り切ったぁ……はぁぁ……)


 安堵のため息をついていた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] クズニートの天童も、センエース本編のセンも、 野球外伝とSSRのトウシも、みんな弱さを持って いるけど、人前では決して出さないという点で 共通していますね。天童は弱さを押さえつけ、 クズな…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ