25話 本当は?
25話 本当は?
「これからも、作楽には言えない類の事で、相談に乗ってもらっていいか?」
「何言ってんすか。最初からそのつもりで、ボクを口説いていたくせに」
「……お前を口説いた事は、俺の人生において、一度もねぇよ」
「ほんとに?」
「……」
「あえて、興味ないふりして、気を引こうとした事は? ボクにもっと好かれようと、頭を回して必死に会話を盛り上げようとしたことは? 今の今まで一度も?」
「……うっせぇ」
そこで、天童は、うつむいて、かすれた声で、
「しゃーねぇだろ。マジでドストライクなんだから。つぅか、おまえみたいな異常にイイ女を、そう簡単に手放せる男なんざいねぇだろ。俺は聖人じゃねぇんだよ。どうせ、俺みたいなカスは、作楽とは一緒になれねぇんだ……あいつには俺なんかじゃなく、もっといい男がふさわしい……それを本気で思っているから……だから、最後には俺は確定で独りになって……そんな時、お前が横にいてくれたら……待っていてくれたら……みたいな、そんなくだらねぇ妄想をして……なにがわるい……」
「ははは。なんか最低っすね。ボク、めちゃくちゃ『都合のいい女』扱いされてるじゃないっすか」
「ほんと、最っ悪だよ……これじゃあ、ただのクズ野郎だ。クソ以下だったガキの頃にも劣る、下半身でしか物事を考えられない、最低最悪のドヘタレクソ野郎……なんで、俺は成長できねぇんだ……こんだけ頑張って、必死になって変わろうとしてきたのに……どうして、俺は……かわれないんだ……どうして、俺はずっとクズのままなんだ……」
「でも、そんなセンセーが、ボクのドストライクなんすよ、これがまた」
★
放課後。
昼間からずっと続いている、
『簡単な整理はできたが、整頓は全くできていない』
――という『そんな顔』を、どうにかフラットな状態に戻してから、
天童は、定期報告のために、『主』の元を訪れた。
「今日も時間通りね、偉いわ」
時計塔の最上階。
ほこり一つないほど美しく、どこか幻想的な部屋。
その一室に入った直後、
天童は、『主』から、頭をなでられ、過分な言葉を賜った。
『私は時間通りに~云々~』という、いつも通りの、
いわゆる『礼節』を通した後、
「さあ、座ってちょうだい。クッキーを焼いたの。あなたが好きなチョコチップクッキーよ」
「ありがとうございます。いただきます」
天童は深く頭を下げてから、ソファーに腰掛け、丁寧にクッキーを食べた。
確かに、チョコもクッキーも嫌いではないのだが、
『状況が状況』なだけに、味などさっぱりわからない。
(やべっ、気管に入っ……ムセる……主の前で、そんな失態は犯せん)
『咽頭の奥で暴れる不快感』を精神力だけでどうにか抑え込み、
マナーに気をつけながら、ゆっくりとコーヒーで流し込む。
「おいしい?」
「は、はい、大変素晴らしいものを頂きました。これほど質の高いクッキーを食べたのは初めてです」
「それは良かったわ」
(世辞なんか、言われ慣れているというか、世辞以外の言葉は滅多に耳にしない最高位の立場であるくせに、なんで、俺が言った程度の軽い世辞で、そんな、本気で嬉しそうな顔ができるんだろうな、この方は)
いつも不思議に思う。
(俺以外と話している時は、その相手が、仮に一番身近で最も信頼を置いているであろう上位熾天使であっても、ツンケンした態度というか、バリバリのキャリアウーマン的な態度を崩さないくせに、なんで、俺には……)
『なぜ、自分は、こうも優遇されているのだろう』
――と、出会うたびに思ってしまう。




