21話 双子の姉妹?
21話 双子の姉妹?
「天使という種は、イメージ通りのキラキラとした『優しい存在』なんかじゃない。記憶が残ってしまったのは、お前にとって不幸以外の何物でもない。全力で忘れるように心掛けろ。言っておくが、ここまででも既に、俺は機密漏洩の軍規違反という大きな罪を犯している。だから、これ以上は何も言わん。おまえも何も聞くな。以上だ」
「……あたしに双子の姉妹かぁ」
現状、別に『双子がいたような気』はまったくしていないが、
話を聞いてみたところ、
『もしかしたら、いたのかもしれない』と思いはじめてきた高瀬は、
少し興味が出てきたのか、
天童の注意喚起など完全シカトで、
目をキラっとさせながら、
じゃっかん前のめりで、
「どんな子だった?」
「だから、何も言わんと言っているだろ。人の話を聞いていないのか」
「……『人』の話とか、ウケる。天童さんって、天使なんじゃないの?」
「候補だから、まだ人間だ。って、そんな事はどうでも――」
「家族の事くらい、知ってもいいじゃん(まあ、興味本位100%で、プラス、どうしても知りたいってほどじゃないんだけど……この線で押していくと、まだ、なんとか話は途切れなさそう。こんな面白そうな男、そう簡単に逃がしてたまるか)」
強い視線で睨まれて、天童は、思わず、奥歯をかみしめる。
ハンパな罪悪感が、天童の心を締め付けている。
『高瀬まゆ』に対し、罪滅ぼしがしたいなどとは微塵も思っていない。
しかし、
しかし……
(本気の目だ。『逃がしてたまるか』という意思が伝わってくる。……こりゃ、確定で『高瀬まゆ』の記憶が残っているな。きっと、すこぶる仲が良かったんだろう……こんな状態じゃあ、おそらく、再度、記憶を消すツールを使ったとしても、消しきれないだろう。となれば、こいつは……)
ある程度は、
『人間というもの』・『女というもの』を『理解』し始めてきた天童だが、
所詮はまだまだ高校生のガキ。
すれ違い。
勘違い。
そして、話は、もっともっと、こじれていく。
「あたし、誰にも言わないよ。あと、これからは、天童さんの言う事、全部、聞いてあげる。だから、最低限の事は教えてよ(話ができる関係をつくって、繋ぎとめる。まずはそこから。あぁ、なんか、楽しくなってきた)」
「……最近の俺……軍規違反ばっかり犯しているな。くそったれが」
右手でこめかみのツボをギュギュっと押す。
再生装置は、肉体の損傷なら幾らでも癒してくれるが、
削れた体力や擦り減った精神力まではカバーしてくれない。
覚悟を決めた天童は、
「あいつは……お前に、よく似ていた」
高瀬まゆを思い出しながら、
「……『顔』は、お前とそんなに似ていないが、なんというか『生きるのに必死』というか……空回りしていたが、妙に芯は太くて、プライドが高そうで……そして、どうしようもないほど腹黒さが透けて見えるタイプの悪女だった。正直、嫌いなタイプじゃなかった」
「ぇ、悪女が好きとか……天童さんって変態?」
「したたかな女の方が魅力的に見える。峰不二子は人気があるだろ。男なんて、訳の分らない生物。それだけの話だ」
「ふぅん。微妙な生き物なんだね。……あ、ちなみに、あたしも結構、したたか系だよ」
「だろうな」
「おやおや、認めちゃう? じゃあ、なに? あたしのこと、タイプなの? あれ、もしかして、今、コクられる? ウケんだけど。あはは!」
高瀬は、ケラケラと笑って、
「まあ、悪魔みたいな天使が彼氏とか、超オモロイから、どうしてもって言うなら、付き合ってあげてもいいけどね(うーん、まあ、うん。まだ、『面白い』の段階だけど、条件としては、色々と悪くないし……)」
「……はぁぁ……なんか、最近、こんなんばっか……しんどぉ」