19話 『高瀬』美奈。
19話 『高瀬』美奈。
翌日の朝は、快晴だった。
磨いたように、雲ひとつない青空を眺めながら、電車に揺られている天童は、
(しかし、まさか、主天使を相手に、6人を守りきれるとは思わなかった。ほぼ『佐々波の手柄』とも言えなくはないが、部下の手柄は、隊長の手柄。そして、大事なのは、俺が、『飛び級試験のセンターを乗り越えた』って事実だけ。まあ、センターで、あそこまでの難易度って事は、本試験は、もっとヤバイ事になりそうだが、ここまで来たんだから、本試験の方も、どうにか乗り越えてやるさ)
本試験に想いを馳せていると、仙草学園前の駅についた。
天童が、アクビを噛み殺しながら、いつものように、電車を降りた所で、
「あ、いた!」
昨日の、態度が悪いハデな容姿の女子中学生――美奈が駆け寄ってきて、
「ねぇ、なんで私だけ覚えてんの?」
と、詰め寄りながら、そう言ってきた。
困惑のあまり、
「……はぁ?」
としか返せない天童に、
美奈は、
「記憶、消えるんじゃなかったの? てか、実際、他の子たちは、忘れているみたいなんだけど、私はバッチリ覚えているのよね。なんで?」
「……なっ……」
「ん? その反応……もしかして、あんたも理由はわからない?」
「いや、まあ……記憶が消えない場合も……ない事はないが……」
「稀ってこと?」
「そうだな……滅多にない」
「じゃあ、ラッキィ。ねぇ、記憶、消えないんだから、無意味じゃないでしょ。説明してよ。昨日のアレとか、なんだったの? てか、あんた何者? CIAとか、モサドとか、そういう感じ系の人? それとも宇宙人系? あるいは異世界人とか? 大穴で未来人とか? もしくは、そのまま悪魔的な?」
「……」
天童が『さてどうしたものか』と悩んでいると、
そこで、
美奈が、ハっとした顔をして、
「あ、そういえば自己紹介とか、まだだったね。あたし、高瀬美奈」
言いながら、快活に横ピース。
彼女の自己紹介を受けた天童は、
「……たか……せ……」
反射的に目を大きく開いて、高瀬美奈を凝視してしまう。
その強い視線に気づいた美奈は、
「ん、どうしたの?」
いぶかしげな顔をする。
天童は、彼女の情動に考慮したりせず、
ぶしつけに、
「お前、学年は?」
「中一だけど? それが?」
(……まさか、高瀬の親族……もしかして、双子か?)
実は、昨日、初めて会った時から、なんとなく『似ている』とは思っていた。
顔はそうでもないが、『芯の雰囲気』が『高瀬まゆ』に通じるものがあるとは思っていた。
『美奈』は天童をナメていて、
『まゆ』は天童に媚びていた。
基礎前提の違いがあったから、最初から直で『似ている』とは感じられなかったが、
『中』にある『性質』は、どこか似通っていた。
よく聞けば、声も似ていなくもない。
というか、似ている。
(高瀬まゆの双子……『それ』が理由か? 記憶消去のツールに関しちゃ、詳しい事は、よくわからないが、『血の接続』が強すぎた場合、エラーが起きる確率は高くなるというのだけは聞いたことがある……どういう理屈で起こるエラーなのかさっぱり知らんから、これ以上の推測はしようがないが……)
と、考えていると、
高瀬が、
「学年が何か関係あるの?」
首をかしげてそう言った。
この『仕草がイチイチあざとい感じ』は、
意識して観察してみると、高瀬の『感じ』とそっくりだった。
(詳しくは分らないが、もし『候補者の双子だから』という理由で、記憶消去にエラーが出たのだとしたら……)
そこで、天童は、頭を回し、
丁寧に言葉を構築してから、
「高瀬美奈。お前、自分に『双子の姉妹がいたような気がする』とか……そんな感覚はないか?」
「は?」
高瀬は、眉毛を八の字にしながら心の中で、
(……双子の姉妹? ……はぁ? 何言ってんだ、この男。それ、どういう口説き方?)




