13話 民間人を巻き込むミッション。
13話 民間人を巻き込むミッション。
(あいつら、めちゃめちゃスカート短ぇなぁ。つーか、ルーズソックスとか、まだ絶滅してなかったんだな。あんなナメた格好してたら、『南原』にブチ切れられんじゃね……ああ、そういえば、あの妖怪、転勤したんだっけ?)
ちなみに、天童は、南原を嫌ってはいなかった。
顔面のパンチがメガトン級だったので、心の中では、南原に対し『いろいろときついオバハンだなぁ』とは思っていたが、『学校生活においてはクソ真面目極まりない天童』が怒られる事などなかったため、天童が南原に対して悪い印象は抱くことはなかった。
むしろ、苦手なギャル系を『臆することなく成敗してくれていた』ので、
天童にとっては、どちらかといえば『好感の持てる相手』だった。
(懐かしいなぁ、中学時代。……いやぁ、地獄だったなぁ)
下士官時代を思い出すと、キ○タマが縮みあがる。
ほかの候補生と比べて、天童の『下士官』時代は、かなり短かったというのに、
その僅かな期間だけでも、『死にかけた回数』が三ケタを超えている。
(さっさと昇級したいからって、無茶ばっかりやっていたなぁ。よく死ななかったな、俺。ヤバい場面は、結構あったけど、なんか、俺、妙に運がよくて、結局のところは生き残っちゃったんだよなぁ)
などと、昔を懐かしんでいると、
「――ちょっといい?」
その、華麗にルーズをはきこなす『ハデ目な女子中学生集団』が近づいてきて、
その中の、最もルックスの出来がいい女子中学生が、
「あんた、高等部の人だよね?」
「ぁ? ……ああ」
『年上だと分かっていながらの無遠慮なタメ口』に対し、
『少々以上の思うところ』はあったが、
しかし、それを指摘した所で『非生産的で不毛なケンカになるだけ』だと思い、
天童は、グっとこらえた。
天童がその十数年で得た教訓。
人間関係の処世術。
――アホな女と戦うな。
「あのさぁ、もしかしたらなんだけどぉ、あんた、一城聖也の知り合いだったりするぅ?」
「一城? ……クラスメイトだが?」
「うっわぁ、マジ?! ラッキィじゃん」
「まじで、美奈の幸運度ヤバすぎてハゲんだけど」
女子同士で、わちゃわちゃと軽く盛り上がってから、
「あのさぁ、実はあたしら、軽音部でぇ」
「去年の文化祭のブルーレイ、見たんですけど、一城さんが、超ヤバくて、ね?」
「会いたいなぁって思っているんですけど、接点なさすぎじゃないですかぁ」
(この美奈ってやつがとびぬけて失礼なだけで、他のやつは、普通に敬語を使ってくるんだな……まあ、ギャルの中にも『まともなやつ』と『ヤベェやつ』の二種類がいるって話……いい勉強になったよ……)
などと、くだらないことを考えていると、
――そこで、『ギャルの中でもやべぇヤツ代表』の『美奈』が、
パンっと両手を合わせて、首を横に傾けて、
「紹介とか、してくんない? ぜひっ!」
「見ればわかると思うが、俺はクラスカースト最下位のゴミだ。同じクラスなのは間違いないが、しかし、お前らと変わらないくらい、あいつとの距離は遠い。残念だったな」
「……んーだよ、使えねぇ」
「じゃあ、最初からクラス一緒とか言って煽ってくんじゃねぇよ」
「超テンション下がるわぁ。まじ、だるい」
ボソボソと、怖い本音をこぼしあう彼女たちに対し、
(しょせん、ギャルにまともなヤツはいないってオチか……楽しいねぇ)
天童のテンションが超下がったその時、
「「「「「「ん?」」」」」」
その場にいた全員の目線が周囲に飛散した。
世界の色が変わったから。
雲が出てきて太陽が隠れたとか、そんな次元じゃない。
彼女たちの知らない世界がそこには在った。
天童だけは、ドッシリと落ち着いているが、
ギャル六名は『唐突に色が変わった世界』に戸惑って、キョロキョロしている。
「え、何、これ? 空の色、変じゃない?」
「なんか、白いんだけど、え、なに?」
慌てている女子中学生を尻目に、天童は、
ベンチに腰を落としたまま、
ソっと片目を閉じて、
(――民間人を巻き込むタイプの強制ミッションか……ウゼェなぁ)




