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クズニートの成り上がり~『剣の翼』を手に入れ、『ボーナスダンジョン級チート訓練所』で最強になったクズ男の至高堕天録~  作者: 閃幽零×祝百万部@センエースの漫画版をBOOTHで販売中
第二部『堕ちていく、クズ男』

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5話 作楽の怒り。


 5話 作楽の怒り。


「なんか、最近の久寿男……あのクソガキと一緒におること、多ない?」


「トランクの――専用機の調整が終わるまでは、多少、行動を共にする時間が長くなるも仕方ない。ほとほと迷惑な話だ」


「ふぅん」


 不満げな彼女の顔を尻目に、天童は、脳みそをフル回転させる。

 男と女の闘いにおいて、常に、男はあまりにも不利が過ぎる。


 天童は必死になって考えた。

 言葉をつくろって、

 整えて、整理して、

 どこかに不備がないか検閲けんえつし、

 タイミングを見計らって、


「作楽に『技師適正』があれば、色々と助かったんだが……こればっかりはどうにもな」


「ぇ……えへへ、なになに、久寿男。あたしが技師やったら、色々と何が助かんの?」


「とりあえず、精神的な負担が大分減る。佐々波のテンションに付き合わされるのは心底疲れるからな。それに」


「それに? なんなん?」


「……お前と一緒にいるほうが楽しい」


「ぇ……あ、はは。そうなんや。へー」


 作楽は、急激に『上機嫌』になったが、



「セーンセっ♪」



 空気を読まずに現れた来客を見た瞬間、激烈に不機嫌になる。

 天童の顔も、当然歪んでいる。

 『せっかく、うまくいきそうだったのに』と、燃えるような不快感を露にする。


「調整の件で、ちょっと話があるんすよ。一限目、サボってもらっていいすか?」


「……放課後ではダメなのか?」


「今じゃないとダメっすね。そうじゃないと」


 そこで、佐々波は、天童のすぐそばまで近づき、

 胸を押し当てつつ、彼の耳元で、ボソっと、


「多分、口が軽くなっちゃう気がするっす」


 その小声を耳にした瞬間、天童の眉間にグググっと深いシワが寄った。

 ギリっと奥歯をかみしめながら、


「……分かった」


 そう言って、ゆっくりと立ち上がる。


「作楽、悪いが『具合が悪くなったので早退した』と、先生に伝えておいてくれ」


「……ふぁーい……了解」


 不機嫌を隠そうともしない返事をする作楽に、


「すまん」


 ニコっとほほ笑みかけてから、天童は、佐々波の後を追って、工房へと向かった。

 残された作楽は、特殊な無表情で窓の外を眺める。 

 これは、煮えくり返っている時の顔。


 もし、理性という概念がなければ、

 きっと、作楽は、佐々波のはらわたを裂いて、

 その奥から引きずり出した腸をナワトビにして、

 ハヤブサの世界記録に挑戦していたことだろう。


(なんやねん。久寿男。なんか、最近、あのクソガキに甘ない? ちょっと呼ばれたら、すぐに、へーこらついていって。ほんま、なんなん? 巨乳趣味にでも目覚めたんか、ボケ。そんなに大きいんが好きか、クソボケ)


 イライラが足に出ている。

 高速の貧乏ゆすり。


 終わらない怒り。

 なぜ、ここまでイラつくのか自分でもわからない。

 天童と出会って以降、天童のおかげで、かなり情緒が安定してきたというのに、

 時折、こうして『天童が理由』で情緒が錯綜してしまう。


(ああ、くそ……佐々波、死ね……苦しまんでもええから、とにかく死んで、久寿男の前から消え失せろ……)



 などと考えている一人の時間。

 どうしようもなく退屈で、気が狂いそうになるほど心細い時間。

 昔は『一人でいる時間』にしか安寧を感じられなかった。

 なのに、最近では、一秒たりとも一人ではいたくない。


 もちろん『隣にいるのは誰でもいい』というわけではない。

 ほしいのは、ただ一人。

 あの男とだけ一緒にいたい。




「――作楽、ちょっといい?」




 一人になって数秒が経過した時、

 ふいに、

 クラスメイトの一城聖也いちじょうせいやが、爽やかな笑顔で声をかけてきた。


 『クラスカーストにおける絶対勝者』特有のオーラを身にまとっている、精度の高いイケメン。


 彼は候補生ではない。

 だから、作楽は、彼とまともに話した事もない。

 ただ、偶然、中学の時から同じクラスで、

 しかも、ずっとバカみたいに目立っている男なので、

 天童以外の人間に一切興味がない作楽でも、

 一城の名前と顔、そして、校内での地位は正確に認知している。


 一城は、まぎれもなくクラスカーストの覇者。

 一軍と呼ばれる華やかなステージに所属しているだけでは飽き足らず、

 一軍の中でも最上位――いわゆる『本格派の先発完投型スーパー大エース』である。


 それも、クラス内トップではなく、

 学年トップのエースオブエース。

 スクールカーストの帝王。


 これが少女漫画なら、

 正ヒーローは『彼』以外にありえない。


 ――そんな男が、ニコヤカに微笑みながら、



「作楽さぁ、ここ数日、なんか、一人でいる事が多くね? もしかして、天童と別れた?」


 などと『獲物を狩る目』で聞いてきた。



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