6話 マザコン、くっさ。
6話 マザコン、くっさ。
――ところ変わって、作楽&高瀬の戦場。
驚くほどあっさりと大天使を退けた作楽は、肩で息をしながら、
高瀬をチラ見して、
(……このクソ中坊、新兵のくせに、ずい分と落ち着いとるなぁ。心が妙に強い。動きも、新人とは思えんほど鋭いし。ほんま、なんなん、こいつ。ものっそ、キモいわぁ)
『遠隔操作系・全距離型兵器(通称、リモコン)』を使わせておけば、どれほどのザコだったとしてもあしでまといにはなりえない……が、とはいえ、当然、練度に差は出る。
高瀬にリモコンを持たせて後方支援を任せた結果は、極まって上々。
ある程度ベテランになってくれば、『リモコンを操作するだけの簡単なお仕事』と揶揄されてしまう『お手軽兵器による、シンプルな後方支援』だが、最低限以上の度胸と、それなりの状況判断ができなければ、足でまといにこそならないものの、クソの役にも立たないというケースに陥る事もなくはない。
(……自ら特殊精鋭部隊を志願しただけの事はあるっちゅうことか)
高瀬は、不愉快なほど高性能だった。
新人とは思えない鋼のハートで、
作楽のサポートを完璧に果たしてみせた。
(なんや、諸々、気に食わんなぁ。死ねばいいのに)
作楽にそんなことを思われている『高瀬』は、
周囲確認をしつつ、髪をイジりながら、
「作楽少尉ぃ」
「……あ?」
「もしかしてぇ、私の事、嫌ってますぅ?」
踏み込んできた高瀬に対し、
作楽は、女子的に空気を読んだりはせず、
むしろより深く踏み込んで、
「……死ねばええのにと思っとる」
ハッキリと、まっすぐに、そう言い切った。
「うっわぁ……ひどぉい。てか、物凄く正直ですねぇ。『女子から嫌われる』のは慣れていますけどぉ、『そこまでまっすぐな敵意』は珍しいので、あたし、若干、引いちゃっていますよぉ」
「……別に、お前だけが嫌いなワケやない。私は人間が嫌いなんじゃ、ボケ」
「へぇ。でも、その割には、大佐と仲良さげじゃなかったですか?」
「……久寿男だけは別や。というか、あいつは人間やない。怪獣や」
「あのぉ、もしかして、それってぇ、恋愛感情ですかぁ?」
「……その質問に答えないかん理由が、何か一つでもあんのか? おぉ?」
「あたしぃ、大佐が欲しいんでぇ、少尉がそういう感情を抱いていると、メンドいかなぁって。もし『女としての感情』を大佐に抱いていないのならぁ、あたしの邪魔しないでくださいねぇ」
「……」
そこで、作楽は、初めて、高瀬の目を見た。
睨みつけてはいない。
純粋に、ゴミを見る目。
「……おどれ、別に、久寿男の事、好きでも何でもないやろ」
「あららぁ。人間嫌いな割には、人間観察がお上手ですねぇ。尊敬しますぅ」
薄っぺらな笑顔で、慇懃に、無礼に……
――作楽はようやく気付く。
(……これは、素でも演技でもない。純粋無垢な挑発や。このクソ中坊……私とガチでケンカする気か。ほんまにええ度胸しとる。というか、凄まじい胆力やな)
高瀬は、女の戦争を仕掛けてきている。
それも『小学校を出たばかりのガキ』が『会ったばかりの女子高生』に対し。
なんという異常事態。
「あは。ウソウソ、冗談。あたし、大佐の事、大好きですよぉ。とっても、とっても、だーいすき。――だって、あんなに便利な男、滅多にいませんもぉん」
「……便利な男ぉ?」
作楽の表情筋が痙攣しているのを見て、
高瀬は、
(かかった)
表情には出さず、心の中で舌を出しながら、
「男の方が、五つくらい年上ってぇ、正直、男女の関係としては、一番いいじゃないですかぁ。おまけに、一応、背が高いしぃ、好きな顔じゃないけど、人に見せる分には及第点だしぃ。そして、何より、将来性が完璧なスーパーエリートって点が最高。もうちょっと見た目のいい男だったらなぁって思わなくもないですけど、イケメン過ぎない分、競争率も低いと考えれば、いわゆる『パートナー』としては超優良物件ですよねぇ。イケメン養分は、他で摂取すればいいだけだしぃ」
「……」
「まあ、マザコンってのが、正直、かなりのマイナスポイントですけどぉ、どうやら、とっくに死んでいるみたいですから、まあ、許容範囲ですよねぇ。むしろ、姑問題に煩わされないからラッキィって感じですかねぇ」
「……」
「ただ、やっぱり、ぶっちゃけ、キモいのはキモいですけどねぇ。『自分の命と引き換えにしてでも生き返ってほしい』って発言を聞いた時は、鳥肌が立っちゃいましたよ。思い出しただけで、ちょっとかゆくなってきました。あー、キショッ」




