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2話 戦争開始。


 2話 戦争開始。



 ――数分後、屋上に、天童の部隊に所属する者全員が集結した。


「傾聴」


 新人の高瀬を含む計10名。

 候補軍の一部隊としては一般的な規模の『C‐7番隊』。


 所属しているメンバー全員の視線が集まったのを確認して、

 天童は、息を整え、


「光栄なことに、我が『C‐7番隊』が、敵主力部隊の相手をさせてもらえる事になった。我々が処理する敵部隊の編成は、小天使(レベル1)三機、強襲型の大天使(レベル2)二機、護衛用の副官とみられる、ガチタンク『セ界』の権天使(レベル3)二機。そして、エースは、零色の力天使(レベル5)。副官の引き剥がしは、佐々波に。大天使の足止めは、作楽に任せる」


「了解っす」


 簡単に了承する佐々波とは違い、

 作楽は、渋い顔で、


「……一人やと、厳しいんやけど」

「サポートに高瀬をつける」


 そこで、天童は高瀬に視線を送り、


「わざわざ私の隊を志願したんだ。『任せろ』と胸を叩いてもらいたいものだが?」

「はい、もちろん。お任せください。天童大佐」


「よし。では、作戦を開始する。我が部隊の主目的は、敵天使部隊に占領された第七校舎の奪還。敵エースは、必ず俺が撃墜する。つまりは、勝利に至るかどうかは、貴様らが潰されるか否かにかかってくるという訳だ。各員の働きに期待する」


 天童の言葉に、全員が声をそろえて返事をする。

 満足気に頷きながら、


「開戦まで、あと五分。気持ちを整えておけ」


 そう言った直後のこと。

 高瀬が、ススっと近寄ってきて、


「天童大佐」

「どうした?」


「あのぉ……作楽少尉のサポートですけど、『どうやるのがベストかな』って少し悩んじゃいまして。できれば、アドバイスをいただけないかなぁと」


「まずは戦場に慣れろ。支援に徹して、空気を読み取れるようになれ。死の匂いに慣れてくれば、戦場の要所が見えてくる。常に戦場の支配圏域に対する『広い視野』を持ち続ければ、おのずと、最善たる次の一手が見えてくる」


「丁寧なアドバイス、ありがとうございますっ!」


「……ぁ、そういえば『今年の新人』は『今回が初演習』になるんだな」


「はい」


 新兵戦は、相対的な意味で『最も荒い地獄』と言われているが、

 『天使に使用許可が出ている剣翼』のリミットが『量産の三型まで』なので、

 『実質敵戦力の数値』的には大した事がない。


 演習では『長年闘い続けてきた精鋭部隊』が面倒ごとを処理してくれるので、

 新兵の目線で言えば、荒くはないので『まだマシ』と言われているが、

 しかし、だからこそ当然、

 通常演習では『天使が使用してくる剣翼の上限』がかなり高い。


 特に、最も規模の大きい増強大隊戦では、『五改Ⅱ型』までの使用が許されている上、エースや副官に至っては自前の専用機もちろんリミッターはつくを駆ってくる。


 敵戦力という点だけで見れば、新兵戦の、およそ、五十倍から百倍に相当する。


「初めてが緊急増強大隊戦。最悪だな。怖いか?」

「いえ。めちゃくちゃ強い大佐と一緒だから、なにも怖くありません」

「あ、そう……」


 胃もたれする世辞をサラリと受け流し、


「ちょっと、お前のCPU、GADモードで見せてみろ」

「ぁ、はい」


 言われて、高瀬は、即座に、ロザリオを握りしめて、空中ディスプレイに自身の剣翼がどのようなシステム構造になっているか一目で分かるウィンドウを表示させる。


「……初期設定のままではないか……まさか、一度も触っていないのか?」

「面目ないです。図工はかなり苦手でして」

「図工……いや、まあ、その認識や表現でも別にいいんだが……」


 呆れ顔が露骨にならないよう、ギュっと表情筋に力を込めて、


(こいつ、技術士官候補ではなかったのか。トロそうだったから、てっきり……)


 一瞬、そんな事を思ったが、すぐに、頭を調律用に切り替え、


「量産型低コスト機体の初期設定は『セオリーやシルエットによるスキャンが全くできないカスが使う事』を想定している。つまり、一言で言えばクソだ。索敵にメモリを使い過ぎていて、プログラム全体の反応速度がバカみたいに遅い。仮に俺とお前がタイマンすれば、お前が俺を見つけて、レティクルに収め、引き金をひいて、その弾丸が、俺の体に届くまでに、俺は、お前を十七回殺せる」


「うあぁ、流石です」



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