001 転生者
それは僕が野暮用を足しに行った帰り、村の外れにある森を通りかかった時だった。
突如、見慣れない格好をした男が現れたのだ。
村では背の高い方である僕よりさらに頭ひとつほど大きな彼は、僕と同じくらいの年頃に見えた。
「どうした、どこから来たんだ?」
僕が声をかけるが、彼は困ったように首をかしげるばかりだ。
彼は彼で何かを訴えようと身振り手振りを交えて語りかけてくるが、一向に話がわからない。
どうやら言葉が通じないらしい。
「あぁ……、もしかして!
ついて来いよ」
僕にはひとつ心当たりがあった。
僕が歩くと、謎の青年も恐る恐るといった様子で後をついてくる。
途中、村長の元に寄って事情を説明した。それから村長と幾つか話をし、やはり僕の予測は合っていたらしいとわかった。
青年を連れて村を抜ける。
しばらく歩くと、別の集落が見えてきた。
そこには謎の青年と似たような格好をした年齢層もさまざまな人たちが住んでいる。
その中の一人が青年に何かを呼び掛けた。
『異世界からの転生者の集落』。
村長がそう呼ぶ土地へ辿り着いた彼は、言葉が通じる相手を見つけた喜びに頬をほころばせ、そしてどこか寂しげに頭を下げた。
僕は知っている。
あの森には稀に異世界から人間が流れ着くことを。
そして、彼らは決まって「自分は選ばれし者だ」と思い込み、他の転生者の存在を知るとあからさまに落胆して見せるのだ。